17 キースさんやっぱかっけー!!でも怖ぇえっ!!
今回はキース軍団の新人くん(冒険者としてはそれなりの実力者)の視点からキースを見ます。
キースが馬を走らせるスピードがどんどん落ちていく。
今ではもう駆けているというより常歩で歩かせているようなスピードだ。
誰もが不審に思っているが口には出さない。
ここに来るまでにキースのすることには意味があると全員が納得していたからだった。
今回始めて参加した冒険者たちはキースはどこかおかしいと思っていた。
最初はキースが犯罪者を仕込んでいるのではないかと疑うほどに、指し示す方向で何某かの事件が起こっていた。
この国はこんなに犯罪が多いのかと驚くほどに。
俺たちが移動してもこんなに犯罪者に当たることはない。
けれど、今では気付かなかっただけではないのだろうかと思い始めていた。
キースのようになりたいと心から思う。
それと同時に自分には無理だということも理解できた。
「意識を研ぎ澄ませろ」と言われたが、それ自体の意味が理解できない。
いや、違うか・・・。
人間が神経を研ぎ澄まし続けられるのなんてほんの一時だ。それに研ぎ澄ませてもキースが感じるほど遠くまで意識が飛ぶなんて考えられない。
「冒険者は魔物の気配が解るはずだから、それをもっと鋭くさせたら犯罪の気配も解るはずだ」
そんな事を言われても解らない。
俺は時には魔物の気配だって解らないこともある。
キースが左前方を指差し「魔物・・・狼?三体。六人」と言い、次は自分の番だと指さされた方向へ進路を変更した。
五分ほど馬を走らせたら痩せこけた狼の魔物が三匹いた。
狼の魔物に馬が襲われないように急いで馬から降りて、一人が馬の面倒を見る。
この六人の中で一番の実力者が一人で一匹の狼の魔物に相対して後の二匹は二人組で対応した。
空腹の狼は厄介で武器を持つ俺達のことは相手にしてくれず、馬ばかりを狙う。
その意識を反らせながら退治しなければならない。
こちらに向かってきてくれれば簡単なのに、ひらりひらりと躱されてしまう。
狼の魔物の視線は馬に釘付けだ。
俺が振り回した剣が偶然にも後ろ足を傷つけることが出来て「よくやった!!」と褒められて少し嬉しく思いながら追撃をした。
狼の魔物の意識は俺に向いたので、俺は剣を振り回して視線を釘付けにした。
相棒が横から胴へと剣を突き立てることが出来て、俺の剣も首筋を舐めることが出来た。
血が吹き出し、俺と相棒は自分の倒すべき魔物を倒し終わった。
急いで他の狼の魔物を探す。
俺達が最後だったようで、リーダーがマジックバックに収納しているところだった。
俺達が倒した狼も収納されて、一息ついて馬に乗る。
「なぁ、キースさんだったらどうやって倒すと思う?」
「三匹を一人で相手にするのは難しいんじゃないか?」
「そうであってほしいよな。一体、一撃とかだったら俺泣いちゃうよ?」
俺達はキースが戦っているところを見たことがない。
「キースさんが戦っている姿を見てみたいよな〜・・・」
「この後見られるかな?」
「急いで合流するぞ!!」
「おうっ!!」
今朝キースから受けた指示はキースより前に出てはいけないということだった。
合流する時、必ず下方から合流するように言われている。
キース達の集団はどこかと見回すと、少し離れた場所に土煙が見えた。
「あっちだな」
「下方へだぞ!!」
「解ってるよ」
それほど走らせること無くキース達の集団に追いついた。
合流するとキースは停止した。
「ちょっと早いけどここで飯にしよう」
キースの言葉に馬達を休ませ、水と飼葉を馬にやる。
人間よりもお馬様のほうが優先順位は高い。
食事当番が食事の用意を始め、食事当番以外の者が馬の世話をする。
リーダー格の人達がキースに質問をしている。
「ここで少しゆっくりして、町に近づいたら一気に駆けることになる。直ぐに戦闘になる可能性が高いので準備は整えておいてくれ」
「解った」
ついにキースの戦闘が見れるのかと興奮したけれど、その時には俺も戦っているのだと気がついた。
戦いたいが、キースが戦っている姿を見たい。
馬番になりたいかも・・・しれない。
キースは身長百八十八cmくらいだろうか。
本人には聞けないけれど、リーダー格の一人が百八十四cmって言ってたので、それよりもまだ高いから百八十八cmぐらいかなと思っている。
体重は多分八十kg前後だと思う。
これだけ背が高くても鈍重な仕草はどこにもない。
筋肉は付くべきところには付いていて、背中が広く手足が長い。
背後から見ると凄い男前だと想像するが、正面に回るとそれほどでもない。ちょっと失礼だが事実なので仕方ない。口には絶対しないけど。
男前やハンサムという言葉からは少し遠い。
背が高いから埋没しないけど、背が低ければどこに居ても違和感がない。
金髪に近い金茶髪で瞳の色も金茶。光の加減で金に見えるときもある。
女にモテるらしい。
まぁ、助けてもらったりしたらそれだけでもコロリと惚れてしまうだろう。
とてつもなく強いという話だし。
少し悔しくて、羨ましい。
俺も強くなりたい。
羨望の眼差しでキースを眺めていると視線がかち合った。
フッと笑われ、俺の頬は朱に染まる。
くっぅ!!恥ずかしいっ!!
結構のんびりと食事を取って後片付けをする。
「なぁ、キースさん地図も見ずに移動しているけど方向間違ったりしないのかな?」
俺と同じく今回から参加の奴が小さな声で尋ねてきた。
「だよなぁ。まさかと思うけど町や村全部覚えているのかな?」
「そうとしか考えられないよな」
前回も地図を一度も見なかったと噂で聞いた。
あくまでも噂なので本当か嘘か解らない。今回一緒にいる間は一度も地図を見ていない。
くそうっ!やっぱ次元が違うよな!かっこいいぜっ・・・。
俺もギルドが出している地図くらいは頭に叩き込まなくては。
キースが進行方向よりやや東のあたりを眺めて一つ頷いて「行くぞっ!!」と皆に声を掛けた。
「おうっ!!」
いよいよだっ!!
馬もゆっくり休んだからか、足が速い。
もしかしてそんなところも考えているのだろうか?
皆、短距離疾走のように馬から尻を上げて駆けていく。
くっそう!きっつい!!
周りを見る余裕もなくひたすら前の馬についていく。
キースが馬上で剣を抜いている。
町の門が遠くに見える。
まさか町中でかち合わないように調整していた?
そんなことって出来るのか?
キースの前方には十二〜三人くらいの集団がいる。
その進行方向を遮った形でキースが俺達向けてくるりと指を回す。
取り囲むようにっていう指示だ。
やっぱり町中に入れないように合わせてたんだ!!
俺達が指示通りに周りを取り囲んでいる間に、キースはすでに切りかかっていた。
見るからに頭だと思う男にまるで話しかけるように斬りかかる。
気負いも何もない。無から急に剣を振るう。
たった一太刀で頭と思う男が馬上から落ちた。
キースは二人目、三人目と斬りかかり全て一太刀で馬上から落としている。
なのに血が出ているように見えない・・・。
俺は直ぐ側にいた人を落とした馬を捕まえてキースの邪魔にならないように集団から引き離す。
ゼロやショウも切り掛かって馬上から落としていく。
キース、ゼロ、ショウの三人で十三人いた集団は馬から落ちていた。
キースさんの剣は片刃って言うのは本当だったんだ。
キースが落とした男は切創がない。
馬上から落ちた怪我はしているようだけど。
キースは馬から降りて、頭と思わしき男を残してマジックバックへ収納していく。
一人残された頭と思わしき男の胸ぐらを掴んで「お前が頭か?お前たちがギルドを襲ったのか?」と凄く怒りを抑えた声で聞いている。
答えない男に切っ先を太ももに立て「知ってるか?ここには太い血管が走っていてそれが切れたら助からないんだよ」
剣の重量に任せて切っ先が太ももに食い込んでいく。
「や、やめろ。そうだ!!俺たちがギルドを襲った!」
「何件?」
「よん、四件!!」
「お前が率いているのか?」
「そうだっ!」
「他にメンバーはいるのか?」
「いないっ!!今捕まった奴らで全員だ!!」
「ほ・ん・と・う・か?!」
太ももにさっきより切っ先が食い込んでいく。
「本当だっ!!」
「でもなぁ、お前たちの強さで冒険者がそうそうやられるとは思えないんだよ」
「依頼受注している最中に隙を狙って表からと裏から入って襲っていたんだっ!!」
「ふぅ〜ん・・・」
キースは納得がいかないようだ。
「受付の弱いやつを人質にとってたっ!!」
「なるほど・・・。何を目的でギルドなんか襲ったんだ?」
「し、知らない!!」
「知らない?」
語尾が跳ね上がりキースの恐ろしさが倍増した。
「襲うように指示されたんだっ!!ポケットから地図を出すから切るなよっ!!」
一枚の紙が尻のポケットから取り出される。
キースが受け取って開く。
「その順番通りに襲って皆殺しにして来いって言われたんだ」
「仲間はここにいるだけって言わなかったか?」
キースの声が一段と低くなる。
聞いているだけの俺が思わず身震いしてしまった。
それは頭の男も同じだったようで、慌てて言い募る。
「仲間は本当に今捕まったやつだけだ!!ただ依頼されたんだ!!」
「依頼だと?」
「そうだ。その紙に書いてある順番は、弱いところから徐々に強くなっていくようになってるって言ってた!少しずつ力をつけろって。頭も使えよと言われた。一件襲うと俺には金貨十五枚、他の奴らは金貨十枚貰ってた」
「ギルドを襲う理由を言っていたか?」
「何も聞いていない!!本当だっ!!」
キースは剣を鞘に納めて頭の男をマジックバックへ収納した。
キースは数秒黙って俺たちを見回してため息を一つ吐いて「残念ながらこれで終わりじゃないみたいだ」と言った。
ここまで来て初めてキースの見た目が出てきました。
顔さえなければ格好いい男!キース!!
もう一話完結と言えなくなってきてしまいました・・・。
人気がないのに私はこの話を書いている時が一番楽しい・・・。_| ̄|○ il||li




