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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第9話:パーティー(パシリ)

「講習とか受けたかったら、あそこにある用紙に書いてから持って来てね。それと、分からない事があったらいつでも相談に乗るから頑張るのよ」


 登録証。またの名をギルドカードを受け取り、クラリアから軽く説明を受けて登録関係のあれこれが終わりとなる。


 講習については気が向いたら受けるとして、まずは常設依頼を受けてダンジョンに行くと……。


「あ、あの!」


 しようとしたところで、シトリスが話し掛けてきた。


 無視してしまいたいが、無駄に大声を出されたせいで注目を集めてしまっている。


 旅をしているならばともかく立場と場所的に変な噂を流されては父上の邪魔になってしまう。


「何か用で?」

「良かったら、パーティーを組んでくれせんか?」


 おおぉ……思っていた通り一人だったのは良いとして、それを俺に頼んでくるか……。


「俺なんかじゃなくて、先輩冒険者のパーティーに入った方が良いよ。その方が楽だし、経験になるし」

「……あなたはどこかのパーティーに入るんですか?」

「俺は一人だよ。ここのダンジョン位ならこれで火力は足りるし、接近されてもそれなりに戦えるからね」


 ダンジョンのランクしかしらないが、物理的な罠も魔法的な罠も見破る方法は知っているので、即死系が無い限り下手を打つことはない。


 最後の戦いで俺が殺してしまったが、盗賊王と名乗っていた奴から盗賊としての技能については教えてもらっている。


 勿論タダではなく金と仕事を手伝う条件があったが、教えてもらったから愛剣を手に入れる事が出来たので感謝している。


「で、でも前衛とか居た方が安定するわよ!」

「二人だとその分依頼金を分けないといけないし、男女だと面倒な問題もあるからねー」

「うぅ……それは……」


 ダンジョン自体はランクが低いとは言え、立ち寄っただけのそれなりに強い冒険者とかもいるし、諦めてさっさとそっちに行ってくれないだろうか……。


 同じ子供とは言え、これだけ粘る理由が分からない。


 立ったまま話していても注目を引くだけだし、煩いとギルドを追い出されても困る。


 一度座って上手く言い包めるしかないか。


「とりあえず一度座ろうか」

「……分かったわ」


 ギルドに併設している酒場の、なるべく端の方のテーブルに座り、飲み物を頼んでおく。


 出来れば酒を飲みたいところだが、頼んでも出してくれないだろうから、果実百パーセントジュースを頼む。


 少し割高になるが氷入りにしてもらったので、冷たくて美味しい。


「さて、なんでそんなに俺に括るの? 先の事を考えたら、しっかりと教えて貰った方が身のためじゃない?」

「その……年上は苦手で……知り合いもいないし、一人だと不安で……」

「一人って……他領から来たんじゃないの? こんな僻地まで来といてそれはおかしくない?」


 ここまで来るのは一人だった訳だし、もっとしっかりとしているギルドで登録すれば、新人もたくさんいるはずだし、態々ここを選んだならただの馬鹿としか言えない。


「それはそうなんだけど……」

「あまり言いたくないけど、君は貴族だろう? 学園にも行かず、剣を握ってるのを見るに訳ありだろうし、デメリットしかないんだよね」

「――どうすれば……どうすればパーティーを組んでもらえますか?」


 何故だか分からないが、シトリスの目は覚悟に染まっている。


 銀髪に青目。面と向かって見ると性格とは違いキツイ印象を受ける。


 誤魔化しているが…………まあ、こいつで良いか。


 出来ればそこら辺の孤児や、金を貯めてから奴隷でも買って金を稼ぐ気だったが、シトリスに恩を着せるのも悪くない。


 どこの貴族なのか、こんな所まできた理由とか気になる点は尽きないが、最悪は旅に出てから捨てれば良い。


 ともかくこの場さえ乗り切ってしまえば、後はどうとでなる。


 多少金を稼げなくなるが、その分はシトリスに働いてもらえば良い。


「……仕方ないな。面倒だけど、組んであげるよ。その代わり報酬の受け取りは六四ね」

「……それだけで良いの?」

「俺が組みたくない理由の、一番の理由は金だからね。ついでに、お互い詮索は禁止って事で」


 これでも父上の付き添いで貴族のパーティーに出ていたが、こんな目立つ奴を見た事が無い。


 そして子供が一人で出かけられる距離なんてのはたかが知れているし、学園って単語にも反応を示していた。


 可能性を考えればいくらでも出てくるが、お互い詮索しないで知らぬ存ぜぬが自分の身を守るには一番だ。


「うん。それで大丈夫よ」

「あまり気は進まないけど、とりあえずお互いに自己紹介をしようか。俺はヴィンレット。呼び方は任せるよ。見ての通り魔法専門で、火と水の初級魔法なら大体使えるかな」

「私はシトリスよ。剣は我流で、属性魔法は……その、使えないわ。でも――剣だけ負けないつもりよ」


 …………あー、昔聞いたことがあるが、属性魔法を使えない貴族の子共は、親次第では大変らしいんだったかな。


 詮索しないと自分で言ったわけだし、この事について聞くのは止めておこう。


 気にしている様だしな。


「別に魔力が無い訳じゃないし、気にはしないさ。それでパーティーだけど、今日だけって訳じゃなくてしばらくの間組みたいって事で良い?」

「うん。出来ればここのダンジョンをクリアする位までは、一緒にパーティーを組めたらありがたいかな」

「なるほど。俺はこの街に住んでいる訳じゃないから、パーティーを組むのは週に三日で良い?」

「大丈夫だよ。空いてる日は、訓練とか街での依頼を受けるから」


 ダンジョンの許可が出たからと言って、毎日来ることは出来ないし、面倒だから来たくない。


 ついでにジオやステラの面倒も見ておかないとだし、父上の仕事を手伝わないと母上が苦労する事になる。


 一週間が七日となるので、ざっくり隔日位でダンジョンだったり適当な依頼を受ける予定だ。


 ただ、ダンジョンの最奥を目指すとなると、時間的に少し厳しかったりする。


 深いダンジョンなら途中に転移ポイントとかあるが、父上に聞いた限りではそこまでのダンジョンではない。


 一人ならば多分行けるが……そこまでうま味もないので時間の無駄だ。


「了解。んじゃ、いくつか依頼を受けたらダンジョンに行こうか。今日中に少しでも良いから、稼いでおきたいからね」

「……講習を受けた方が良いって言ってたけど、受けなくて良いの?」

「一層よりも奥に行く気は無いから大丈夫だよ。講習を受けるなら、俺がいない日でお願いね。戦いの基礎とかならともかく、知識的なことは二人で受ける意味もないからね」

「うーん。分かったわ」


 俺が死んでから増えた新しい常識や知識なんかもあるだろうが、あったとしても直ぐに必要になる事はないだろう。


 シトリスが受けてくれるならばそれはそれで有りだし、俺がとやかく言う事は無い。


 軽い打ち合わせも終わり、掲示板から三つの依頼を剥がす。


 ゴブリンの魔石を五つ納品と、ウルフの毛皮を五枚。それからFランクだけが受けられる、ダンジョンへと入るチュートリアル依頼の三つだ。


 ダンジョンに現れる魔物はダンジョンが産み出した存在であり、倒しても死体が残らない。


 その代わりドロップとして素材が入手できるので、解体作業が無い分楽をする事が出来る。


 旅をするなら解体技能や死体の処理の仕方は覚えておかなければならないが、知っているので問題ない。


 なんなら火と水の魔法が使える分、昔より楽だろう。


 最後のチュートリアル依頼だが、これは一種の裏依頼となっており、ギルドの講習を受けておくと教えてくれる依頼となっている。


 無論今の俺は受けた事が無いが、転生前は一通り全て受けているので知っている。


 そして言い訳の為に、試験前に掲示板を眺めておいたのだ。


 依頼書をクラリアへ見せた際に驚かれたが、この言い訳で納得してくれた。


「それじゃあ行くとするか」

「あっ、武器を取ってくるから、少し待ってて」


 ギルドから出てダンジョンへ向かおうとしたところで、シトリスは走って行ってしまった。


 …………待つとするか。


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