15 何故か三人に付き纏われて、北の方の国にまで一緒に行く
キースとショウはいつもどおりに気の向くままに移動を続けていた。
何故かゼロとその師匠にも再び出会って、なんとなく一緒に行動していた。
四人の中で一番勘がいいのはキースで、キースの赴くままに他の三人もついてきた。
キースが馬を走らせると同様に付いてきて、キースはちょっと鬱陶しいなと思っていた。
「ゼロ!!二人はもう少し東へと行った所が嫌な感じがする!!」
「解った!!」
ゼロ達は急いで東へと向かう。
キースとショウは眼の前で襲われている旅芸人の一座と思われる数台の馬車を襲っている奴らを倒していった。
旅芸人達は戦い慣れていて、手助けの必要はなかったかとキースは思ったがこれは楽ないい仕事だとマジックバックに盗賊達を収納していった。
最後に美人のお姉さんたちに礼を言われて、目の保養にもなりいい仕事だったと満足しながらゼロ達の元へと向かった。
ゼロ達も商隊が襲われているところに助けに入ったようで、今はもうほぼ制圧は終わっていた。
こちらは男ばかりの商隊で潤いがなかった。
やっぱり俺の勘はいい。とキースは自画自賛して笑っていた。
「今回ちょっと北の方の国境を超えるわ」
キースはそう三人に伝えると理由を聞かれた。
「なんとなく・・・?」
三人は顔を見合わせながら「これから寒くなるぜ?!」と言いながら「着いて行く」と言った。
キースはなんとなく一緒に来てもらったほうがいいと感じていたので、拒絶はしなかった。
冒険者ギルドはこの大陸全土、共通している。
本当か嘘か解らないが海の向こうでも多少の齟齬はあるが共通だと聞いたことがある。
あくまでも噂だから解らないが。
冒険者は他国へとの出入りは自由だし、どの国の冒険者ギルドも利用可能だ。
言葉が違う国もあるがキースは師匠から習っていて、この大陸の言葉は全て操ることが出来た。
まぁ、今から行く国の言語は多少訛りはあるが、同じなので心配はないのだが。
国境を難なく超えて一番近くの冒険者ギルドへと顔を出す。
手配書を片端から集めて、知っている顔がいくつかあったのでキースは冒険者カードを提出して七人の手配書を見せて、隣国で捕まって処刑されたと伝えた。
受付のおじさんに礼を言われて「確認を取ってみるよ」と返事があった。
「今日こっちの国に来たところなんだけど、優先度の高い手配書はどれかな?」
四枚の手配書が渡された。
「一、二、三、四」と受付のおじさんが順番に指さしていく。
そして新たに九枚の手配書を出してこれもまた順に指さしていった。
「優先度一番の奴は三百人くらいの手下がいる。削っても削っても増えていくんだ。もう、十年も捕まえられずにいる」
「そいつは凄いですね・・・」
ゼロが感嘆の声を上げる。
「弱い小さな盗賊団を吸収していくんだ。そして力も強い」
「どの辺りをアジトにしているか解っていないんですか?」
「頭目自体が動いているのかどうか解らんのだが、国の彼方此方に移動していると思われている」
「解った。とりあえず留意する。今日泊まるいい宿ってあるか?」
宿の条件を話すと、受付のおじさんにお勧めの宿を教えてもらえた。
キース達はギルドから出てまっすぐ宿へと向かった。
風呂に入り、洗濯女に洗濯を頼んで宿が提供してくれる簡易な衣装を身に着けて、キースはベッドの上にゴロゴロと転がりながら貰った手配書を並べて、その中の一枚を見ていた。
優先度の低い男の似顔絵が手の中にある。
ひと時も忘れたことはない。
両親と兄弟を殺した男。
幾ら探しても見つからないはずだ。
手配書によるとキースの両親を殺して三年程でこちらで人を定期的に殺している。
食い詰めては誰かを殺して小銭を奪い取る犯罪を繰り返していた。
弱い相手しか殺さない。
卑怯な男だ。
キースは意識を研ぎ澄ませ、自分が探し求めている相手はどこにいるのかと、窓から見える曇った空を見上げた。
洗濯物が全て乾くまで宿で過ごすことに決め、冬を超すための準備を整えることにした。
ショウ、ゼロとゼロの師匠に「どこまで付いてくる気だ?」と尋ねた。
「キースはいつまでこの国にいる気なんだよ?冬は辛えぞ?!」
キースは手配書の一枚を取り出して見せ「この男を捕まえたいんだ」と答えた。
三人は黙って手配書を見て「キースと関係があるのか?」と聞き、キースは「ああ」とだけ答えた。
ショウは「付き合う」と言い、ゼロとゼロの師匠は「とりあえず一番首を捕ってみたいな」と言った。
キースは「なら一番首取りに行くか」と立ち上がり、まだ冬には間があるが、馬をこの国の寒さに強い馬に乗り換えることにした。
今はまだ夏の終わりで暖かいが、それでも夜は布団が必要になるほど寒くなる。
この国では夏の終わりになると野営は出来ない。どこかの村か街にたどり着けないと不味いことになる。
冬用の装備を準備して、冒険者ギルドでギルドがどこにあるか記載されている地図を買った。
師匠が書き込んでいる地図を持っているが、かなり古い。新しいものを持っていたほうがいいだろう。
ギルドからギルドはだいたい馬車で二日の距離ごとにある。小さな村ともいえない集落は一日で走行できる距離にある。
たとえどんなに小さな集落でも宿泊施設は完備されている。
ただ、泊まることができる建物があるだけだが、それがないと秋頃からは凍死者が出てくるとキースは教えられていた。
ギルドの受付のおじさんに「野営はせずに必ず建物の中で休むように!!」と念を押された。
「本当に死んじゃいますからね?!北の国を舐めたら駄目ですよ!!」
背後から声をかけられた。
この国の馬は足も太くて体もでかい。
冬を過ごすために脂肪を、雪道を走れるように筋肉を蓄えている。
キースは地図を開いて三人に向けて一箇所を指さした。
「ここが怪しいと思っている。何かには当たるはずだ」
そう言ったのに、キースは指さした場所へはまっすぐ向かわなかった。
半日も進むとキース達を襲いに盗賊がやって来た。
「バウンティハンターに狙いをつけるとは驚きだな」
ショウが言って、四人は方向転換して襲われる前に襲ってしまえと向かって行くことにした。
十五人ほどだ。それほど時間を掛けずともあっさり制圧して、馬も逃さずに取りまとめた。
この国の馬の値段はキース達がいた国の馬の四倍ほどの値段がする。
馬だけでもそれなりの稼ぎになる。
馬達は賢く調教されていて、キースは自分が乗っている馬と交換することにした。
他の三人も同様に馬を交換して、今日泊まれる村へと急いだ。
嬉しいことにその後、二度も襲撃されて七十人程捕まえた。
捕まえた奴らに尋問したが、一番首の盗賊団ではないらしいが、アジトと残数を教えてくれたので村には向かわずアジトへと向かうことにした。
四十人ばかり残っているらしいが、キース達は一気に攻め入り三十分程掛けてアジトを制圧した。
この後誰か戻ってくるのか聞いたが、沢山戻ってくると聞かされたが、キースは誰も戻って来ないだろうと思っていた。
キース達四人は盗賊のアジトで眠り、翌朝他に捕まえた盗賊団のアジトへと向かった。
「この国のバウンティハンターは仕事をしてないのか?」
ゼロが疑問を口にし、誰も答えてやらないのでキースがしかたなく答えた。
「寒さで身動きが取れなくなるのが嫌で強行手段に出ることはないんだろうよ」
「ふ〜ん・・・夏でも?」
「サボり癖もあるだろうけど、この時期は多分冬の為に盗賊団も稼ごうと頑張っているんじゃないか?」
「ああ、なるほど・・・」
ゼロは納得がいったのかそれ以上は聞いてこなかった。
「ゼロ、この国の冬の寒さを舐めてると痛い目に遭うからな!!」
「キースはこの国の寒さを知っているのかよ?!」
「俺は一度、この国で一年間過ごしたことがある」
「そうなのか?」
ショウが食いついてきた。
「ああ。師匠に連れられてこの大陸の全部の国を回ったからな」
「ふぇ〜〜〜師匠厳しいねぇ〜」
「この国では師匠は俺で暖を取っていたよ。二人でくっついて眠った・・・何度か死ぬかと思ったよ」
キースはあのときの冬の寒さを思い出し身震いした。
「そうだな・・・真冬には国に戻った方がいいかもしれないな」
他の三人は「そうしよう!!」と強く言った。
ゼロの師匠は特に強く「冬は暖かい方がええ」と何度も頷いていた。
キースもこの国の真冬を思い出し、来年の春に戻ってくる方がいいかと思い直し始めていた。
「まぁ、とりあえずこの国で成果を出してからだな」
「そうだな。最低限の元はとりたいよなぁ」
キースの気の向くまま走っていればなにかにぶち当たることを知っている三人は何も言わずにキースに行き先を任せる。
国境から一週間ほど離れた所でやたらと襲われるようになった。一日に五〜六回襲われる。
それもバラバラの盗賊団に。
聞いてみるとキースが言ってた通り、冬になる前に稼いでおかないと冬を越せなくなるので、どの盗賊団もこの季節になると焦るらしい。
夏の間に準備すればいいのに。
それぞれがアジトを教えてくれるので、既に十以上の盗賊団を潰していて、冒険者ギルドから表彰された。
表彰と言っても「ありがとう」と言われるだけで、他は何もないが、実績にはなる。
処刑場がフル活動していると噂話を聞いた。
キースは三人に「元は取れたと思うんだが、戻るか?」
「そうだのぅ・・・昼間も結構冷えてきだしたしな。夜は震え上がるほど寒いしな」
ゼロが「キースはどっちへ向かうほうがいいと思うんだ?」と聞いてきた。
キースはちょっと考えて、なんとなく戻ったほうがいい気がした。
「戻る」
そう答えた後は早かった。
もと来た道を戻るのは無駄になるので、西へ移動してから南下することにした。
その街道でもキース達は入れ食いのように盗賊が現れて、捕まえてはアジトを潰して国境手前の冒険者ギルドで帰り道に捕まえた盗賊や強盗犯を引き渡した。
「ここに戻ってきたということは国に戻るのですか?」
受付のおじさんに聞かれる。
「ええ、来年の春にまた来ます。何月頃がいいですかね?」
ショウとゼロの師匠が真面目に聞いている。
「春も付いて来る気か?」
「この国のほうが稼げそうだしのぅ」
三人は平然とキースに肯定して見せた。
「もしかして春まで俺にくっついている気か?」
「稼ぎがいいからなぁ・・・」
ショウは完全に付いてくる気だ。
キースはため息を吐いて「好きにしてくれ」と諦めた。
ちなみに五月頃から盗賊団か活発になるので、そのくらいに是非とも来て欲しいと受付のおじさんにお願いされた。
国境を超えて自国に戻った最初の冒険者ギルドで顔を見た途端に受付のおねーさんに怒鳴られた。
「もうっ!!どこ行っていたのよ!!キース!!今直ぐ王都の冒険者ギルドに行って!!」
キースは休憩する暇もなく冒険者ギルドを追い出された。
「急いで!!急いで!!」と。




