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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第49話:魔法大会開始

 祖母様に虐められ、父上に虐められ、おまけにメイドから弄られている内に一週間経ち、魔法大会の日がやって来た。


 子供向けではなく、大人向けの魔法大会は俺達が来る前に終わっており、因みに剣術の方は子供向けの物は行われていない。


 一応学園の方で個別にやっているのを知っているが、そんなことはどうでも良くて、今日は大会の日なのだ。


 まずは予選が行われるのだが、予選が行われる会場は二ヵ所ある。


 基本は学園に入学する前の子供のお披露目だが、全員貴族の子供だけって訳にもいかない。


 副都の方は貴族よりも平民の方が多く、この大会にも平民は出てくる。


 つまりはだ、大会は平民用と貴族用の会場で最初は分かれているのだ。


 予選の上位八名が本選出場となり、そこからはトーナメント形式となる。


 大人の方ならば戦いとなるが、子供の方は予選と同じく競技での得点を競う。


 杖にはしっかりと魔力を馴染ませ、少しだけ精霊漬けにしたので、性能は勿論の事、盗まれても直ぐに見付けられるようになっている。


 そんな俺だが、俺が祖父様と父上達全員で向かっているのは、貴族用ではなく平民用の会場だ。


 木っ端の男爵なんて平民と変わらないから、平民側の会場に行け…………なんて嫌がらせを受けたからではない。


 これは祖母様と相談して、その結果として、平民向けの会場で予選を受ける事にしたのだ。


 俺の実力ならばどうせ予選を抜けるのは朝飯前であり、貴族側で受けた場合、どれだけの嫌がらせを受ける事になるか分からない。


 一応祖父様達は伯爵であり、港を持っている大貴族の一角だが、父上は派閥に属している訳でも、傘下として収まっている訳でもない。


 一応どれだけ俺がひどい目に遭ったとしても、表向き祖父様達動く事は無い。


 情報通の貴族に対しての牽制にはなるかもしれないが、多くの貴族は俺を田舎の男爵としか見ない。


 なので、下手に力を見せつければ何かしら妨害をされる。


 正々堂々戦う貴族なんてのは全体で言えば少数であり、俺も時と場合にはよるが、相手が格上の場合小細工や妨害は間違いなくする。


 妨害してでも勝つ。それも一つの力であり、貴族としての強みだ。


 正直なところ、何をされた所で勝つことは出来るだろうが、面倒だから平民側の会場を選んだ。


「結構居るねー……」


 会場に居る子供の数だが、ざっと見て最低でも三十人は居る。


 記念参加の奴も居るだろうが、大半は真面目にこの大会を受けに来ている。


 本戦に出場できるだけでも、功績としては大きいので、将来的にちょっとしたアドバンテージになる。


 なるのだが、そんな志の低いやつらが本選に上がれる事はまずない。


 基本的に平民よりも貴族の方が教育の質が高く、教育と言うのは幼い時程影響を与える。


 そのため、相当才能がないと、平民では厳しいのだ。


「本当に良かったのか? 向こうなら顔繫ぎなんて事も出来るんだぞ?」


 父上が意味の無い事を言って来るが、何を言いたいのかは分かっている。


 これだけ多くの貴族が集まる事はまずないので、学園を見据えて顔を繋いでおくならば、貴族側の会場に行った方が良い。


 だが、俺は学園には行く気が無いし、妨害されるのも面倒なので、こっちに来ている。


「学園には行かないし、下手に顔を繋ぐと執着される可能性があるからね。それに、本選では嫌でも会う事になるしね」

「それもそうだが…………なぁ?」


 父上は少し離れた所に居る祖父様達を見る。


 一応軽く変装をしているが、この会場の中ではどうしても目立ってしまっている。


 俺もどちらかと言えば目立つ側だが、服は少しダボダボのローブにし、髪は目立たない様に帽子を被っているので、悪目立ちはしていない。


 おそらく、好き好んでこっち側に来る貴族が早々いないので、多分貴族での参加は俺だけだろう。


 だが、俺が貴族と分かる奴はいないだろう。


 相手が平民だからって見下したりしないし。


「まあまあ。父上も落ち着いてよ。今日は見ているだけなんだしさ」

「息子の晴れ舞台ってのは案外緊張するんだよ。少し気になったんだが、ヴィンレットがこっちを選んだのって、あれだけが理由か?」

「それだけだけど、何かあるの?」

「いや、噂だけなんだが、なんでも聖女がこの会場に来るかもって聞いてな」


 ………………おっと、思わず固まってしまった。


 あの日聖女が帰って来るとは聞いていたが、それ以降街ではそれらしい噂を聞く事は無かった。


 有名人であり、帰ってくれば直ぐに噂は広まるものだと思っていたし、もしかしたらシトリスから連絡がくるものだと思っていた。


 貴族側の会場に来賓として足を運ぶならば、まだ分かるのだが、どうしてこっちの会場なのだろうか?


「来るとしても貴族側の会場じゃないの?」

「さあな。あくまでも噂だし、ヴィンレットの事だから、何かしら知っているのかと勘繰っただけだ」

「本当に何も知らないよ。まあ、居ても居なくても俺には関係ないし、適当にやってくるとするよ」

「そうか……まあ頑張ってこい。一応ジオと一緒に応援している」

「ありがとう」


 もう直ぐ開会式が始まるので、父上と別れて会場に入る。


 受付をしている人に名前を告げ、番号の描かれた札を貰ってから待機している列に並ぶ。


 やはり俺の身長は周りに比べて低いな…………異世界の知識を使って色々と試行錯誤しているのだが、ままならないものだな……。


 後で祖母様に、魚の干物を売って貰えるか相談しよう。


 カルシウムは骨の成長を助けるらしいからな。


「えー。会場にお集まりの皆さま。これより第五十三回レイアシス魔法大会を開催いたします。注意事項と大会の流れを説明しますので、忘れない様にして下さい」


 周りとの格差に絶望している内に、前にある演台から大会の開催を宣言された。


 注意事項は無視するとして、大会の流れだが、まずは的当てを全員で行い、半分を落とす。


 次に魔法の威力を測る危機に魔法を当て、ここで更に半分落す。


 最後に移動する的の破壊を行い、貴族側と合わせて八人が本選に出場する。


 予選についてはこんな所だろう。


「それでは早速始めようと思いますが、王国民として誇りある勝負を心がける様にして下さい」


 歓声があちこちから上がり、いよいよ大会が始まった。


 こういった和気藹々とした場は久々なため、妙な居心地の悪さがある。


 俺の戦いの場と言ったら、大抵上がるのは怒声か悲鳴位だ。


 昔の俺ならば生温いと切り捨てたかもしれないが、今の俺にはこれ位が丁度良いのかもしれない。


 殺す力が全ての時代は終わったのだ…………多分。


「番号は……四十二か」


 会場は番号ごとに四つに分かれ、俺は四つ目の会場となる。


 二十番ごとに区切られているため、態々ギリギリで会場入りしたというのに、ほぼ最初の方になってしまった。


 こんな事になるならば、もっと早く来ておけば良かったかもしれない。


 愚痴っても仕方ないので、四十一番が的当てをするのを眺める。


 流れとしては、地面から上がってくる丸い的に魔法を当てるのだが、的は一定時間経つと地面へと戻っていく。


 時間が経過するごとに立ち上がる的の数は増えたり、的と的の間隔が離れたりと難易度が上がり、三分間でどれだけの的に当てられるかを競う。


 つまり、この競技は最高得点が定められている。


 丁度今四十一番の的当てが終わったが、点数は三十五点。隣の二十一番は四十二点。


 見るからに不安定な魔法であり、正直ステラよりも拙いのは平民とはいえどうかと思ってしまう。


 単純に才能なのか、それとも努力をしていないだけなのか。


 もう少し順番が後ならば、この位の年齢の平均を測る事も出来ただろうが、生憎もう俺の番である。


「四十二番。準備は大丈夫か?」

「いつでもどうぞ」


 四十一番と入れ替わるように、丸いラインの中へと入る。


 見ていて分かったが、この程度ならば満点を出すのは容易い。


 俺が一度に出現させ、かつ完璧に操る事が出来るウォーターボールの数は七個。


 だが、唱えるだけ唱えて出現させておける数は三十個だ。


 唱え、出し、放つ。魔法とは基本的にこの三つのプロセスが必要となってくる。


 詠唱破棄すればこれが二つになり、最初から呼び出して待機させておけば、一つのプロセスだけとなる。


 銃で言えば撃鉄を倒してある状態が、一番早く弾を打てる事ができ、次に撃鉄を倒してから引き金を引く行為が早い。


 最後にホルダーから取り出してって感じだ。


 まあ魔法の種類によってはこのプロセスが変わってくるわけだが、まあそんなうんちくはどうでも良く、要は今の俺にとって的当てはクソ簡単って事だ。


 ホルダーから杖を取り出し、審判の声を待つ。


「始め!」


 声と共に、ウォーターボールを十個だけ作り出し、立ち上がった的を目掛けて一つだけ飛ばし、直ぐに補充する。


 二つ立ち上がろうが、距離が開こうが関係なく、淡々と繰り返し的を倒す。


 祖母様みたいに、急に小さくなったり、回転が掛かったりすることが無いので、ほとんど脳死で出来る。


 これで一度に立ち上がる的が十個とか、目視が難しい位遠くの空だったりすれば変わってくるが、まあ子供の遊び程度の難易度なので仕方ない。


 四十一番の時と的の位置とかは変わっているが、満点は問題なく取れる……が、ここで少しだけ小細工をしておく。


「そ、そこまで……きゅ、九十八点です」

「どうも」


 最後の一つだけ外し、満点を回避しておく。


 それでも周りがざわつき、俺から距離を取っているが、強者が恐れられるのは普通だ。


 俺も祖母様の杖が貰えないのならもう少し自重しただろうか、それなりに力を示しておかないと後々面倒になるので、少しばかり居心地が悪いが、今だけの辛抱だ。

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