第13話 流されて
はぁ……全く、なんでこんなことになったんだろう…
野沢瑠奈先輩に手を引かれながら、私…菊池チセは密かにため息をついた。
私の「興味」は先輩たちが思ってる興味とは違うのに。先輩たちが思ってる興味は、アイドルをやりたいという意味での興味。私が思ってるのは、その情報がどれくらい生徒に広まりやすいか、とかの、いわゆる「噂」としてのレベルがどれくらいなのか、という興味。
まあ、そもそも有名人の野沢先輩が考えたことだもん、結構簡単には広まるだろうけど……じゃなくて。
今はそんなことより、この状況を整理しなきゃ。
流されて入部するってなっちゃったものの、私、アイドルなんて出来ないよ…!人前に出ることが嫌いだし、野沢先輩は可愛いとか言ってくれたけど、全然そんなことないし!寧ろカビが生えてそうな感じじゃないの!?
まあカビはともかく、ダンスも歌も未経験、アイドルっぽいオーラもないし。ていうかそもそも、全国の高校生アイドルはどうやって、あんなにアイドルっぽくなったの!?同じ年齢のはずなのに、遠く感じるよ…
なんて、私言うほど高校生アイドルには詳しくないけどね。皆の話題についていけるように、有名どころをサラッと流すくらい。クラスの中には男子部門出場者にお熱の子とか、性別不問部門のなんとかっていうグループが超いいの!って言ってることかはいるけど、私はそこまで。都市伝説とか学校に流れている噂とかの方が面白いし、ね。
そんなことを考えているうちに、三年生の教室の前に来た。すると、野沢先輩はいきなりドアを開き、「ただいまー!」と叫ぶ。
え、誰かいるの…なんて思っていたら。教室の中から、「……おかえり。遅い!」という声がした。
野沢先輩に手を引かれながら、教室の中へ入っていくと、椅子に座って頬をふくらませる、長い髪の先輩がいた。確か、雨宮先輩…だった気がする。
「はあ、はあ…瑠奈、置いていかないでよ…」
「そうですよ…瑠奈ちゃん、置いていかないで!」
後ろからさっきの二人が息を切らしながら喋っている。すると、雨宮先輩はボブヘアの…三年生の方をジトーっとした目で見ながら言う。
「実莉の馬鹿、ずっと待ってたんだよ?瑠奈は瑠奈で提出物忘れてた!とか言って出ていくし…花蓮はともかく」
随分拗ねた様子の雨宮先輩。そんな先輩をさっきのボブヘアの先輩が宥めるように言う。
「ごめんね。今度クッキー作ってあげるから許して?」
先輩はまだ拗ねながら「チョコチップ入りなら許す……」と言っている。なんか、うん……なんでもない。
「そうだ颯姫、新メンバーだよ!えっとねー……あれ?名前何?」
と野沢先輩。まあ名乗ってないし、知らなくて当たり前か。
「二年の菊池チセです。なんか流されてはいることになりました」
そう言って頭を下げる。すると、野沢先輩、雨宮先輩、ボブヘアの先輩、一年の子がそれぞれ自己紹介をしてくれた。
「私は野沢瑠奈!アイドル部の発案者です!よろしくね!アイドルにオススメの子とか居たら教えてね〜!」
「あたしは雨宮颯姫。瑠奈に誘われて入ったよ」
「私は吹雪実莉です。……さっきはごめんなさい」
「一年の橘花蓮です。入ったばかりです」
「こちらこそすみませんでした。よろしくお願いします」
私がそう言うと、「じゃあ早速、話し合いだよー!」と言いながら、机を班の形にする野沢先輩。私はそれを手伝いながら、別のことを考えていた。
やっぱり雨宮先輩で良かったんだ。ボブヘアの先輩は吹雪先輩…て、吹雪先輩って確か、試験成績トップスリーの常連だったよね。で、橘花蓮ちゃんと言えば、中学生読モをやってた子じゃない?
それにしても、アイドルが似合う子、か……可愛い子とか?あ、それなら……
私の脳裏に一人の少女の姿が浮かび上がった。




