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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第21話:精霊魔法の素質

 臨時収入を手に入れ、シトリスをからかいながら帰ってきた翌日。


 今回は遠出をしたということもあり、二日間休みを挟むとシトリスに伝えたが、俺は今日もギルドへと来ていた。


 勿論依頼や仕事をする気はなく、とある約束のためだ。


「どうも、今日は宜しく」

「良いけど、適性が無かったらその時点で終わりだからね」


 ギルドの中で待ち合わせをしたため他の目もあるが、俺の年齢が年齢のため、嫉妬の視線は全く無い。


 その代わり、ギルドの職員からクラリアへと冷たい視線が送られている。


「それは勿論分かってるさ。無いからって駄々を捏ねる程子供ではないよ」

「まだまだ子供でしょ。移動するからついてきて」


 見た目は子供だが、中身は良い大人である。


 なんなら異世界の記憶と今の分を合わせれば七十から八十年分の記憶がある。


 大人というよりは爺さんと言っても過言ではない。


 ギルドを出た後にやってきたのは、町の外れにある家だった。


 そこそこ大きいが、わざわざ家を買っているのか。


 いや、クラリアの身を考えれば家に住んでいるのは妥当か。


「この家は?」

「私の家よ。外で検査するのも考えたけど、こっちの方が人目には触れないわ」

「俺としては構わないけど、良い大人が真っ昼間から子供を家に連れ込むのってどうなの?」

「……」


 しばし固まったあと、シトリスは無言で玄関を開けて中へと入る。


 一応フードは被ったままだし、杖も持っているので変な誤解をされることはないだろう。


 されても俺には関係ないので問題ない。


 クラリアの後に続いて家の中に入ると、爽やかな匂いが鼻を通り抜ける。


「こっちの部屋よ」

「はい……この部屋は?」

「ちょっとした研究室よ。師匠から色々と言われててね」

「ハイエルフでも師匠って居るんだね。因みに誰なの?」

「秘密よ。私の事ならともかく、同胞の秘密は言えないわ」


 ハイエルフの師匠なんだから、師匠とはハイエルフなのだろう。


 それも姿を偽っている。


 俺が知っているのは賢者だけだが、賢者は今も表向きはただのエルフとされているらしい。


 またカマを掛けても良いが、俺の目的は精霊魔法だけなので、言われた通りこの話はここで止めておく。


「確か……あったあった。この紙の上に魔石を置いて……文字は大丈夫ね」


 テキパキと準備をしているが、俺が賢者にして貰ったのに比べると大掛かりだな。


 これが正規なのか、それとも賢者だから簡易的な方法を知っていたのか気になるな。


 いつか聞いて見るとしよう。


「よし、これで準備できたわ。その紙の上に乗って魔力を流してみて。適性があれば何か感じるはずよ」


 何かってなんだよと言いたいが、とりあえずやってみるか。


 紙には六芒星が描かれ、その頂点には魔石が置かれている。


 更に大量の古代語が書かれているが、なんて書いてあるかまでは分からない。


 時間を掛ければ解読できると思うが、その前に検査をしてしまおう。


 前回は駄目だったが、今回は多分いけるはずだ。


 年甲斐もなく高揚するが、紙の上に乗って魔力を流す。


 すると六芒星が光だす…………が、魔石は光らない。


 もしかして駄目だったかと諦めながら六つの魔石を確認していくと、一つだけ光っているのがあった。


「――一つだけとはいえ、まさか本当に適性があるなんて思わなかったわ。何か見えない?」

「青い粒のようなもの見ますね。これが精霊?」


 光った一つは青色であり、その周りにはふわふわと漂う青い粒が見える。


 色的に水属性かな?


 一瞬駄目だったかと思ったが、適性があるようで本当に良かった。


 あるのは分かったが、これでどうやって魔法を使えば良いのかさっぱり分からない。


「これで精霊魔法について教えて貰えるって事で良いのかな?」

「……貶す訳じゃないけど、まさか本当にあるなんて思わなかったわ。確率なんて数万分の一よ」


 世界の人口がどれ位居るか分からないけど、人間だけで数万分の一なら相当退低いと言えよう。


 クラリアとしても子供の我儘に付き合ってやる程度の気持ちだったのだろうが、良かった良かった。


「まあ運が良かったって事で。それで、この後はどうすれば?」

「まずは精霊に呼び掛けて応えてもらえるようにするのと、目のオンとオフを出来るようにする練習ね」

「具体的には?」

「とりあえず魔法陣から出てみなさい」


 言われた通りに紙の上から出ると、魔石は光っているものの、精霊が見えなくなったが、精霊が居た辺りに違和感を感じる。


 俺の力ではなく、補助があって見えるようになっていたのか……これじゃあ誰かに教えてもらわないと、適性があるかどうか分からないな。


 クラリアを見つける事が出来て本当に良かった。


「精霊が見えなくなったでしょ? でも、感じられはするでしょ?」

「不思議な感じだけど、感覚は確かに残っているね」

「その感覚を頼りながら目に魔力を籠めてみて」


 言われた通りに目に魔力を流すと、再び精霊が見えた。


 普通に魔力を流すのと少し違和感があるが、身体強化は俺の一番得意なものであり、直ぐに慣れてきた。


「その様子を見るに、もう安定しているみたいね。ちょっとこれを見て」


 そう言ってクラリアは手鏡を俺の顔へと向けてきた。


 鏡の中の俺の目は怪しげに光っていて、正直不気味だ。


 それからクラリアの方を見ると、同じくクラリアの目も光っていた。


 あまりにも激しい戦いだったせいでうろ覚えだが、そう言えば賢者の目も光っていた気がするな。


 常にではなかったが、精霊魔法が発動している時は大体光っていたはずだ。


「これは精霊眼って言われる状態なんだけど、その状態なら精霊を知覚する事が出来るわ。高位の精霊ならそうしなくても見るけど、漂っているのは見ての通りね」

「これって精霊魔法を使うなら必須なのかな?」

「使わなくても精霊魔法は使えるけど、使わないと精密に使えないわね。けど、上手く使えば高位の精霊の力を召喚しなくても使えたり、メリットがあるわ」


 刀身の長さが分からない剣で上手く相手を斬れないように、見えなければ上手く力を借りられないって事か。


 精霊魔法は使えないと分かった時点で調べるのを止めてしまったので、とりあえず今はクラリアの話を聞いて覚えるとしよう。


「なるほど」

「次は目を元に戻してみて」

「戻したよ」

「大丈夫そうね。次は精霊への呼びかけ方法よ。詳しくは後で本を渡すけど、基本は簡単だからすぐに覚えられるはずよ」

「因みに戦闘で使えるようになるには?」

「…………契約できるクラスの精霊を見つけないと、少し難しいわね。漂っている精霊だけだと、いくら魔力を渡しても限界があるの」


 契約か……精霊と言えば魔力が豊富な場所に居る印象があるし、一応クラリアが言った高位精霊には心当たりがある…………のだが、生憎水の精霊にはついては分からない。


 まあクラリアなら何とかしてくれるだろう。


「まあ契約については最低限慣れてからよ。手に水の属性魔力を集めて、精霊に来るように伝えてみて」

「伝えるって、どんな風に?」

「うーん。フィーリング? こんな感じで」


 クラリアが手を軽く振ると、周りに青い粒が集まりだした。


 これはあれか? 魔力に感情を乗せるって奴か?


 異世界の知識におかげで何とか察する事が出来たが、無かったら意味が分からなかった。


 やり方は分からないが、見様見真似でやるのは慣れている。


「こう、魔力に感情を乗せるのと、最初は声を出してみると良いと思うわ」

「出来れば最初にそれを言って欲しかったな」

「私が師匠に教わった時はそうだったのよ。ついでに、本当にそうとしか教えてくれなかったわ」

「物臭なのか、感覚派なのか分からないけど、大変な師匠だったみたいだね……」

「ええ、本当よ……あの時苦労したから、こうやって色々と研究してるけど、まさか最初に教えるのが人間になるとは思わなかったわ」


 ああ、これはクラリアの研究成果ってことか。


「もしかしてこの紙って?」

「適性をなるべく簡単に分かるようにして、尚且つ精霊眼を出来るだけ楽に覚えられるように作ったのよ。それはともかく、やってみて」


 呼びかけ……呼び掛けねぇ……。


 とりあえず頭の中にある奴を試してみるか。


 動作はクラリアと同じで良いとして……。


「水よ」


 集まれーって感じでやってみると、クラリア程ではないが、青い精霊が周りに集まった。


 ただ、これっで砂糖に群がる蟻みたいだな……。


「まさか一発で成功するなんてね……」

「見せてもらったし、魔力を扱うのは慣れているからね。この後は?」

「普通ここまでで数日使うんだけど……」

「出来ればで良いんだけど、水の高位精霊を見せてもらったりとかできる?」

「残念ながら私が契約しているのは火と風だけなのよ。一応水も位が低いのはいるけど、言葉をあまり理解出来ないから、呼んでもあまり意味はないわよ」

「どんなのか見たいだけなので、出来ればお願いします」


 少しだけクラリアは悩む素振りをしてから、急に指を鳴らした。


 すると周りに集まっていた精霊が渦を巻き、中から魚の形をした精霊が飛び出してきた。


 粒の様な精霊とは違い、確かに力強いものを感じる。


「この子が私が契約している子よ。私が一から育てているの」

「精霊って育てることが出来るの?」

「寿命があるハイエルフだから出来ることね。人間ならまだ探して契約した方が現実的よ。数百年必要になるし」


 それは確かに現実的ではないな。


 やはり精霊魔法は強力なだけあり、難しそうだ。


「とりあえず、基本の基本は大丈夫だし、精霊について纏めた本を渡すから、読んで練習してみて。分からなかったら聞いて良いから」

「分かりました。因みに本を書いたのは」

「勿論私よ。複製品だけど、失くさないようにね」

「……クラリアさんに出会えて本当に良かったよ」


 まさかここまで優秀だとは思わなかった。


 何故あんなカマ掛けに引っ掛かったのか分からない。


「そういうのは良いから約束は守りなよ」

「勿論さ。なんならこの分の恩をいつか返させて欲しいくらいだよ」


 賢者にあったら、クラリアの名前を出してみるとしよう。


 まだ不確定だが、多分賢者の弟子な気がする。


「それならいつか何か頼むとするわ。あと、精霊魔法は通常の魔法と違って感情に反応するから注意してね。詳しくは…………とりあえず本を読みなさい。椅子とテーブルは、そこのを使って良いわ。紙とペンはいる?」

「一応お願い。出来れば飲み物も」

「はいはい」 


 辞書のように厚い本を数冊持って椅子に座る。


 頑張って読むとしよう。


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