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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第10話:ナナホシ

「待たせてごめんね」

「そんなに待ってないから大丈夫」


 十分ほどで帰ってきたので、そこまでの時間ではない。


 シトリスが持って来た剣は変哲もない鞘に収まっているが…………まあ剣は刀身を見なければ判断できない。


 さすがに鈍らではないだろうが……一応確認しておくか。


「良かったら剣を見せてくれない? 戦った後で良いからさ」

「大丈夫よ。それじゃあ行きましょう」


 ダンジョンがあるのは、街から二十分程歩いた所にある洞窟だ。


 馬車で向かう事も出来るが、金の無駄なので歩いてやって来た。


 ダンジョンの前にはギルドの出張所があり、ダンジョンで手に入れたものを売ることが出来る。


 後は依頼などの報告もでき、依頼達成証明書を発行してもらうことも出来る。


 この証明書があれば、街にあるギルドで依頼金を受け取る事が出来る。


 素材や魔石は数が多くなればその分重くなるので、背負って帰るのは大変だ。


 依頼達成証明書があれば紙切れ一枚だけで済むので、雲泥の差がある。


 問題点もあるにはあるが、俺には関係ないので問題ない。


「これがダンジョン……って、あっ、待って下さい!」

「止まってないで早く行くぞー」


 ダンジョンを見て固まっているシトリスを無視して、ダンジョンの入り口を守っているギルド員にギルドカードを見せる。


 まだ子供ではあるが、ギルドカードさえあれば断られる事無く入る事が出来る。


 ここのダンジョンは洞窟型であり、大きな通路す進んで階段を下りていくタイプとなっている。


 ダンジョン内は何故か明るさが保たれているので、明かりを持ち込まなくて大丈夫だ。


 とりあえず一層に出てくるのは、一般的にグリーンゴブリンと呼ばれている低級のゴブリンと、動物と大差ないウルフの二種類だけとなっている。


 三層目以降はまた種類が増えるが、今日遭遇する事は無いだろう。


「結構明るいね……」

「低ランクのダンジョンだからね。自前で明かりを用意しないといけないダンジョンなんて、ほとんど無いし」

「へー……」


 大抵のダンジョンは朝と夕方に混むのだが、試験で時間がズレたため、入り口付近に他の冒険者は見当たらない。


 人が多いとそれだけ取り分が少なくなるし、要らぬ騒動が起きたりするので、奥を目指さないのならば少し遅い時間に来るのも手だろ。


 まあ奥の方が稼げるので、逆に早い時間や夜にダンジョンに入るのも手かもしれない。


 念のため杖を手に持って歩いていると、ゴブリン特有の汚らしい鳴き声が聞こえた。


「ゴブリンが居るみたいだね。今回はお任せしても良い? ゴブリン位は大丈夫でしょ? 一応援護の準備はしておくよ」

「ええ。任せてちょうだい」


 シトリスは鞘から剣を抜き、警戒しながら歩き始める。


 その剣は……えっ!?


 いや、まさか……そんな事はありえないはずだが……。


 シトリスが抜いた剣は、俺が十数年ずっと使っていた剣だった。


 俺が見間違えるはずもなく、間違いなく俺が死の間際に譲った剣だ。


 柄だけは新しくなっていて気付かなかったが、何故シトリスが持っているんだ?


 ……それとなく本人に聞くしかないか。


 剣の正式な銘は無く、刀身に七つの星が彫られていた事からナナホシと俺は呼んでいた。


 魔力を流すと星が輝き、数が増えるとその分頑丈になり、切れ味も落ちない。


 頑張れば魔力を刃として伸ばしたり飛ばしたりも出来るが、戦場では壊れる心配が殆ど無く、頼りになった。


 そう言えば、七つの星を輝かすには阿保みたいに魔力量を必要とし、俺では五分が限度だったな。


 最大強化時ならばほとんどの鎧は斬り裂く事が出来たし、魔剣や聖剣に対しても有利が取れる。


 そんな剣だが、逆に魔力を込めていない状況では、少し切れ味の良い剣程度だ。


 シトリスの振るうナナホシは一つ目の星が半分くらいしか光っていないため、精々鋼の剣位の強度と切れ味だろう。


 まあそれでも初心者には過ぎた武器なのだが、ナナホシは魔力の消費が激しいからな……。


「ふぅ……どうでしたか? 結構戦えるでしょう?」


 三匹のゴブリンを瞬く間に倒したシトリスは、無い胸を張りながら俺を見る。


 どれ位戦えれば子供として凄いのかは分からないが、転生前の俺よりは強いだろう。


 ちゃんとした剣術を覚えたのなんて十代の後半位だったし、それまでは我武者羅に剣を振るっていただけだった。


 人を殺すだけならそんな剣術なんて必要なく、首に一斬りするか、心臓を貫けば大抵の人は死ぬ。


 これが通用するのは雑魚だけだが、Cランク位の冒険者までならなんとかなっていた。


 まああの頃の力量だと、真正面から戦えば勝ち目はゼロだったのだが、戦争で正々堂々戦うのは馬鹿だけである。


「思ってたよりも見事な戦いだったよ。その剣だけど、もしかして魔剣か聖剣だったりするの? 刀身が普通じゃなかったけど?」

「私も良くは知らないけど、魔剣とかじゃないみたい……多分」

「多分って、シトリスが買ったんじゃないの?」

「ちょっと恥ずかしいんけど、お父さんのコレクションから持ち出してきた剣だから、詳しくは分からないの。見た目がちょっと特殊な剣としか言っていなかったから、別に良いかなって」


 …………俺が転生したのは俺が死んでから五年後で、そこから更に八年経っている。


 仮に奴が子供を作っていたのならば、ギリギリおかしくもない年齢か……。


 本人の顔を見れば本人だと気付けるが、流石に子供の顔から面影を感じろと言われても、俺には無理な話である。


 しかし、子供とは言え盗まれるような所に置いておくとは、あいつも馬鹿な事をする。


 世間では勇者と呼ばれている、俺に止めを刺した男。


 勇者アストラール。


 シトリスが嘘をついている可能性もあるが、あいつが外部から盗まれる場所に剣を置いておくとは考えられない。


 なのでシトリスの話は本当の事だと考えても良いだろう。


 ただそうなると、勇者の娘がこんな所で何をやっているんだって話が出てくる。


 いや、本当になんでいんの?


 嫌がらせか?


 既にナナホシは譲った剣であり、微妙に未練はあるもののシトリスから奪うなんて事をする気は無い。


 下手な事をして勇者が出てきても困るし。


 それに、親の事を話す時にシトリスは少しだけ悲しそうな顔をしていた。


 親と敵対してるって感じてもなさそうだが、どこかでシトリスとは別れた方が良さそうだ。


「盗んできたのはどうかと思うけど、俺がとやかく言うことでもないし、親を困らせるもんじゃないよ」

「わっ、分かってるわ。いつかちゃんと返す予定よ」


 予定ってところが不安だが、まあ良いか。


「さて、次は俺が相手するよ。一応パーティーな訳だし、任せきりにするのも悪いからね」

「魔物は引き寄せた方が良い?」

「大丈夫だよ。元々一人で来る予定だったし、最低限戦える様を見せといた方が安心出来るでしょ?」

「それは……まあ……」


 あまり納得していない感じだが、ドロップ品は無かったので魔石だけを拾って歩き出す。


 少し歩けば、その内向こうからやってくるだろう。


 ダンジョンの魔物は冒険者に反応して産み出されるタイプと、徘徊しているタイプ。それから待機型の三種類に分けられる。


 なのでダンジョンにもよるが、冒険者同士での魔物の取り合いはあまり起こらないし、魔物を求めてずっとダンジョンを徘徊しなくても良い。


 ただたまに変な偏りをみせるので、依頼のドロップ品を全く集められないなんて事故は起こり得る。


 それで勇者はキレた事があったな。


 その点だけは依頼を受ける上での注意点となるが、その様な面倒な依頼はランクを上げなければ無縁であり、受ける気はないので関係ない話だ。


 ゴブリンを倒したところから五分程歩くと、再び魔物の気配がした。


 ゴブリンではなく、ウルフみたいだな。


 昔ならば突っ込んで剣を振るうか、銃を撃つしかなかったが、今の俺はちゃんとした魔法が使える。


「よっと」


 ファイアーボールを三つ唱え、ウルフが飛び出してくると共に飛ばす。


 現れた三匹のウルフはファイアーボールに焼かれながら吹き飛び、そのまま動かなくなる。


 直ぐに身体は粒子となって消え、魔石とドロップ品の毛皮を残していなくなった。


 ウルフはゴブリンとは違い速いのが厄介とされているが、攻撃は単調なので左右どちらかに避ければ基本的に問題ない。


 初心者なら避けて体勢を立て直そうとしている所を攻撃するのが良いだろう。


 慣れれば正面からの一撃が一番効率的だがな。


「す、凄いのね……詠唱もしないで三つも魔法を使うなんて……」

「これ位は出来ないと、 ダンジョンに一人で行こうなんてしないさ。それじゃあ今日はこのまま依頼を達成できるまで頑張ろうか」

「う、うん!」


 何をするにも金金金。


 頑張りたくはないが、稼がないとなー。


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