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沈黙
早く彼と本当の話がしたい。
そう願う。
だが、ウルフは口を開かない。
笑みを浮かべ一階を眺めている。
アルクも同じように一階席を眺めている。
鮮やかな羽が、薄暗い照明の下で微かにきらめく。
メイニヤックに視線を移す。
彼と目が合う。
彼は真っ直ぐに、ただこちらを見つめている。
だが、恐らくメイニヤックは口を聞く事は出来ないのだろう。
今まで、彼が口を開いた所は見た事がない。
ーー気まずい。
少しずつ、少しずつだが、森が崩れていく。
葉は枯れ落ち、泉は枯れ、静けさは騒ぎへと変わっていっている。
ーーこれが街か。
ネラは静かにそう感じた。
胸の奥の、白い炎が小さく縮こまる。
それは、森の奥で守られていた灯火が、初めて外の風に晒された瞬間だった。
だが、突如、風が吹く。
柔らかな風。
森の風。
風に乗り、森の香りがネラの元へと届く。
反射的にその香りの方へと視線が動く。
小さくメイニヤックが吠えた。
低く、短く、しかし優しい声。
だがネラの視線は戻らない。




