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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第20話:掘り出し物のお買い物

「やあ、お待たせ」

「遅い!」


 待ち合わせのギルドについて早々、シトリスに怒られてしまった。


 ギルドから二十分位行った所にある宿屋に泊まれ、朝も六時半に起きたのでかなり余裕があったのだが、現在の時間は八時半であり、三十分の遅刻となる。


「ごめんごめん。昨日話が長引いてね。あまり寝られなかったんだ」

「……私のせいでごめんなさい」

「起きたものは仕方ないさ。それより、今日の予定を話そう」


 勿論話が長引いたなんてのは嘘であり、遅れた理由はモーニングコーヒーを楽しんでいたからである。


 家ではいつも紅茶を飲んでいるが、紅茶とコーヒーならコーヒーの方が好きだ。


 夜営や戦争時、酒を飲んで酔うのは危険なので、その代わりに飲んでいたのがコーヒーだ。


 戦争時に味方からの勧めで飲み始めたのだが、これが中々良かった。


 色々と効能があるのだとかうんちくを語られ、最初は胡散臭いと思っていたのだが、語るだけあり味は素晴らしく、本当に効果があったのだ。


 酒と同じく飲みすぎには注意が必要なのだが、コーヒーを飲むのは俺の趣味と一つと言える。


 なので久々に味わっていたら思いの外時間が経ってしまっていたのだ。


 ギルド前に集合したが、ギルドには入らずに近くの喫茶店に入る。


「今日の予定だけど、買い物を済ませたら歩いて帰る流れだね。行きは運が良く馬車に乗れたけど、昨日の時点で帰りに使えそうな依頼は無かったからね」

「……私、馬車に乗ってないんだけど?」


 そう言えばずっと走らせてたな。そりゃあ疲れも溜まるってものか。


「細かいことは気にしない気にしない。体力はあって困るものじゃないし、身体が出来上がらないと俺の剣を教えることは出来ないからね」

「……」

「それと昨日の件だけと、これが依頼分のシトリスの取り分で、こっちが賠償金ね」


 いつも通りの四割を渡し、金貨を一枚上乗せする。


 そう言えば勇者も今は貴族であり、その娘であるシトリスも一応貴族なのだが、庶民的な生活に慣れている様に見える。


 小娘一人が急に外で生活するなんて無謀極まりないが、グランシャリオがお節介をしているのだろう。


 昨日のシトリスとの会話を見るに、かなりの助言をしていそうだ。


 実際に会話をしたわけじゃないので分からないが、あまりにも人間臭い剣な感じがする。


 元々その様な性格だったのか、はたまた俺が長く使っていたせいで変わってしまったのか……。


 折角だからと勇者に渡したが、剣聖の方が良かったかもしれないな。


 あいつは堅い奴だが、堅い分自分の子供だろうと甘い面を見せる事は無い。


 娘に俺の剣を盗まれた勇者とは違ってな。


 …………勇者とは会いたくないと思っていたが、沸々とあいつに対する怒りが湧いてきたな。


 強い奴と戦うのは面倒だが、恨みもあるし、一度叩きのめしてやろうか?


「……ヴィンは何枚?」

「三枚貰ったよ。巻き込まれて更に倒す事になったから、迷惑料って奴だね。因みに相場がどれ位か知っている?」

「知らない」

「相手の脅威度にもよるけど、一人当たり銀貨五十枚くらいだね。手配されていたりすれば変わるけど、どうせまた狙われそうだし、覚えておいてね」

「……ごめんなさい。けど、なんで相場よりも高いの?」


 おい、さてはこいつ俺の事を知らないみたいだな。


 一応本名を全て名乗っているので、うちの領地に住んでいれば一度くらいは名前を聞くもんだと思うのだが……。


 もしかしてこいつ、ほとんど人と会話をしていないのか?


 あの冒険者との話し方と比べ、いつもの話し方や、俺と初めて会った時の話し方には差がある。


 とりあえず帰りにでも確認してみるとしよう。


「男爵とはいえ俺が貴族だからね。後は領地が隣り合っているから、ギルドの過失で問題を起したくなかったから、お金で黙っていてねって事さ。まあ、提案したのは俺だけどね。それに、俺ってあのダンジョン以外はまだ許可されていないから、知られたら困るんだ」

「つまり、お互いの為にお金でもみ消したって事?」

「そんな感じだね。世の中金で解決できることなら、金で解決した方がお互い楽だから、覚えておいて損は無いよ」


 なんて話すものの金で解決できない事の方が多かったりするのだが、命のやり取りもやり過ぎれば昔の俺の様な結果が待っている。


 冒険者と言えば金だが、傭兵はどちらかと言えば面子を大事にする。


 金も大事であるが、傭兵は対人能力が結構要求され、どうしても格が必要となる。


 依頼主が裏切るなんてのはよくある事であり、その始末を着けられない傭兵は半人前とされている。


 相手次第では狸寝入りしなければならない事もあるが、その時は相手の悪評をばら撒けるだけばら撒くなんて方法もある。


 因みに俺はこの方法で子爵領を一つ滅ぼしている。


 俺自身はそこまでいくとは思っていなかったのだが、所謂悪徳領主だったせいかそのままクーデターへと移行し、おまけに敵国がそのクーデターを助け、とんとん拍子で滅びてしまった。


 そのまま他国の領地になり、そのまま圧政を敷かれる事なんてなかったせいか、領民も適応してしまった。


 それが起点だったのかは分からないが、その子爵が居た国は滅びてもう無くなっている。


「……お金で許せない時は?」

「昨日と同じ結果で終わりさ。馬鹿は死んでも治らないってね」

「それは……そうだね」

「何事もメリハリが大事さ。それじゃあ買い物に行こうか。荷物持ちは宜しくね」

「普通逆じゃないの?」


 男女の仲ではないし、シトリスに嫌われたところでそんなに構わないので、俺は楽な方を選ぶ。


「弟子は師の言う事を聞くもんさ。筋トレにもなるし、別に嫌なら先に帰っても良いけど?」

「……昔と変わったんだね」

「昔は昔。今は今さ。それと、剣や戦い方については構わないけど、あまり俺の過去やプライベートについては聞くなよ」

「善処するわ」

「…………………………まあ良いとしよう。それじゃあ行くよ」


 シトリスの目的が分かり、こいつは間違いなく俺から離れない。


 ならば最初の予定通り扱き使ってやれば良い。


 これまでは一応一年で捨てる予定だったので、多少手加減していたが、そんな物は捨て、一々勇者の事を考えるのは一旦止めることにした。


 楽な生活の前に、少苦労するのは分かっていたし、最悪は勇者にシトリスをぶつければ良い。


 言い方は悪いがシトリスを俺色に染め上げてしまえば良い。


 殺しの現場を見ても全く動揺していなかったのと、最低限どうにかなる戦いの素養を持っている。


 問題は無いだろうが、とりあえず来年までには童貞……は男だから、処女を卒業してもらわないとな。






1






 まずはメインとなる宝石の原石を買うために、露天通りへとやってきた。


 文字通り玉石混交のため、運が悪ければ石ころを宝石の値段で買うなんて事もあり得る。


 逆に宝石を石ころの値段で買える可能性もあるが、何はともあれ店を選ばない事には始まらない。


 何故か若干シトリスが気合をしているが、荷物持ち以外については期待していないので、大人しくしていて欲しい。


 良さそうな物を売っている露店を見付け、足を止める。


「これとこれ、それからこれでいくらになる?」

「銀貨七枚だよ」

「うーん。追加であれを二つ買うから、少し安くしてくれない?」

「ほぉ、若いのに中々良い目を持っているようだな。これとこっちなら、お前さんはどっちを買う?」

「左だね。傷は多いけど、これって天然物じゃない? ダンジョン産と違って魔力の通りが良い」

「正解だ。本職でも早々見抜けないんだが、良く分かったな」

「親に仕込まれてね。いくら?」

「それを入れて銀貨十二枚だが、七枚で良いぜ」

「どうも」


 適当に目についた所だったが、掘り出し物を買うことが出来た。


 それに、必要最低限の量が揃った。


 後は練習用の、質の悪いのを買えば大丈夫だな。


「ヴィンってなんでも出来るんだね」

「それなりに経験を積んでいるからね。経験だけは自分を裏切らないから、積んどいて損は無いよ」


 どれだけ仲が良かったとしても、他人である以上は誰でも裏切る可能性があり、例外なんてほとんどない。


 裏切りたくなかったとしても、洗脳や利害のせいでどうしようも無い事がある。


 なので、最終的に信じられるのは自分だけなので、やれる事はやれるようになっておいた方が良い。


 そんな訳でばら売りをしている露店の石をあさり、適当なのを銀貨一枚分買い込んで全部シトリスへ渡す。


 その後に鉄を加工するのに必要な物と、髪飾りなどを作るのに使うピンセットを始め、最低限の器具を買い込む。


 出来れば製鉄は専門の設備が欲しい所だが、知識はあるので多分何とかなる。


 駄目なら頭を下げて鍛冶屋にお願いしよう。


「こんな所かな。それを持って走れそう?」

「これ位なら大丈夫だけど、魔物が出たら反応できないよ?」

「それ位は俺の方で対処するよ。下手に動いて壊されても困るからね。それじゃあ帰ろうか」


 賠償金のおかげで揃えたい物は全てそろえる事が出来た。


 ついでに森の訓練場に小屋を作るために必要な工具や釘なども買えたので、これで家の外で作業が出来る。


 頑張って作るとしよう。


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