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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第15話:ダンジョンロックシューター

「賑わってるねー……」

「あっちと違って魔石以外も出るし、Dランク以上でもうま味のあるダンジョンだからね。それよりさっさと四層まで走って行こう」

「はーい」


 道中というか、ギルドの前にあった屋台で買ったサンドイッチをロックシューターへと向かう馬車の中で食べた。


 当たり前だが馬車の中はむさ苦しい男ばかりであり、シトリスへの視線は勿論だが、俺にも変な視線が飛んできていた。


 残念なことに俺の身長はシトリスより低く、ローブを着ているのとまだまだ中性的なため、初見で俺を男と見破るのは難しい。


 顔もなるべく隠しているし。


 まあ馬車の中のことは忘れ、予定通りダンジョンの中を走り抜ける。


 因みに湧いてくる魔物は無視である。


 俺達が倒さなくても、冒険者はいくらでも居るので問題ない。


 過去に意図的に魔物を大量に出現させ、他の冒険者へと擦り付けるなんて事件もあったりするが、弱い奴から死ぬのが冒険者だ。


 擦り付ける側が悪いのは当たり前だが、死ぬ方も悪いのだ。


 それが戦いを選んだものの道理。ルールって奴だ。


 一階層と二階層では結構な数の冒険者とすれ違ったが、三層の中間辺りで一気に少なくなり、四層まで来ると更に少なくなった。


 一から四層目まで出てくる魔物は変わらないが、五層目から強い魔物が表れる可能性や、戦う時の魔物の種類が増えたりするので、四層目は人気がない。


 これでドロップ品やお宝の価値が上がるならばともかく、五層目のボス以降のフロアまで行かなければ、変わる事が無いとギルドの受付が話していた。


 更に言えば四層で普通に戦えるパーティーならば、五層目のボスも倒せない事も無いので、四層は一種の穴場である。


 正直俺一人でも五層目のボスを倒せるが、疲れるのと素材の質が良すぎては問題があるので、所謂低級素材の方が好ましいのだ。


「よっと。さて、ここからは目についた魔物は片っ端から倒していこうか。前衛は頼んだよ」

「分かったけど……このまま?」

「時間は有限だからね。ほら、さっさと歩く」

「うー……」


 四層まで罹った時間は一時間だが、今回は護衛の時とは違いダッシュである。


 俺は余裕だが、シトリスは若干だが息を荒くしている。


 しかし時間が時間だし、おそらく例の冒険者が追っ手きている場合、時間は三時間位しか残されていない。


 まあかなりの速度が走ったため、俺達を見失っている可能性もあるが、ああいう輩は何かしら裏の手を持っているものだ。


 それとシトリスの髪の色は目立つので、ダンジョン内で聞き込みとかすれば普通に分かるだろう。


 なのでシトリスの尻を蹴飛ばし、さっさと歩かせる。


 俺達の基本的な戦い方は、シトリスがヘイトを集め、シトリスが戦い、シトリスが不利にならない程度の援護を俺がする。


 これでもこの一ヶ月間シトリスに魔物による攻撃で怪我を負わせていないので、シトリスはヒーヒー言いながらも頑張って戦ってくれている。


 前衛の才能は勿論だが、俺には後衛の才能もあったようだ。


 まあ弱い魔物は顔面に水をぶつければ怯むし、水の魔法ならばシトリスに誤射したとしても、俺の動体視力なら当たる前に解くことが出来る。


 あくまでも殺傷能力を無くすのが間に合うだけなので、シトリスはびしょ濡れになってしまうが、怪我をするよりはマシだろう。


 濡れただけならば乾かせばどうとでもなるし。


 一応低級ではあるがポーションを数個持って来ているので多少の怪我ならば問題ないが、怪我一個致命傷の元とも言う。


 怪我はしないに越したことはない。


 ……ポーションの作り方を学ぶのもありかもしれないが、回復魔法を使える手下がやはり欲しいな。


 おっと。


「そいや」


 天井から五匹のロックバットがシトリスへ奇襲を仕掛けたので、全てウォーターランスで貫いておく。


 いつものダンジョンでは上空からの攻撃なんてないから、上空への注意力が落ちているな。


 戦いにおいて相手の攻撃は四方八方。空からも地中からもくるので、全てに注意しなければならないのだが、まだまだだな。


「上も気を付けろよー」

「無理よ!」

「無理でもやるのが戦いだ。本当なら後ろも気にしないとなんだからな」


 四層は初心者の冒険者には普通に無理ゲーってやつだが、ナナホシを持っているシトリスならまず問題ない。


 一撃で倒せるならば、確実に魔物を減らせるからな。


 魔物を倒しながらダンジョン内を歩き回るが、冒険者と出会うことはなく、ついでに宝箱も見つからない。


 ついでにドロップもしょっぱいので、不人気な理由が分かるってものだ。


 目標の三分の二位を集めた所で、四層の中間にあるセーフティーゾーンまでやってこられた。


 体感の時間では、外は丁度夜になった位だろう。


「いったん休憩にしようか。休んだらこのまま四層の入り口まで同じ感じで戻ろう」

「はーい」

「あと、これが水と食事ね」


 床へと座ったシトリスに水とギルドで買った干し肉サンドを渡しておく。


 帰りは行き程急がないが、今の内に食べといた方が良い。


 念のため四層の入り口に仕掛けておいた罠に、人が通り過ぎる反応があった。


 壁の中に水を染み込ませ温度を感知するだけの罠だが、感知した数は四人。


 ほぼ間違いなくギルドでシトリスにちょっかいを掛けて来た奴らだろう。


 ここまで来る執念には恐れ入るが、高々一人の女に執着する位ならば娼館とかで発散した方が有意義だと思うのだがな……。


「帰りは行きよりも周りに注意を払うようにね」

「分かったけど、なんで?」

「帰りはどうしても気が抜けてしまうから、意識して注意をしておいた方がミスが起こらないだけさ。また頭の上に魔石を落とされたくないだろう?」

「それはそうだけどー……はぁ」


 上からの攻撃に気付く事も数回出来ていたが、俺が倒して魔石が頭に直撃した回数の方が多い。


 たんこぶが出来る程大きくはないが、頭部に防具を装備していないので、当たれば地味に痛いと思う。


「ふぅ……本当にいつもとドロップ品が違うね。素材を放置して良かったの?」

「出来れば持って帰りたいけど、そうすると目的の鉱石が持てなくなるからね。まあ放置しておけばダンジョンが吸収してくれるし、帰りの邪魔にはならないさ」


 何故だか知らないが、ダンジョン内に物を放置しておくと、いつの間にかダンジョンが吸収してしまう。


 物によって時間はマチマチだが、ダンジョン内で寝ていて吸収されたという報告はないらしいので、生きている人が吸収される事は無いとされている。


 そこら辺の詳しい仕様は分からないが、倒した魔物のドロップ品を全て拾う必要は無いのだ。


 休憩ついでに一度戦利品を袋から取り出し、軽く鑑定しながら仕分けする。


 低級のダンジョンのため、本物の鉱山から産出する鉱石よりも純度が低く、精製する場合かなり少量になってしまう。


 なので、低い中でも更に低い奴はこの場に捨ててしまう。


 ただ、鉄や銀といった鉱石はあるが、宝石の原石となるのはほとんど無いみたいだ。


 出来れば買いたくはないが、こればかりは仕方ないかもな……。


 磨かれたものではなく、原石で買えばかなり安くなるだろうしそっちの方向にしておくか。


 帰りに宝箱が見つかったりすれば良いが、そんなことはまずないだろうしなぁ……。


「集まりはどう?」

「土台となる部分は問題ないけど、宝石の原石はやっぱり壊滅的だね。分かっていた事だけど、ままならないものだね」

「もっと奥には行かないの?」

「確かに奥に行けばもっと良いのが手に入るけど、説明した通りあまり良い素材を使うと、問題が起こる可能性が高まるからね」


 情報がどこから漏れるか分からないので、出来る限り周りには弱いと思わせておいた方が良い。


 それと、そもそも俺は領地内のダンジョンに行く許可は貰っているものの、このダンジョンに来る許可は貰っていない。


 低品質の物ならば頑張って磨いたとか言い訳が出来るが、元の素材の言い訳は出来ない。


 あのダンジョンで良い物を買える程度の金を稼ぐのは時間が掛かるからな。


 やれるからとやらなければならない道理はなく、強いからと強さを見せる必要は無い。


 適度が一番なのだ。


「それにシトリスのこの様子だと、奥は厳しそうだしねー」

「ヴィンがしっかりと援護してくれれば行けるもん」

「俺の助けが必要なら駄目だね。一人でもなんとかなる場所じゃないと、何かあった際に対応出来ないからね。それより、そろそろ帰ろうか」


 仕方なくパーティーを組んでいるが、組む以上はなるべく楽をしたい。


 シトリスが一人で対応出来ない場所に行けばその分俺が疲れるので、その点でも奥に行く気は無い。


 いくら武器が良くても、使い手であるシトリスはまだまだだからな。

  

 

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