27話:フェリシア様はお悩み中
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前回の簡単なあらすじ
1:ルークとプロトン、村に着く
2:幼女登場
久々、ヒロインメイン回!
『翠の風』は、女性騎士と事務職員で構成されている近衛騎士団である。所属する騎士はもちろん、詰所でさまざまな職務をこなしている事務職員も、そのほとんどが女性である(男性職員もいるが、彼らは非常勤職員なので、常にいる職員は女性だけである)。
事務職員の仕事は多岐にわたり、書類整理や詰所の清掃など、各々の得意不得意ごとに振り分けられている。これは団長であるフェリシア・シルエイティが『適材適所』をモットーとすることに起因している。作業効率を考えた結果、罰を設けるとき以外は得意なことをさせよう、ということである。
こうした勤務態勢を敷いているため、職員からの評価は高く、騎士としてだけでなく、雇い主としてもフェリシア・シルエイティは信頼されているのである。ーー予想以上に好評で、当の本人が若干引いているのは内緒である。
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~エレオノーラ視点~
私、エレオノーラ・パーヘルのおもなお仕事は、同僚たちの悩みを聞く、いわゆるカウンセラーと呼ばれるものです(この職業の呼び方は、国王陛下が命名したことにより広まりました)。
『翠の風』のなかでは私が一番の年長者で、その分多少ではありますが、人生経験は豊富です。これまでも何度か、悩める方々と真摯に向き合い、少しでも手助けが出来れば、そう思って励んで参りました。
しかし、現在私の仕事場とも言える『お悩み相談室』の入り口には“休業”と書かれた木札が掲げられていました。私が中にいるにもかかわらず、です。普段ならそのようなことは絶対にいたしませんが、本日はそうしなければいけない理由がありました。それはーー
「うぅ~……」
今目の前でため息をついていらっしゃる、一人の公爵令嬢のためです。
この方のお名前は、フェリシア・シルエイティ様。かの宰相、ライセン・シルエイティ様のご息女であり、『翠の風』の団長でもある、私どもの雇い主です。いつもは背筋を伸ばし、はつらつとした態度でいらっしゃるというのに、今は顔色が少し悪く、ため息ばかりついておいでです。
私は人生経験は豊富ですが、さすがにこのような場合の対処は、どうすればいいかわかりません。
「フェリシア様、大丈夫ですか?」
「…全然大丈夫じゃない。」
「で、ですよね…」
ちなみに、ここには他の職員の娘たちも来ています。私だけではどうにもならないことはわかっていたので、フェリシア様と年の近い娘たちに来てもらいました。まあ、あまり効果はなさそうなのですが。
この度、フェリシア様は婚約することとなりました。聞くところによると、お相手は子爵家の長男で、同年代の娘たちからの評判はとても良く、結婚適齢期を迎えたフェリシア様を心配していた身としては、ほっとしていました。
しかし、ここでひとつ問題がありました。どうやらそのお相手のことを、同じく公爵令嬢のルル・エメラル様と、第二王女のシルフィ様が好意をもっていらっしゃるそうなのです。…私が同じ立場なら、生きた心地がしません。
これが他の令嬢様なら、まだ話は簡単でした。フェリシア様は公爵令嬢、嫌なら跳ね返せば良いだけのことです。しかしお相手は同じ公爵令嬢、そしてこの国の第二王女。難しい問題です。
「一目見ただけでわかる、あのお二人、かなりルーク・ゼネルのこと好きじゃない。あんなに好意を寄せられてて、なんでアイツは気づかなかったのよ、鈍感系主人公かっての…」
ーー相当弱っておいでのようで、普段は使わないような口調になっています。気の強さが目立ちがちなフェリシア様ですが、こう見えて実はとてもフランクなお方で、よく町の人や職員、騎士の娘にも気さくに話しかけてくださいます。そのときもこのような態度は取られないのですが…
「フェリシア様、どうしてそこまで重婚を嫌がられておいでなのですか?」
ここで、先ほど声をかけた娘とは別の娘が質問します。それに対してフェリシア様は、ひとつため息をついて答えます。
「理由のひとつとして、勢力バランスの関係ね。シルエイティ公爵家は宰相を賜るかわりに、他の公爵家と比べて領土は少なくなっているの。10ないくらいね。その代わりに宰相として国を治め、国のために尽くすことになっているの。
もしシルフィ様とルル嬢が嫁いできたら、シルエイティ公爵家は力を持ちすぎてしまう。なんせお二人は『風国の五人之異才』、影響力はとてつもないわ。
ひとつの家に力が集まるのは、政治的には避けたいのよ。」
この国では、貴族が領地を治め、その領地のまとまりを伯爵・侯爵家が、さらにそこを公爵家が、というふうに治めています。そして王族の方々は王家直轄地を除いて領地を持たず、公爵家から税金を取ることによって国を運営・発展させています。
シルエイティ公爵家は王族よりの性質を持ち、領地はあまり持たず、その代わりに国王陛下に次ぐ権限を持っています。それはあくまでも国家運営のためで、ここ数十年は特に大きな問題もなくきています。
フェリシア様が危惧しておられるのは、その均衡が崩れてしまう恐れでしょう。確かにそれは、慎重になるのも理解できます。
「ーーと、いうのは建前で…」
「「「「???」」」」
「本当は、ただ、せっかく結婚するなら、やっぱりその、ただ一人を愛してくれたら良いなあ、って、思ってて…」
そう言いながら、フェリシア様はお顔を真っ赤にされて、うつむいてしまいました。ーーなんですか、この可愛らしい理由は。思わず顔が緩みそうになるのをこらえるのに必死になります。
フェリシア様は今まで、男性に興味を持たれたご様子はありませんでした。若い娘たちが黄色い声をあげるような美青年に会ったときも顔色を変えず、男性貴族の噂話を聞いても興味を持たれなかったので、少し心配しておりましたが、なんてことはなく、そのようなことに関心があって、改めてほっとしました。
「安心してください、フェリシア様。」
なのでここは、少しでも落ち着いていただくために、一言だけ。
「どうあっても、きっと良い結果にすることができます。」
「エレオノーラさん…」
少し、フェリシア様が落ち着かれたように思えます。その様子を見て、私もほっと一息ーー
「結局、何も解決していないわよね?」
「「「「……」」」」
ーーどなたか、解決策の案はございますか?
読んでくださり、ありがとうございました。
最近、フェリシアさんの影が薄くなってるような…
と思い、この話を挟みました。
時系列で言うと、
みんなが馬車で出発して一時間経たないくらいの頃です。
頑張れ、フェリシアさん!




