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バウンティハンター・キース。  作者: 瀬崎遊


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18/20

18 王都に留め置かれて機嫌の悪いキース

 キースは現在困っていた。というか退屈していた。

 ギルドを襲う集団を捕まえて王都のギルドへと戻っていた。

 主犯が捕まっていないことが問題になっていて、キースが王都ギルドから移動することをギルマスが許可してくれないのだ。


 襲った奴らはギルドを襲う理由は解らないままで、犯人と会っているはずなのに人相や特徴すら解らなかった。

 解ったのは身長が百七十前後ということだけだ。



「だ、か、ら、俺がここに居てもしょうがないだろう?」

「何が起こるのか解らないのにお前を他所に行かせるわけにはいかん!」

「ギルドが一介の冒険者を留めておくことなどできないのはギルド長なら知っていると思っていましたが?」


「通常ならそうだが、今は非常時だ!」

「もし俺が犯人なら暫くは大人しくしますよ。手駒を失ったんですから。虎視眈々と次の準備をしながらね。なにか起こったら呼んでください。いつでも呼ばれた場所に顔を出しますよ。今回だって来たでしょう?!」

「遅かったじゃないか!!」


 ギルマスは到着が遅れたことに腹を立ているようだった。

「この国にいませんでしたからね。冒険者なんていくらでもいるんですから。俺がここに留め置かれていることに納得ができませんよ。俺がここにいるからといってお金払ってくれるわけじゃないでしょう?」


 ギルマスは口の中でモゴモゴ言いながらもはっきりしたことは言わない。

「仕事から遠ざかったら感覚が鈍るんですから、俺には仕事をさせておくべきですよ」

「・・・解った。ただし国は出るな!」

「春が来たらその約束は守れませんよ」


 ギルド長は少し不思議そうな顔と許さないという顔を足したような顔をしてキースに聞く。

「春に何があるんだ?!」

「個人的な問題です」

「そうか。・・・なら春までに解決してくれ!」


「無茶言わないでください。他の冒険者総動員すればいいでしょう?グアンテの時とは状況が違うだろう」

「この件はすべてお前に任せる!!」

「お断りします」

「俺はギルドの人間ではないんですから、それに見合う報酬をきっちりいただけない限りその辺にいる冒険者と何も変わらないんですからね」


 ギルマスは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「・・・とりあえずどっちに向かう?」

「西から南へ下って、東から北へと回りますよ」

 ギルド長は少し満足そうに頷いた。

「なんで西からなんだ?」

「貧しい村が多いんですよ」

「そうだな・・・。ならよし。行って来い」




 キースが立ち上がるとショウ、ゼロ、ゼロの師匠・・・名はなんと言ったか?たしか・・・ヴィクだったか?同時に立ち上がる。

「おい、まさかお前たちも行くのか?」

 ショウは最近キースに纏わりついていると聞いていたので疑問に思わなかったが、ゼロとヴィクまでもがキースについていくとは思わなかった。


「キースに届かない自分の実力に嫌気が差したんだ。だからキースに付いて学んでいるところだ」

 ゼロがそう答えたが師匠の方は首をふる。

「キースの持つ感覚は誰でも持てるのもではない。ゼロがどれほど頑張ってもキースのようにはなれないだろう」


「・・・そうですね。残念ながら理解しています。キースはどこかおかしい」

 ゼロも無理だと理解しているのか解っていたのか気落ちした様子は見せなかった。


 キースは受付で最新の手配書を貰ってギルドの扉をくぐって出ていく。

 キースだけでなく上級クラスの冒険者三人までいなくなると思うと一気に不安が押し寄せた。


「キース!!本当に連絡取れるようにしていてくれよ!!」

 大きな声で四人に怒鳴りつけるように声を掛けたが、キースたちは誰も返事をしてくなかった。

 この世代のギルド長になんかなるんじゃなかったと後悔して、この先起こるかもしれないことに体が震えながらも日常の仕事へと手を付け始めた。




 キースの後をショウたちが追いかける。

「いつ出るんだ?」

「明日の朝には出る。・・・まだ後を付いてくる気なのか?」

「あぁ〜まぁ・・・邪魔って言うならついて行かないけど?」

「別に邪魔だとは思ってないが・・・」


 ショウはニカッと笑顔を浮かべてキースの後に続いた。

 キース、ショウ、ゼロ、ヴィクは旅に必要なものを大量に買って行く。

 キースは一軒の店で首を傾げながら店の亭主と何かを話しはじめている。

 キースが立ち止まったことで三人三様に思う店へと足を向けばらばらになった。


 ショウはキースに付いて回るようになってからフトコロに余裕ができるようになった。

 今までもそこまでギリギリの生活をしていたわけではなかったが、キースは報酬を二人のときは二等分、四人になってからはきっちり四等分にして渡してくれる。


 キースにしたら一人で受け取れる金額を分けるのだから思うところがあるのかもしれないが、そういったことには頓着がないのか気前よく払ってくれる。


 ショウは必要なものを揃え終わって宿へと戻った。

 宿の前には女が一人立っていた。もしかしたらキースを待っているのかもしれないと思った。


 キースに会いに来る女たちは賢い女が多かった。

 キースが急いでいるときには近寄ってこず、その代わりキースが気を緩めた途端に誰かしらがやってくる。

 王都に滞在して一週間。日替わりで女がキースを訪ねてくる。


 早い者勝ちとでも決まっているのか、女が二人やってくることはない。

 美人ばかりではないところがキースを憎めないところだったりもする。


 その上、女たちには女特有のねっとりしたものがなくキースが目覚める前にさっさと立ち去っていくことが大半だ。

 目覚めたとき隣に誰もいないベッドを見てキースは何を思うのだろうか?


 最初の頃はキースだけなぜ?と悔しい思いもしたが、これがキースの甲斐性だと思うと当然のことかと最近は思えるようになった。

 羨ましいのは変わらないけどな!!


 キースは犯罪者には容赦がなかったが、殺さずに済むときは極力殺さないようにしているし、被害者には老若男女を問わず優しかった。

 優しかったけれど甘さはなまるでなかった。


 被害者として保護しても犯罪者の仲間かもしれないと五分五分で考えているとキースが言っていた。

 背中を向ける時が一番怖えとも。



 最初は被害者でも犯罪者と長く一緒にいると感化される被害者も少なからずにいるらしい。

 言われてみればと思い当たる案件が何度かあったと納得した。

 仲間が背後から切られたり刺されたりしているときは、被害者だと思って背を向けた時に被害者にやられていた。


「キースのように背中にも目がほしいもんだ」

 独り言が漏れて、寂しい男と嫉妬する男は嫌だねぇー。




 キースはこの国では見たことのない食材が多く並んでいる商店の親父に声を掛けた。

「珍しいものが多いな」

「南の方の国から持ってきたんだ」


「ここまで結構日にち掛かるだろう?」

「ああ、日持ちするものばかりだから心配はいらないよ。日が経てば美味しくなるものもあるからな」

「確かに。そういうものもあるな」


 キースは食べ方や調理の仕方を教えてもらいながら珍しい食材を二回分ずつくらい買っていく。

「好みはあるだろうが、どれも間違いなく美味しいと思えるものだから安心して買ってくれや」


 キースは笑いながら店から離れた。

 街から離れたら食べることしか楽しみがないから、珍しいものを食べるのが待ち遠しいと思った。

 

 最近は商売のほうがあまりできてない。

 三人がくっついてきているという理由もあるが、何かと急ぐ旅が多かったことも理由に上がる。

 寒村には食材や商品を持っていってやらないと、金はあるのに飢えて潰れてしまう村もあるので今回はしっかりと仕入れをした。



 宿の前に身たことがある女が立っていた。

「キースさん。お久しぶりです」

「悪いな。顔は覚えているが名前が解らないわ」

「名乗っていませんから」

「そうか」


「部屋へ行ってもいいですか?」

「あんたが大丈夫なのか?」

「はい」

 女は嬉しそうに俺の後ろをついてきた。


 誰かが後ろに立つと一瞬、肝が冷える。

 意識が背後に持っていかれる。

 助けた女でもその後の生活をしているうちに俺に恨みを抱く女もたまにいる。

 なぜもっと早く来てくれなかったのか?

 なぜ助けたのか?

 死なせてくれればよかったのに。

 

 そんなふうに恨みをつのらせて俺が街や村に入った途端にその思いを爆発させてしまうこともある。

 だがまだ襲われる方がまだましかも知れない。

 一晩中恨み言を言われて泣かれるとこちらのほうが泣きたいと思う。

 正直、助けた後のことまで責任持てない。


 女を見分けられる能力も欲しいと思うが、こればかりは何度失敗してもなぜか成長しない。

 キースの中にある甘さが残っているせいだろうか。


 部屋に入ると女にあっという間に押し倒されて、女が上に乗っていた。

 女はまた名乗らずにやることだけやったら「また会えたらね」と言ってさっさと帰っていった。

 もっとこう離れがたいとかいう気持ちはないのか?

 ありがたいと思うが。


 俺の相手をしてくれる女は朝目覚めたらいなくなっていたり、今日の女のように名前を名乗らない女も結構いる。

 二度と俺の前に顔を出さいない女も多くて、俺って下手なのか?と悩んだことも少しだけある。

 不特定多数としている現在、いつか病気をもらうかもしれないとちょっと不安に思っているのは誰にも言えない秘密だった。



 道なき道を西へと向かって進む。

 小さな村を目指して。

 村に入ると村長に声を掛けて商売を始める。

 ゼロとヴィクが目を丸くしているが気にしない。


「今年は遅かったですね。もう来てくれないのかと思いました」

「仕事が詰まっててね。大丈夫だった?」

「ご心配ありがとうございます。なんとかやりくりできていました」

 種芋と狩った鳥や猪の肉を売ってこの時期収穫される野菜を買い取った。


 空き家を一軒借りて四人で泊る。

 屋根があるだけましというような空き家だが屋根と壁があることに感謝する。

 買い取った野菜と南の方の国の珍しい野菜と来る途中に狩った鳥を煮込んで腹を満たした。


 翌早朝村長には昨日の晩に出立の挨拶をしているから挨拶せずに出ていく。

 森の中で猪の魔物の気配がしたのでショウが一人で仕留めた。


 今までなら一人では倒せなかった魔物にも奥せず突っ込んでいけるようになっている。ショウは出会った頃に比べるとかなり成長している。

 右斜め前なら任してもいいかと思えるくらいには。

 見えないところにはまだ置けないが。


 小さな村ばかりを回って王都から見て西側にある大きな街で二日泊ることにした。

 門を通るときの憲兵の様子に不信を持った。

「ギルドに急ごう」

 ゼロ、ヴィク、ショウは深く頷く。


 ギルドに着くと職員以外誰もいなかった。

「何があった?」

 視線が背後を差し、首を小さく横にふる。

 キース達が何かを言う前に「素材の買い取りですね!」と言う。

「ああ。・・・ここで出してもいいのか?」


「はい。大丈夫ですよ。素材のみお願いしますね」

 出すべき素材のほんの一部だけを渡してそれに見合う金額と紙を一枚渡された。

 その表情はいらぬことは喋るなと訴えかけているので、紙をそっと隠して渡された金額を四等分にしてゼロたちに渡した。


 依頼ボードを眺めるような素振りをして人の気配を再確認する。

 見えないところに二人いるが、それはこの支部のギルマスと副ギルマスだとキースは考えた。

 もしくは・・・?

 また厄介事だとキースは気を引き締めた。


 捕まえた盗賊たちを引き渡せずに抱え込むことになった。

 今回捕まえたのは秋の終わりになると食い詰めて盗賊に身を落とす・・・そんな典型的な者ばかりだった。

 今回はそんな奴ばかりで稼ぎはいまいちだし、ひと働きするか。

 北の方の国は儲かったなぁ・・・とキースは遠い目になった。



 全員で情報収集をすることにしてバラける。

 いつものように今日売り切ってしまいたい値段が落ちている物を買い占める。

 この時間ならまだ人通りは多いはずなのに足早に立ち去って行く者が多くてますます嫌な感じがする。


 声を上げ値段を言いながら片付けを始める露天商たち。

 それを買い漁るキース。買い漁るキースに次々声がかかり、キースの周りに露天商の主人たちが商品を持ち寄って値段を言ってカネを払うと露天商たちは片付けもそこそこにこの場から離れていく。


「みんな慌てているみたいだけどなんかあるのか?」

「最近日が暮れると物騒なんだよ」

「どこが一番物騒なんだ?」

「領主邸だよ。日が暮れたら外に出たら駄目だぞ」

 答えた男もキースから金を受け取ると逃げ帰るように走っていった。

 

 その場に山となった商品をマジックバックに収納してその場を後にした。

 よく考えたら表通りの宿なのにキースたち以外宿泊客がいなかったことを思い出す。

 宿代も安かった。

 何かが起きているのは間違いない。街に入ったときくらい気を抜きたいもんだと思いつつ宿へと向かった。


 宿に帰るとショウがこの街の状況の情報を手に入れてきた。

「結構大きな盗賊団がこの街に根をおろしたらしいよ」

「憲兵は何しとるんかのぉ?」

「盗賊団にこっぴどくやられたようです。人数も盗賊団のほうが多いらしくて、領主様が領主邸の地下に囚われられているらしい」


「ギルドは?冒険者たちはどうしたんだ?」

「冒険者は殺されたかもしくは追い出されたのか捕まえられているのか・・・。何人か死んでいることは確認が取れた。ギルマスと副ギルマスは牢屋に入れられているらしい。まだ生きている保証はない」

「生きてるかな?」 

「際どいところだと思う。遺体を片付けるだけでも大変だろうからすぐには殺さないと思うんだが・・・。一週間ほど前に始まったらしい」


「らしい・・・だったらいいな?って言う話ばっかりだな」

 キースは考え込む素振りを見せる。

とりあえず日が暮れてから外を歩いていなかったら襲われることは今のところはないそうだ。夜外に出た奴は例外なく死体になって道端に転がっているのが見つかっている」


「最近儲けが悪かったから、儲けどきだね」

 ゼロが期待に胸弾ませるようにキースを伺う。

「ショウ、明日もうちょっと詳しく情報を集めてくれるか?」

「解った。任せておけ」



 根城となっている領主邸をじっくり観察したいところだが、盗賊団が根城にしていることを知られているため人の姿が見当たらない。

 人ごみに紛れることができなかったら見通しが良すぎて偵察もままならない。


 それでも遠目から門に配置されている人数や出入りしている人数を数えていく。

 この盗賊団は夜型なのか人の出入りも少ない。

 怯えた商人が入っていくのが見えた。

 商人が出てくるのを待って声を掛けた。


 商人から聞けることは聞いた後、商人が「領主様は本当に良い方なんです。領主様をどうか助けてください」とお願いされた。

 中の様子を尋ねる。

「入ってすぐのところで商品を下ろすように言われて中には入れませんでした」

「下ろす間何人くらいの人間が居た?」

「13人いました。一人は手配書に乗っているバードン・アンバレラだったと思います」

「アンバレラかっ!解った。他に何かあるか?」

「いえ、私が解ることはそれだけです」


「助かった。こちらの方針が立てやすくなった。できるなら街から出たほうがいいと思う」

「領主様が心配なので宿で解決するのを待ちます。キースさん」

 キースの名を知っていることに驚く。

「領主様を、屋敷のみんなを助けてあげてください」

「約束はできないが、できるだけの努力はする」


 領主邸をぐるりと遠回りに一周してキースはその場を離れた。

 買い物しながら噂話を仕入れつつ、商品も仕入れていく。

 いつもの値段よりも安いので腐るわけでもないのでついつい買い込んでしまう。

 

 普段と違うのは早く売り切っていまいたい露店商人たちがキースを取り巻いて値を下げていくことだった。

 キースは満足しながら孤児院の場所を確認する。

 孤児院に行くと普段なら子供の遊び声が聞こえるはずが、からっ風が吹き抜けていくだけでシーンとしていた。


 建物の中に入って声を掛けると下男と思われる男が出てきた。

「食うものはあるのか?」

 下男らしき男が小さく首を横に振る。

「子供たちも街の手伝いの仕事ができなくて実入りがなくて・・・」


 キースは調理場へと案内するようにいい、仕入れた野菜や狩った肉を寄付だと言って渡してやった。

「しっかり食べるように伝えてくれ」

 下男は膝をついて手を胸の前で組み合わせて「感謝します」と言った。


 シスターがそのことを知り、キースが孤児院から出る寸前にやってきて感謝の言葉をひとしきり言うので、小銭をひとつかみ渡してやった。

「ありがとうございます!ありがとうございます!!」

「後少し頑張れ」

「はい!」



 宿に四人が集まって情報の共有をした。

「中にバードン・アンバレラがいることが解った」

「バードン・アンバレラ!!今最高額に近い賞金がかかっているやつじゃないか?!」

「そうなんだ。バードン・アンバレラが率いている盗賊団かどうかは解らないが、手強いのがいると覚悟したほうがいいだろう」

 ショウ、ゼロ、ヴィクが頷く。


 領主邸に居座っているのは百五十〜百七十人くらい。

 増減しているので正確な人数は解らない。

「領主邸でそれだけの人数(まかな)えるのか?」

「領主邸ならそれくらい問題ないだろう?」

「なら今まで生活していたものは?」

「・・・・・・」


「盗賊側に寝返っているのか、領主を人質に取られて仕方なく言うことを聞いているのか・・・」

「倒すにしても判断が難しいのぉ」

 ヴィクがぼやく。

「だが長引かせるわけには行かない。既に貧しいものから飢え始めている」

「そうだな・・・」

「夜には出歩いているらしいから、今晩から人数を削っていこう」

 四人で頷いてとりあえず昼寝することにした。

ここに来てゼロの師匠の名前がヴィクと判明・・・。

ゼロの師匠と書き続けるのが苦しくなってきてしまいました。

ギルド長が名前を知っていてということで登場させました。

師匠と書くとキースの師匠と混同しそうなので名前をつけることにしました。


読んでいただいてありがとうございます。

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