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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第32話:魔法使いにおんぶを強請るってどうよ?

 一人ぼっちで馬車に乗り、やって来たダンジョン。


 最近は狩ることよりも、シトリスと訓練をする目的で使っていたが………………そう言えば一人で来るのは初めてだったな。


 今回目指すのは、あまり人のいない四層以降となる。


 そして金策以外の目的だが、精霊魔法を実戦で使うことだ。


 俺の理論通りならば、最低でも中級程度の威力なら簡単に出せる。


 それも通常の魔法よりも低燃費でだ。


 襲ってくる魔物を、魔力を纏わせた杖で殴って倒しながら進む。


 いつも見掛ける中年の冒険者に挨拶したり、ダンジョンの見回りているギルド職員に話し掛けたり。


 そんな事もしながら目的地である四層の奥までやって来た。


「さてさて、まずは……」


 精霊眼を発動し、精霊が見えるようにする。


 契約精霊がいないので単純に精霊が見えるようになる恩恵しかないが、ダンジョン内で精霊がどうなるかも見たいので使っておく。


 そして歩いていると、良い感じにゴブリンが三体現れた。


「水よ。貫け」


 そこら辺に浮いている精霊を集め、魔力と共にイメージを流し込む。


 すると空中に水の槍が三本現れ、俺に突っ込んでくるゴブリン達へと突き刺さる。


 魔法の発動から発射までは俺の思考は絡まず、最初の詠唱以降は全て精霊側が制御している。


 使った魔力は初級と同程度だが、操作をしていないので他の魔法を一緒に使う事も出来る。


 理論的に威力は上げられると思ったが、成功してなによりだ。


 今回試した方法は、クラリアさんの精霊魔法を見ていて気が付いたものを採用した形となる。


 精霊魔法とは精霊に魔法を使ってもらう訳だが、基本的に一体の精霊にお願いする形となっている。


 なので強力な精霊と契約する必要がある訳だが、これにはちょっと抜け道があった。


 そもそも何故一体の精霊に使ってもらう必要があるのか?


 人間だって複数で魔法を使う事があるのだから、同じことを精霊でも出来ないのだろうか?


 つか、多分同じことを賢者はやっていた。


 なので何度か試行錯誤して、今回実戦にて試してみたのだ。


 結果は見ての通りだが、この方法で精霊魔法を使う場合一つだけデメリットがある。


 この方法で精霊魔法を使う場合、近くに一種類の低級精霊を呼ぶ事になるので、他の属性の精霊魔法がしばらく使えなくなってしまう。


 まあ俺の場合は水属性の精霊しか使えないので、デメリットに関しては問題無い。


 昔もそうだが、俺はあまり器用ではない。


 確かに一個一個に分解すれば色々と出来ているが、同時に色々とやるのは好きではない。


 シンプル・イズ・ベスト。機能美こそが芸術。


 賢者みたいに、多種多様な魔法を使う事に憧れを抱いていないと聞かれれば使ってみたいと答えるが、俺はなるべく楽をしたい。


 なので、基本的に戦いで使う魔法は水属性水魔法にしようと今決めた。


 火属性の方が確かに攻撃力が高いが、燃やすと結構臭いのだ。


 それにどうせ精霊魔法を使うのだから、奥の手として火属性を隠しておくのも戦術の一つだろう。


 それと父上からの遺伝なので、なるべく使いたくない想いがある。


 挑んだのは俺だが、あそこまでコテンパンにされると、流石にイラっとした。


 俺はこれから母上の後を継いで頑張るとしよう。


 さて、父上への愚痴は一旦止めておいて、今度は通常の魔法と一緒に使ってみるとしよう。


 母上にお手玉の魔力コントロールを教えてもらってから、暇さえあれば訓練してきたのはこの方法を試すためだ。


 この方法で更に剣も使えれば、昔よりも大勢を相手に戦う事が出来るだろう。


 …………いや、戦う予定はないのだが、前回負けた戦いに勝ちたいと思うのが男だ。


 今の世代にあの頃程の強者が居るか分からないが、備えあれば憂いなしと言う。


 異世界風に言えば、影の実力者って奴だな。


 主人公に付いて回る商人が、実はラスボスと同じ位強いパターンとも言える。


 まあ誰が主人公か知らないし、仮に主人公と呼べるような存在が居れば近寄らずに逃げるつもりだ。


 騒動になんて巻き込まれたくないからな。


 っと、丁度良い具合に魔物の反応があったな。


 迎撃しても良いが、魔法を試すには数が少ないので、音で釣ってもう少しおびき寄せるとしよう。


 原始的な方法だが、石を投げて音を出し、相手の隙を突いたり、誘ったりするのはかなり有効だ。


 特に緊張感漂う戦場や、野営地ではちょっとした物音一つに敏感になる。


 ミスると自分の居場所を相手に教えるだけなので、注意が必要だが、魔物相手にもかなり有用だ。


 手頃な石を魔物が居る方に投げ、自分が居る方に誘いながら他の魔物を探す。


「良い感じの広場だな。迎え撃つには丁度良い」


 セーフティーとしてではなく、たまたまあったダンジョンの広場。


 その中央辺りで止まり、おびき寄せた魔物たちが来るのを待つ。


 そして、ゴブリンやウルフ。アルミラージやハイコボルト。


 大体二十匹くらいが流れこんできた。


「水よ」


 先程とは違い、一言に魔力と想いを込め、更に通常のアクアランスを五本展開する。


 先に自分で発動したアクアランスを撃ち出し、時間差で現れた精霊魔法のアクアランスが避けようとした魔物を撃ち抜いた。


「荒れ狂え」


 足の速いウルフを全て倒し、次はアクアスパイラルを改良した精霊魔法を唱える。


 契約精霊が居なくてもそれなりの精霊魔法が使えるわけだが、残念ながら出来る事には限りがある。


 だが、通常の魔法とは違い結構自由が利くので、上級魔法を中級クラスに落とし込んで使うなんてことも出来る。


 上級だとドラゴスパイラルという魔法名であり、龍を模った水で相手を薙ぎ払ったり食いちぎる魔法だ。


 これを中級のアクアスパイラルという魔法で代用した。


 オート照準だが、破られたり魔力が無くならない限りは消えないので、ドラゴスパイラルモドキで残りの内半分を倒し、残りを追加で出したアクアランスで貫く。


 全ての魔物を倒し終わったが、魔力消費は少なく、通常魔法だけで戦う場合よりも四割位は節約できたと思う。


 まだまだ訓練は必要かもしれないが、とりあえず実戦として使っても問題なさそうだ。


 実験も終わり結構な魔物を倒せたが、時間的な余裕はまだまだあるが、帰りながら魔物を倒していけば、今日の稼ぎ問題ないだろう。


 それにしても、精霊魔法は便利だな。


 発動に少しタイムラグがあるが、それでも手数を増やせるのは大きい。


 これで契約した精霊が増えれば、火力に手数と言うこと無しだ。


 ただ、いくら鍛えても賢者に魔法で勝つのは無理だろうな……。


 自分で学んで理解したが、あいつは魔法に関しては理外の存在みたいなものだ。


 俺も人の事は言えないが、最後の戦いで賢者がいないだけで、どれだけ楽になっていた事か……。


 勇者や剣聖。聖女も厄介には厄介だったが、賢者が居なければワンチャン共倒れを狙えたかもしれない。


 幾ら剣の腕が良く、どれだけ速く動けたとしても、それ以上に魔法の方が手数や範囲と言う面では勝っている。


 これが一対一ならばともかく、集団戦となればかなり厄介だった。


 しかも魔銃程度の攻撃では、かすり傷一つつけることが出来ないくらい本人も強い。


 あの戦いでも魔銃で二人程殺せていたが、長年生きているだけあり体術も出来るのだ。


 弾の半分は賢者の魔法を阻止するためだけに使われ、最後は勇者によって真っ二つにされた。


 やはり魔法使いは、初手で潰すのが定石だったな。


 憎んではないが、賢者には慰謝料代わりに精霊の一匹でも紹介してもらいたいものだ。


 なんて考えている内にダンジョンの外まで帰ってきた。


 いつも通りギルド出張所で換金し、証明書を受け取って街へと戻る。


「お帰り。一人で大丈夫だった?」

「勿論。はい、証明書ね」


 一人なのでポケーとしながら帰ってきて、クラリアと雑談する。


「そう言えば、また空いてる日ってある?」

「……出来ればそんな事をギルドで聞かないでほしいんだけどね」

「会えるのがここだけなんだ、からどうしようもなくない?」

「言い方の問題よ。ヴィンレットのせいで私がなんて言われてるか知ってるの?」


 ジト目で睨まれるが、何がいけなかったのだろうか?


 分からないので軽く首を傾げるとため息を吐かれた。


解せぬ。


「はぁ……子供に何を言っても無駄ね。明後日なら空いてるわ」

「なら明後日家に行くけど良い?」

「言い方ー!」

「いて」


 鋭いチョップを頭に受けたので、チョップされたところを擦る。


 地味に痛かった。


「そう言われても、これの事を言葉にして困るのはそっちでしょ?」


 フードを少し捲り、片目だけをクラリアから見えるように光らせるが、何やらギルド員達がざわめき始める。


「……私に恨みでもある?」

「無いけど?」

「……天然かー。シトリスちゃんも大変だろうに……明後日ね。分かったわ。それと、これが今日の分よ」

「ありがとう。それじゃあまたね」


 よく分からないが、挨拶をしてからギルドを後にする。


 帰る前に倒れているシトリスを街の外で発見し、筋肉の感じを確認した後に水をぶっかけて冷やし、乾燥させておいてやった。


 これまでもしっかりとランニングとかをやっていたおかげか、疲労は思っていたよりも少ない。


 俺の作ったスケジュール通りに進むだろうが、この調子なら最後の追い込みも出来るかもしれない。


 焼け石に水程度だが、勝利がコンマ一パーセントでも上がるなら儲けものだ。


「それじゃあ俺は帰るから、日が沈む前に宿屋に戻れよー」

「……送ってってくれないの?」

「そんな軟な身体じゃないでしょ。魔法使いにおんぶを強請るってどうよ?」

「酷い……」


 悲しみに暮れるシトリスを放置し、さっさと屋敷に帰る。


 あいつがまだ元気なのは分かっているので、どうせグランシャリオから何か吹き込まれたのだろう。


 俺も暇ではないので、面倒はごめんだ。


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