12 赤ん坊を殺すのが趣味な男を今度こそ捕まえる!!
「ギルマス、戻ってらしたんですか?」
「戻らざるをえんだろう?」
いかつい顔でキースを睨みつける。
唯一冒険者ギルドがない街にギルドを作りに来て王都のギルマスが戻っていた。
キースは俺を睨んでも仕方ないだろうにと不平を思いつつ、ギルマスと握手を交わす。
余計な会話は一切なく要点のみを二人は話す。
「今グアンテがどこにいるのか解るのか?」
「いえ、今はすっかり気配が消えてしまってどこに向かっているかも解りません」
「とりあえず十五人集めておる。三人はかなり使えるやつだ。五人ずつ面倒を見てもらえ」
「助かります」
「ゼロ、ナツメ、ショウは知っているだろう?」
三人と握手を交わし久しぶりの挨拶を交わす。
ゼロとは同じ師匠に付いていたことがある。
子供の反抗期がずっと続いているようなやつなのだが、師匠に認められた男だ。腕は立つ。筈。
「五人ずつに分かれてもらって、ゼロ、ナツメ、ショウの下についてもらいたい。それと七人と八人にも別れられるようにも決めておいてもらいたい」
ナツメがサブリーダー的なことをしてくれるようにさっさと班分けをしてくれて、面倒事はナツメが引き受けてくれるようだ。
強者の実力はそれなりに分かるが、それ以外の実力がよく解らない。
実力はおいおい解るだろうと思い、最低限の装備は自分で用意して欲しいと伝える。
「すいません。最低限の装備はどの当たりまでですかね?」
ハルテが聞いてきたのでゼロに最低限の装備を教えてやってくれと頼んだ。
キースは最低限の装備と言ってそれがどこまでか判断つかないようなやつがいるとは思わなかった。
ゼロは面倒くさそうに別室に全員を連れてゼロの装備をみせるのだろう。
武器が変われば用意するものも代わる。そのへんは臨機応変にやってくれるだろう。
「赤ん坊を見たんだって?」
「・・・・はい」
「ギルドとして最優先案件として扱っている。犯人の容貌も解ったことだし、情報が集まるだろう」
「いや、多分、手配書を見ていても判別できないだろうと思っています」
「そうなのか?」
「気配を消すのがうまいし、赤ん坊を前にしている時とそうでない時はまるで別人みたいんなんです。普通ならおおよその方角程度なら解るはずなんだが・・・それがさっぱり解らない」
「捕まえられるか?」
「正直、自信がない・・・ここまで気配を消されてしまうと、次の犯行は止められない」
「・・・そうか」
ギルマスは目を伏せて祈るように口元の前で手を組んだ。
「もしかすると、模倣犯が出てくる頃かとも思っている」
「模倣犯か。厄介だな」
「気配は全く違うので間違うことはないが、赤ん坊の危険が増える。親には子供から離れないように、家の中でも同じ部屋にいるように注意喚起して欲しい」
「その辺りは任せておけ。キースよ、お前はグアンテを捕まえることだけを考えて動け。他の案件は他の奴らに任せてしまえ」
「頑張ってみますよ」と自信なさげにキースは答えた。
ギルマスと別れの挨拶をしてとりあえず北西に行った方がいいと感じるので王都から北西へと直ぐに向かうと告げた。
「キース!!街のギルドに馬を交換できるように準備してある。交換が必要な時はギルドに行け!!」
ギルマスが二階の窓から怒鳴り声を上げたので「ありがとうございます!!」とキースも大声で返答した。
「とりあえず北西へ向かう!」
野太い声で「おーーー!!」と響き、ちょっと恥ずかしいと思った。
王都の北門からでて「北西に異変を感じているやつはいるか?」と聞くとゼロとショウだけが反応した。
「急ぐぞっ!!」
北西に向けて道なき道を走っていると、キースとゼロ、ショウ、ナツメ以外に指を指して「行って来い」と急がせる。
キースとリーダー格はスピードを落としてゆっくり走る。
遠目で眺めていると、襲われている馬車にたどり着き、危なげなく捕まえていく。
まぁ、犯人一に対して捕まえるほ方が二〜三だもんな。
これで手こずるようでは困ってしまうよな。
ナツメとゼロが生き物を入れられるマジックバックを持っているとのことで、二人が向かい、犯人を収納した。
「北に向かうぞ!!」
ナツメが残って、襲われた人達に王都に向かうように伝え、犯人はキース班が捕まえた。と伝えるように説明していた。
北でも馬車が襲われていて、さっき捕まえた奴らの仲間だとキースは感じていた。
こちらも簡単に捕まえられて、遅れてきたナツメがまた襲われていた人達に王都に戻るように伝え、キース班が犯人を捕まえた。と言うように伝えていた。
日が経つに連れキースの勘はどんどん鋭くなっていく。
けれどグアンテの気配が見つけられない。
一瞬、自分は間違った方向に進んでいるのではないかと不安になった。
キースは首を振って自分を信じろ!と自分で言い聞かせた。
時折、ゼロ、ショウ、ナツメにも気になる方角があるか?と聞いてみるが三人は首を横に振る。
ならやはり自分を信じるしかないのだ。
その日は同じように馬車が襲われているところを二軒助けて、六十人近く捕まえたが犯人達の頭は捕まえられていなかった。
キースは日も暮れた中、東へと進んでいき小さな村の集落へとたどり着いた。
ここは何年か前に襲撃されて廃村になった村だった。
「ここに今日の盗賊達の頭が居そうなので、この村にいるやつは全員掴まえていい。女相手でも油断はするなよ」
キースは他の奴らに任せて、森へと行く道へと急いだ。
物置小屋があって、そこには手枷足枷が付けられ、猿ぐつわを掛けられた女が五人閉じ込められていた。
キースは声を上げるなと伝えてから解いてやって、水を飲ませてやる。
干し肉とパンを与えてやり一息ついた頃、方が付いた気配がしたので皆の下に女達を連れて行った。
その日は一晩その村で過ごして、犯人達の馬がいたので女達に与えて王都へと向かうように告げた。
女達は不安がっていたが「先を急ぐのですまない」と伝えて女達だけで王都へと向かってもらった。
十日も経つと仲間の癖も理解できるようになり、半数だけを怪しい方向に向かわせて、キース達は気の向くままのところへ向かい、次の街で合流するように示し合わせなくても自然とできるようになっていった。
ゼロは万年反抗期だと思っていたが、今はすっかり鳴りを潜めていて、キースの言う事を素直に聞いてくれていて、要らぬ軋轢を避けられている。
ゼロの成長に感謝を神に捧げたいと思ったことはゼロには言えない。
また二週間ほど経った頃、グアンテの気配を感じた。
キースは何も言わずに全速力で走り出すと全員がキースにあわせて全速力で走り出す。
キースが南南東を指差し「八人!!」と言うと八人が何も聞かずにそちらへと向かった。
前方で馬車が襲われていて「五人!!」というと五人が馬車の方角へと進んでいく。
ショウとハルテが俺に付いてきて馬を全速力で走らせる。
街に着くと本来は馬を走らせてはいけないのだがキースとショウは馬を走らせ、ハルテが門番に説明をしている。
憲兵が何人も集められ、ショウが引き連れて来る頃にはキースはグアンテと対峙していた。
赤ん坊は生きているが、斬られていて火が付いたように泣いている。
グアンテの殺し方は痛みを与えるだけ与えて、泣く力もなくなってきたら心の臓をゆっくり貫くのだ。
「グアンテ、探したよ」
「そのようだね。まさかまた現場を押さえられるとは思っていなかったよ」
「俺も間に合うと思わなかったよ。俺に追い風が吹いているのかもしれないな」
グアンテに勝ち誇ったような笑顔を向けてやる。
物凄く嫌そうな顔をして「やっぱり前回の時に殺しておくべきだったんだな」
「ああ。そうすべきだったぞ。今回も俺を殺すべきだぞ?」
グアンテが赤ん坊の頭を鷲掴みにして俺に投げつける。
俺はそっと子供を抱きとめて、母親に渡して「血止めをっ!!」と叫んでグアンテの跡を追う。
ショウが馬でグアンテを追い掛けているのが見える。
俺も馬に跨って、グアンテが逃げていった方角とは違う方向へと馬を向かわせる。
単なる勘でしかなかった。その間で生きているキースにはそれに掛けるだけの経験があった。
俺なら気配を消して、街から出たようにみせかけて街の中心部へと逃げ込む。
人混みに紛れたら見つけられないとグアンテは自信を持っている。
今頃ショウは逃げられているだろう。
グアンテはこちらに向かってくるはずだ。
キースは馬から降りて、キースも人混みに紛れた。
血の匂いのするやつを探し当てるんだ。
逃がしては駄目だ。
これ以上赤ん坊に被害を出してはいけない。
フッと風が吹いて血の匂いがした。
反射的に手がそいつの手首を掴まえて、足を引っ掛けて転がし、直ぐ様足を折り、顔を見て「みつけた」とキースはニヤリと笑ってグアンテの胸を刺し貫いた。
そこからは阿鼻叫喚の渦だった。
突然男が男を刺し貫いたのだから周りは叫び声を上げてキースのいる場所から逃げていく。
憲兵が出てきて、キースを取り押さえようとするから「俺はバウンティハンター・キース!!身分証を出す。早まるなっ!!」
キースはグアンテの腹の上に膝を置いたまま、空間収納から冒険者カードとグアンテの手配書を憲兵に差し出した。
ショウがやって来て「あいつは間違いなくバウンティハンター・キースだ!!やつの下にいるのは赤ん坊殺しのグアンテだと思うっ!!」
と叫んでいた。
キースはグアンテが死んでいることを確認して、刺したナイフを念のため一度捻った。これで間違いなく死んだはずだ。
憲兵に「生きて捕まえることが出来ただろう!」と言われたが「俺は殺された赤ん坊の親達と約束したんだ。絶対に逃がしたりしないと」
本当は殺してやると約束した。
万が一にも逃げられる可能性をキースは潰したのだった。
遺体は冒険者ギルドに運び込まれ、グアンテと判定されてから憲兵へと渡された。
キースは街中で人一人殺したので、厳重注意という名の説教を三時間受けただけで開放された。
その頃には冒険者ギルドに今まで一緒に行動していた十五人の男達も揃っていた。
全員で今まで捕まえた犯人達の賞金を十五で均等に割った。
キースが金貨一枚を赤ん坊の親達にとギルマスに渡すと、十五人も金貨一枚ずつ渋々出していた。
「今まで俺の指示に従ってくれてありがとう。気に入らないこともあっただろうが、何も言わず付いてきてくれて感謝している。また何かあったら助け合おう」
キースはそれだけを言って王都のギルマスに報告しにいくことにした。
王都に一緒に戻ると言った五人がキースに付いて来た。ショウがついてくると言ったのはビックリした。
王都に着くまでにも数人捕まえて「犯罪者、本当にいなくならないなぁ・・・」とキースはため息をついた。
ちょっと続いた話を終わらせることが出来ました。




