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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第19話:大人の話し合い

 大きく馬車が揺れたタイミングで目が覚める。


 直ぐに外を見ると、どうやら街まで帰って来たみたいだ。


 ギルドの近くには酒場も多いため、結構遅い時間だがまだまだ騒がしい。


 隣のシトリスは今も夢の中みたいなので、顔面に魔法で作った水をぶつけて起こしてやる。


「えほ! ごほ! な、なに!」

「街に着いたよ。俺はこのままギルドに行くから、適当な宿で寝てて。明日の朝八時にギルドで集合ね」

「………………はい」


 悩みに悩みまくった結果、ちゃんと言う事を聞いてくれたみたいだな。


 ここからは大人の時間……っていうには身体が幼いが、精神的には大人なので問題ない。


 深夜の町を女一人で歩かせるのは常識的に駄目かもしれないが、グランシャリオがあるし大丈夫だろう。


 昼とは違い静かなギルドへと入り、依頼の料金を受け取る。


 こんな時間に子供が来ても、普通に対応してくれるのでありがたい。


 ……いや、俺はギルドカードを本名で登録しているので、貴族と分かっていて何も言わないだけだろうな。


 流石に隣町の貴族の名前くらいはしっていてもおかしくない。


 俺も最低限覚えているし。


「すみません。少し内密の話があるのですが」

「どの様な用件ですか?」

「此方の方について少々」


 死体から抜き取ったギルドカードの内の一枚をなるべく周りから見られないようにして受付に見せる。


 ここで大事なのは見せ方だ。


 普通に見せては拾っただけと思われる可能性があり、先に理由を話さなければならなくなる。


 静かとは言えギルドには俺以外に冒険者が居るので、なるべく何があったかについては知られたくない。


「――直ぐに部屋を用意しますので、しばらくお待ちください」

「理解していただきありがとうございます」

「少々お待ち下さい」


 真面目度を上げるために早々使わない敬語を使って話す。


 これでも貴族の子息なので、処世術は完璧といって過言ではない。


 まあ面倒なので、家に迷惑が掛かる案件以外で真面目にする事はないけど。


 受付でいなくなった受付を待っていると直ぐに戻って来て、建物の奥にある部屋へと案内される。


 これはあれだな。ギルドマスターかサブマスター辺りの部屋に通されるパターンだな。


 男爵とは言え貴族であるし、妥当と言えば妥当か。


「此方の部屋になります。中にはギルドマスターが居ますので、話はそちらにお願いします」

「分かりました」


 受付を見送り、扉を叩くと中から男の声がした。


 もう日付が変わるというのに、大変だな。


「初めまして。今回は時間を取って頂きありがとうございます」

「子供が気にするな。俺はここのギルドマスターのクラタだ。話は座ってから聞こう」


 見た目はスキンヘッドでかなりの強面だが、中々話の分かりそうな人だな。


 筋肉の付き方からしてもかなり強そうだ。


 だが、クラタ……倉田……異世界の知識のせいで変な考えが浮かんでしまう。


 知識の中に居る倉田はヨボヨボの爺さんであり、目の前の筋骨隆々のスキンヘッドではない。


 言われた通りに置かれているソファーに座ると、クラタは果汁ジュースを俺の所に置きながら座る。


「ジュースで良かったかな?」

「ありがとうございます」

「気にするな。それで、話とはなんだ?」

「はい。始まりは……」


 ギルド内で起きた事から、ダンジョン内での会話までなるべく簡潔に話す。


 殺し方だけ瞬殺ではなく、二人で協力して死闘の末に倒したことにしておく。


 怪我については高いポーションを使ったことにし、前衛をしていたシトリスは疲れはてたので先に休ませたことにした。


 汚れについては俺の魔法で落としたと説明出来るので、真相については知る術がない。


 更に言えば、俺の言葉が疑われることはまずない。


 俺が貴族なのもあるが、あいつらの言動から初犯ではないのは確かだ。


 まともなギルドであるならば、尻尾くらいは掴んでいておかしくない。


 俺が話している間、クラタは口を挟むことなく真剣に話を聞いている。


 そして話が終わると深々と頭を下げた。


「事件に巻き込んですまなかった。ダンジョンで起きている事は掴んでいたが、冒険者の人数が人数のため、特定までまだ出来ていなかったんだ。この件は領主様を通して正式に謝罪をしよう」

「いえ、そこまでしていただかなくて大丈夫です。出来れば実家には知られたくないので」

「……それは何故だ?」


 心配させるし、他領まで勝手に行っていること知られれば、間違いなく怒られる。


 なので、内々に納める気でいる。


 謝罪や体面よりも金だ。


「親には内緒でダンジョンに来ているので、知られると怒られてしまうからです。それに、ギルドとしても領主間の問題にするよりも、ギルド内の事件として扱いたいのではないですか?」

「……その歳で人を殺したというのに、随分な余裕があるみたいだな。流石あの人の息子と言ったところか」

「父上をご存知で?」

「王都に居た者でヴィンセントを知らない人間はほとんどいないだろう。元気に過ごしているか?」

「仕事をサボっては酒場でお酒を飲んでいますね。一応最低限の仕事をしてはいますが、よく母上を困らせています」

「そ、そうか……」


 クラタの様子から昔の父上は尊敬に値する人だったのだろうが、今の父上は控えめに言って駄目な男である。


 仕事もちゃんとしているし、元騎士なだけあってかなり強いが、貴族としては落第点だろう。


 親として見ればかなりの当りだが…………あれだな、子は親に似るってやつだな。


 やる時はやる父上だが、平時はまるでダメな大人。略してマダオだ。


 別に嫌いではないが、それはそれ。これはこれである。


「しかし、その歳でよく四人を相手に出来たものだ……」

「相方が優秀でしたので。まあ、狙われたのはその相方のせいなのですが」

「ただ巻き込まれただけだと?」

「見逃してくれと聞きましたが、目撃者は殺すと。あまり殺しはしたくないのですが、狙われた以上仕方なかったのです」


 縛ってダンジョンに放置するくらいに留めようとは思っていたが、タイミングが悪かったのだ。


 まあどちらにしろ事が事だけに、死罪か無期懲役のどちらかだろうし、サクッと死ねて良かっただろう。


「そうか……。今回の件だが、襲われた冒険者が返り討ちにしたとして処理することになるだろう。無論被害者である君たちの事は書かないし、報告はしないでおく」

「ありがとうございます」

「賠償金についてだが、金貨四十枚で良いだろうか?」


 金貨四十枚か…………あまりにも多すぎるな。


 過去に似たような事例があったが、その時は銀貨十枚だけだった。


 しかも相手は十人だったので、一人頭銀貨一枚の賠償金だ。


 確かに今回の件は貴族絡みとなるので、領主間の問題に発展すれば金貨四十枚では済まない事になるだろう。


 だが、たかが低級冒険者の殺人事件と見れば割りとありふれたものであり、そもそもギルドマスターが出る程の事件ではない。


「それはあまりにも多すぎませんか? 確かに俺の身分を考えれば驚くほどではないですが、ただの冒険者として考えて頂けるとありがたいです」

「年齢の割りにしっかりとしているな……分かった。だが、こちらも払うものを洗わなければ安心出来ん。金貨四枚でどうだ?」

「それ位でしたらお受けします」


 確かに楽して金を稼ぎたいが、あぶく銭はあまり良い物ではない。


 それに、賠償金を受け取り過ぎれば相手に悪い印象を与える事に繋がる。


 ぶっちゃけ金貨四枚でも高いが、まあ妥協点だろう。


 三枚は俺で、一枚はシトリスに渡すとしよう。


 状況的に俺が四枚とも貰っても良いと思うが、口止め料の意味と、多少は余裕を持たせておいた方が良いと思っての判断だ。


 シトリスが下手に動くと俺に面倒が降りかかる可能性があるので、なるべく大人しくしていて欲しい。


 クラタが差し出してきた金貨を受け取り、四枚のギルドカードを代わりに渡す。

 

「これで今回の件は終わりだ。何か話しておくことはあるか?」

「大丈夫です。それではこれで失礼します」


 ジュースを全て飲み干し、軽く頭を下げてから部屋を出る。


 スムーズに話が進んで本当に良かった。


 これで相手が子供だと侮ってきたり、俺を殺人による罪でいちゃもんをつけてきたら、クラタが危惧していた様に領地間の問題となっていた。


 ここの領主とは領地が隣なだけあって顔見知りであり、ほぼ間違いなく俺の味方になってくれるだろうが、その場合は父上達が出てくるという事で、ロックシューターに来ている事がバレて怒られる事になる。


 朝までとはいかないが、深夜まで拘束されると思っていたが一時間ほどで終わった。


 俺も適当な宿屋に泊まって休むとしよう。


 田舎町ならともかく、これ位の大きさの街では深夜でもやっている宿屋がある、


 深夜なので割増し料金を取られるが、道や屋根の上で寝るよりはマシであり、割増しと言ってもそこまで高いものではない。


 明日の予定は、買い物を済ませて帰るだけだが、シトリスが居ると要らぬ騒動に巻き込まれる可能性が高い。


 かと言って放置も出来ないので、仕方ないが一緒に買い物をするしかない。


 今から少し憂鬱だが、シトリスがグランシャリオを持っていたのが運の尽きだったな……。


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