闇
ウルフは木の実を掴み、テーブルの隅へといくつか置く。
アルクがウルフの肩から移動し、テーブルへと降り立った。
ウルフは続ける。
「ただしだ。今のレベルでは肉体の完全な生成は出来ないかもしれないが、限りなく近い肉体……新たな器を生成する……といった事は可能だと思う。俺は人間型の召喚獣も生み出した事があるので、それは証明されている。」
視線を動かし、メイニヤックとアルクの姿を確認する。
アルクは木の実を食べ始めている。メイニヤックはもう食べ終わったようだ。こちらを見ている。
確かに、ウルフの言う『召喚魔法理論』だったら、行う事は可能だろう。
犬の型のメイニヤック。鳥の型のアルク。
彼らを人型にすればいい。
暴走の危険性がない事は彼らの存在が証明している。
「ただし、ネラのは『死者蘇生』だ。より細かく解析をする必要があるんだ」
視線を再びウルフへと戻す。
ーーそう。その通り。
自分の禁忌は『死者蘇生』。
魂が同じであろうが、肉体がただの似て非なるものであるのならば、それは『死者蘇生』ではなく『召喚魔術の応用』だ。
つまり、自分は目の前にいるウルフよりも、より高度な技術が求められる。
ウルフよりも、より深い深い、深淵への奥底へと辿り着く必要がある。
底の見えぬ闇が目の前を侵食してくる気配。
ネラはワインを手に取り、一気に飲み干す。
その闇に飲まれぬように。
「つまり……私の研究は間違っていなかったのね。ただ、より深い解析が必要だっただけ……」
言葉にする。
敢えて、口にする。
この森が、聖なる森だと認識する為に。
「ああ、間違っていない」
ウルフは目を逸らさずに言う。重い言葉で。
その言葉に白き炎がまた灯る。
「そして肉体の再現にはこれだけの難題あるが、完全な死者蘇生する為にはもう一つ要素がある……それは『心』の再現だ」
魂。
肉体。
そして『心』。
また一つ、崩れた大樹が道を塞いでいる。
だが、これは可能性の命脈が尽きたわけではない。
ただの大樹なのだから。
運び退ければいいだけだ。




