街
街へと着いたネラ達。
ウルフ達は歩き続ける。
ネラも静かに彼らの後を追う。
彼の足音だけでない。
無数の足音が重なり合う、絶え間ないざわめき。
鍛冶屋の金槌が鉄を叩く、規則的な金属音。
森にはなかった音が耳に飛び込んで来る。
鼻に突くのは、
焼けた肉と香辛料、鉄と炭、染料と革……
森の清浄な空気とは正反対の、複雑で濃厚な人間の匂い。
鉄と炭の焦げた熱い匂いもする。
多分、鍛冶屋から届いている匂いだ。
今、森の外にいる事を改めて実感する。
遠くから、ゆっくりと鳴り響く重い音が届く。
足が止まり、音の方を見る。
だけど何も見えない。
ーー多分、教会か何かの鐘が響いた音
ネラはそっと心を鎮める。
ウルフ達の足は止まっていない。
歩幅を小刻みにして、着いていく。
石畳の地面が足裏に硬く、冷たく伝わる。
森の柔らかな土とは違っている。
そして、ウルフは一件の酒場の前で歩みを停めた。
酒場の入口には『街の人』が立っている。屈強な男だ。
ウルフは男と何やら話し始めた。
視線を酒場の看板へと移してみる。
『妖精の抱擁亭』
彼らしくない店だなと感じた。
妖精の名を冠した、柔らかな響き。
ウルフの荒々しさとは、どこか遠い。
ウルフは男にいくらかの金貨を渡したようだ。
「この店だ。いい店だぜ?」
ネラに振り返り笑顔を見せ、店の扉を開いた。
ネラもただ着いていく。
扉の向こうからは、酒と煙と笑い声の混じった空気が流れ出て来た。




