第8話:ギルドの試験
お互いに自己紹介的な事をしながら、ギルドの試験について考える。
昔はゴブリンだけだった気がするが、制度が変わったのだろう。
一々ゴブリンなんて用意できないギルドもあるだろうし、最低限戦えるかを見るならば模擬戦でも良いとなったのだろう。
どううせ登録出来るのは確定しているし、どちらでも良いが……。
「人と魔物ってどんな違いがあるの?」
「人ならギルドの裏手にある訓練場で戦って、許可が出れば直ぐに終わるわ。魔物の場合はダンジョンに行かないとだから少し時間が掛かるかな。ただ、討伐した魔物を換金出来るから、少しお金が貰えるわ」
…………お金を貰った記憶が無いのだが、まあカモられていたんだろうな。
基本的に騙される方が悪いって考えなので気にしないが、高がエール一杯位の金すら奪い取るとはな……。
どちらを選んでも良いが、人を相手にしてからダンジョンに行くのが無難だろう。
もしもテストついでにダンジョンへ行くなら、合格した後に一度ギルドまで帰ってこないとだろうし。
「じゃあ人でお願いします。それと、受かった後は直ぐにダンジョンへ行っても大丈夫?」
「うーん。私としてはお金が掛かるけど、講習とかを受けてから行って欲しいかな。もしくはどこかのパーティーに入ってとか」
つまり行く事自体は問題ない訳だ。
ならばまずはテストに合格してから決めるとしよう。
大変面倒ではあるが、お金も最低限稼がなければならないので、美味しい依頼があるならダンジョンへ行かないのも手である。
宿屋で一泊するための金と、ギルドに登録するための金以外は持ってきていないので、何か買うならば金が必要なのだ。
「なるほど。後は合格してから考えるとします」
「分かったわ。それじゃあ準備してくるから、座って待っていてね」
「了解」
答えたものの、ただ座って待っているのは暇なので、掲示板に貼られているフリーの依頼を見る。
昔は一切使ったことがなかったが、効率を重視するなら依頼を受けるのも手だと賢者が言っていた。
俺としては強い奴や魔物を殺した方が早いし有意義だったので聞き流して事だが、今の俺にとって効率とは甘美な言葉だ。
最小の労力で最大の結果を得る。
なんて素晴らしい事か……。
とは考えてみるものの、所謂低ランク帯にはそんなにうま味のある依頼はほとんど無い。
街の中の依頼は雑草の駆除や店の売り子。教会の手伝いに門番の補助。
ダンジョン系だと素材の採取がほとんどだ。
街の中の依頼の場合、いくつかやれば宿の代金と酒代くらいにはなるだろうが、金を貯めるのは無理だろうな。
ダンジョンのはほとんど歩合制になるので、頑張れは一日でそれなりに稼げるだろう。
「ヴィンレット君。準備が出来たからついて来て」
「はい」
クラリアに呼ばれたので、訓練場まで付いて行くと、少し悪人顔の青年が居た。
ついでに俺ほどではないが、まだ幼さの残る少女が緊張した面持ちで立っている。
「これまた随分と小さいな。大丈夫なのか?」
「それを見るのがあなたの役目です。今連れてきたのがヴィンレット君で、もう一人の子がシトリスちゃんよ」
「男が魔法で女が剣とは珍しいが……俺は今日の試験官をする、ルテアだ。一応Cランクになる。それで、どっちからやるんだ?」
Cランクって事は冒険者としては中堅となり、それなりに修羅場を潜っていそうだな。
顔はどちらかと言えば小悪党みたいだが、俺の勘が雑魚ではないと告げている。
こんなギルドでは過剰戦力だと思うが、旅の途中で寄ったとかだろうか?
「わ、私からお願いします」
「よし、なら掛かってきな……ってその前にルールだが、一本入れるか、俺が止めるか降参するかまでだ。武器は……ギルドの貸出しの奴だな。んじゃ、来な!」
「はい!」
シトリスは返事と共に剣を抜き、ルテアに向かって剣を振る。
完全に素人って訳ではなさそうだが、ジオと同じ位って感じだな。
冒険者になる事自体は問題なさそうには見える。
最低限剣が振れるか、魔法が使えれば問題ない。
そこから強くなるかは本人次第だ。
しかし、こんな少女が一人で登録に来るなんて珍しい。
単純に街の依頼を受けるだけならば分かるが、この様子では戦う事も視野に入れているように見える。
ギルドに登録してからパーティーを探すよりも、友達とかと一緒に冒険者になり、パーティーを組むのが一般的だ。
特に女性ならば猶更だろう。
「まあこんなもんか。冒険者としては問題ないな。合格だ」
「はぁ……はぁ……ありがとう……ございます」
五分程攻撃を続けるものの、ルテアには当たる事無く全て避けられ、タイムアップとなる。
思っていた通り合格となったか。
筋は悪くなく、十歳前後でこれくらい動けるならば強くなりそうだ。
だが…………こいつ、貴族だな。
太刀筋が綺麗過ぎるし、昔見たことがある剣術だ。
服や防具はそこら辺の物だが、まだ小綺麗だし、一番は髪だろう。
銀髪なのは珍しいって程ではないが、手入れをしっかりとしている痕跡がある。
単純にキレイ好きなだけって線もあるが、そうなると一人でギルドに登録しに来るのが不可解だ。
これだけの容姿なら、鼻を伸ばす男が居てもおかしくない。
関わらないでおくのが一番だな。
「んじゃ次はそっちのぼうずだな。見たところ魔法使いっぽいが、試験では接近戦以外は禁止だからな。杖しかないなら武器の貸出しもやっているが、どうす」
「これで大丈夫です。杖の強化くらいはしても問題ないのでしょう?」
背中に縛っていた杖を取り出し、強化を施す。
それを見たルテアは挑発的な笑みを浮かべる。
武器に魔力を込める。正確には纏わせる行為は結構難しかったりする。
ただ魔力を込めるだけならばそうでもないが、身体強化の様に強化をするには幾つか段階を踏む必要がある。
まあそこら辺についてはどうでもよく、俺にとっては必要技能だったため、転生してからもこれだけはなんの練習をしなくても使えている。
身体が覚えているって奴ではなく、魂が覚えているのだ。
「それが出来るならもう合格で良いんだが……駄目なんだろう?」
「はい。規則としては試験官が合格を出せば問題は無いのですが、技術だけではなく力も見ないといけないので」
ルテアの問いかけにクラリアは真面目に答えるが、思っている事は同じの様だ。
戦わなければいけないのは流石に昔と一緒か。
被っていたフードを下ろし、杖を片手で構える。
「それじゃあ行きますよ」
「ああ。ルールは一緒だが、大丈夫か?」
「勿論」
先程の戦いを見て、ルテアの力量が父上より下なのが分かったので、一撃入れるのは簡単だ。
だが簡単に終わらせてしまうのは良くない。
知識にもあるが、下手に力をひけらかすのは馬鹿がやる事だ。
俺のやったこれはそれなりに、魔力に精通していれば誰だって出来る事だが、子供がCランクの冒険者を手玉に取るのはあまりにもおかしい行いだ。
なので……。
「ふっ! はぁ!」
「悪くないが、若干腰が引けているな。それ、男なら頑張りな!」
良い感じに腰が引けている少年。そんな感じで杖を振るう。
ローブを着ている理由の一つに、体型を隠すってのがある。
これでも父上のせいでそれなりに鍛えているため、身体を見られればちゃんと戦えると知られてしまう。
しかしローブで身体を完全に隠し、少し腰を引いて身体ではなく腕だけで杖を振るえば、誤解を招く事が出来る。
「良し、これ位で十分だな。魔法専門みたいだが、体力もしっかりとある。合格だ」
「いやー。流石Cランクの冒険者ですね。一撃当てたかったですが、まだまだみたいだ」
「腰が入ってなかったからな。まああれだけ振るえるなら、この先も大丈夫だろう。んじゃ、依頼は完了ってことで良いな?」
「大丈夫です。お疲れ様でした」
「おう。んじゃ、二人とも冒険者として頑張れよ」
俺も合格を貰い、ルテアは俺の頭を雑に撫でてから去って行った。
予定通りだが、腕だけではやはり無理だったな。
後二年も経てば身体もそれなりに出来上がってくるだろうし、そうすれば腕だけでもそれなりに戦えるようになるだろう。
「それじゃあ登録証を渡すから、受付に戻るわよ」
三人で受付まで戻り、シトリスが木製の板にギルドの焼き印をした、ギルドの登録証を俺達に渡す。
これを受け取るのも二度目だが、懐かしく感じる。
ギルドの登録自体は簡単なため、低ランクの冒険者や傭兵は大量に居る。
なので、経費削減のために最低ランクのFランクでは木で出来た簡易的な登録証になる。
ランクが上がれば登録証の質も上がっていくが、Dランクまでは早めに上げて起きたい。
木製だと加工がされているとはいえ、保存に難があるからな。




