第16話 好きなんでしょ?
金曜日の朝。あたしは考えていた。
んー。九人、ねえ……誰かいるかなぁ。
バランスを考えれば、全学年三人ずつが理想ではあるんだけど……
だいたい、瑠奈も瑠奈だよ。のんびりし過ぎだもん。まあそこがいいとこでもあるんだけどさ……
そんなことを考えながら、船に乗っていると(通学手段が船なのだ)、同じ制服を着た女子が二人、座っているあたし目の前を通り過ぎ、近くの席に座った。あれ…うちの学校、あたし以外にも船通学いるんだっけ?
ていうかあの子達、どっかで見たことあるような…あ!
小学校と中学校と一緒だった、真奈ちゃんと悠里ちゃんだ!最近会ってないから気付かなかったなぁ…家は割と近いんだけどね。
「真奈ちゃんと悠里ちゃんだよね?おはよう」
あたしが声をかけると、小さな声で話していた二人はばっとこっちを向いた。
「颯姫ちゃん!」
「颯姫さん!」
うん、やっぱり真奈ちゃんと悠里ちゃんだ。これで別人だったらあたしいきなり声掛けてきた変人じゃん、ほんとよかった。
あたしが密かに胸をなでおろしていると、真奈ちゃんがこっちを見て言った。
「隣、座る?一緒に行こ!」
そのお言葉に甘えて隣に座ると、ちょうど船が港を出航した。
「いやー、久しぶりだね。まさか二人が空ヶ丘に来るとは思わなかったよ〜」
あたしが言うと、二人はそれぞれ答えた。
「一番近いの、空ヶ丘だからね…島には高校はないもん」
「悠里は、女子校が良かったから…これでいきなり共学になっちゃったら、悠里学校嫌いになりそう…」
ま、確かに島から一番近い高校っつったら空ヶ丘だわ、うん。
「なるほどね…どう、友達できた?」
さらにあたしが聞くと、悠里ちゃんは、
「まだ三日ですもん、無理ですよ…」
と答えたのに対し、
「まあ…」
と真奈ちゃんは答えた。
「早いね〜」
なんてのんびり言ってたら、真奈ちゃんが「ん?」と言った。
「そういえば颯姫ちゃん、さっき私たちが空ヶ丘に入ったこと知らないような口ぶりだったけど、私、入学式で新入生代表挨拶したんだけど。それに、呼名で悠里の名前も呼ばれたはずだけど」
え…まじ!?頭いいじゃん!!初めて知ったよ、あたし入学式寝てたし…
「そうだったんだ、凄いね!あたし、入学式寝てたからなんもわかんないや!」
と答えると、真奈ちゃんは「まあそんなことだろうとは思ったけどね…」と言った。なんかごめん……
て、談笑に来たんじゃないよ!あたしは二人をアイドルに誘おうと思ってきたんだって!今確定してんの瑠奈とあたし、実莉、花蓮、チセだから、二人くらい誘っても大丈夫でしょ。
「あのさ!唐突なんだけど、二人とも、高校生アイドルに興味無い!?」
あたしがいきなり言うと、真奈ちゃんは訝しげな顔のまま、悠里ちゃんは驚いた顔で「えっ!?」と言った。
「あたしさ、幼なじみに誘われてハイドラにエントリーするんだよね。で、その幼なじみはメンバーを九人集めたいらしくて、声かけてみたんだ。二人ともめっちゃ可愛いし、向いてると思うんだけど」
あたしの言葉に、悠里ちゃんをつんつん、とつついて真奈ちゃんは言った。
「やってみなよ、悠里。あんた高校生アイドル好きでしょ?」
その言葉に「ひえっ」と声を上げる悠里ちゃん。
「悠里は無理だよ…人見知りだし、なんの取り柄もないし…」
「でも、やりたいんでしょ?好きなんでしょ?」
「好きだけど…でも…」
「だったらやってみなよ。悠里がやるんだったらあたしもやるからさ」
「それなら……なら、やってみたい、かも…だけど」
躊躇する悠里ちゃんに、悠里ちゃんの背中を押す真奈ちゃん。そして、まだ揺らいでいる悠里ちゃんの頭をポンと叩き、真奈ちゃんは言った。
「颯姫ちゃん、私たち、やるよ。颯姫ちゃんと一緒に、ハイドラに出る!」




