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Galaxy War Online  作者: Chilly
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第二一話 ~ リザルト ~

 モニターに爆発を繰り返す試作型四足重戦車を背景に、今回の潜入クエストについてのリザルト画面が映し出される。

 命中率や撃破数などの個人成績やチーム成績に、達成した小目標に報酬その他が表示されるリザルト画面を軽く斜め読みしてみれば、やはり撃墜されたことでクエストクリアの報酬金が、本来支給される金額から撃墜された数だけペナルティとして減額されていた。

 NPCクエストでは撃墜された場合に報酬金だけでなくデスペナルティとして、高レベルになればなるほど高い割合で、レベルが上がるために必要な経験値の一から五パーセントの経験値が、撃墜されたその場で減少する。

 それがそのレベルになるための総経験値を割り込めば、その場でレベルダウンすることもあり、極力撃墜されることが無いようにプレイするのが普通ではある。

 そして基本的に報酬金として支払われるお金が、プレイヤー間の取引でしか発生しないPvPの場合は、ゲームシステム側からの報酬が無いのだから撃墜されたからといって減ることはない。

 さらにNPCクエストと違い、撃墜されれば戦艦だろうとトルーパーだろうと即座に復活するわけでは無く、一定時間の待機時間の後タウンにて復活するPvPでは、デスペナルティの経験値減少もない。

 このようにPvPでは報酬が減るわけでもなく、経験値が減るというデスペナルティは無いが、システム側からの報酬があるわけでもなく、撃墜されればトルーパーや戦艦などの装備を全て完全に失うわけであるから、これがPvPでのデスペナルティと言えるかも知れない。

 そんなプラスに比べてマイナスの比重が大きく見えるPvPに、プレイヤーが積極的に参加するのには理由がある。

 大きなものとして、支配地マップが増えることで自軍タウンにおいてのNPC販売品の素材や装備品の質が良くなることが一つ。

 悠陽が初めて行った防衛クエストのような、素材が手に入るクエストが増えることで、様々な素材を手にすることができるようになることが一つ。

 相手を撃墜することで得ることが出来る経験値が、NPC相手の経験値と比べてかなり大きいことが一つ。

 そのほかにもただPvPがしたいなどという意見もあるが、大体において参加する理由を挙げるとすれば、この三つに絞られるだろう。

 このハイリスクハイリターンが、プレイヤーをPvPに引き付けるのかもしれない。


「結局撃墜ちちまったねぇ。すまないね、報酬減らしちまって」

「いや、あそこで落ちなかったのが不思議なくらいでしたから、仕方ないでしょう」

「ま、金よりドロップ品ってね。……かぁ、鋳鉄だって、使えねぇ」


 リザルト画面を見たRainが、最後の最後で撃墜されたことを謝罪した。

 実際壁に叩きつけられた段階で撃墜判定を受けてもおかしくなかった状況で、致命的なダメージをとっさに防いだRainの操縦技術はかなりのものだろう。

 故にアルターはRainに気にしないように進言するが、カスパーはそのようなことはお構い無しに自分の欲望に素直なようだった。

 リザルト画面に表示された自分が取得したアイテムを見て、興奮状態から一気に冷めて、がっくりと肩を落としている。


「相変わらず物欲センサーは働き者だねぇ」

「こればっかりは、いつの時代でもどんなゲームでも変わらないみたいですね」


 ブツブツと恨み言を洩らすカスパーを呆れたように眺めて、しみじみと言った様子で語るRainに、自分よりもさらに重度なゲーム狂の父親を持つアルターは、その父親がよく口にする愚痴などから聞きかじった知識を交えつつ、本気で都市伝説じみた物欲センサーなどというものについて深く頷いて同意する。

 試行回数をかなり多く取ってみれば、設定されたドロップ確率通りにアイテムはドロップするが、欲しいと思うものはその欲しいという気持ちが先走り、ドロップ確率を自分の都合の良いように考えてしまうので、なかなか欲しいものだけ落ちないと感じてしまう。

 それを頭で理解していても感情が納得できないから、欲しいアイテムがドロップしないのは物欲センサーが働いてドロップしないという都市伝説が広まり、長くオンラインゲーマーたちの間で語り継がれているのだろう。


「そういうお前らは何がドロップした!?」


 同情と哀れみの視線に耐えられなくなったカスパーが、勢いよく顔を上げると見開いた目を爛々と輝かせてRainとアルターを順番に指差して叫んだ。

 その叫びにキョトンと目を丸くして、二人はモニター越しに視線を合わせる。


「そういや何がドロップしたか、気にしてなかったね」

「そうですね。まずは悠陽のレベル上げが一番でしたしね」

「俺には、ドロップも同じくらい大事なんだよ!」


 のほほんと話す二人の様子に焦れたカスパーは、両手を上に突き上げ、まるで聞き分けの無い子供のように大声で喚き散らしながら、モニターでお互いに笑いあう二人に詰め寄った。

 その勢いに本当に間近まで詰め寄られているわけではないが、二人とも思わず仰け反ってしまった。


「わかったわかった。俺は……隕鉄だな」

「私はっと。あら私も鋳鉄だね」


 アルターの隕鉄は通常ドロップではあるが、鋳鉄よりも質が良いため初期では武器などの装備品作成によく使われる。

 しかしカスパーが欲しい青生生魂ではないのだから、結局は多少良いドロップと言ってもカスパーにとって価値がないのは変わらない。

 さらには初期でよく使用されるということは、それだけドロップすると言うことであり、取引価格も当然安価なため、他のメンバーにとっても鋳鉄と同じくらいの価値しかない。


「くあ~今回も全滅かぁ。物欲センサーぶっ壊れてくれよぉ」


 二人のドロップがハズレとわかったカスパーの嘆きは大きく、コクピットの座席の上で体育すわりで膝を抱え、のの字を書いている姿はとてもではないが、大学生の男がやって絵になる姿ではない。

 その情けない様子にRainは内心、溜息をもらす。

 年下の悠陽や阿求亜に見せていい姿ではないだろう。


「そういえば優。あんたは何がドロップしたんだい?」

「そうだ! まだ悠陽がいたんだ!」


 一応フォローのつもりで発したRainの言葉に、悠陽の存在を思い出したカスパーはすぐさま、先ほどの見苦しい状態から、勢い込んでコンソールのモニターにかじりつく暑苦しい状態に戻った。


「え? あ? その」


 カスパーのがっつく様子に思わずのけぞり、悠陽は口ごもってしまう。


「さぁ言え、言うんだ。何がドロップした? さぁさぁさぁ、ハリハリハリぃ!」


 血走った目で悠陽の映るモニターに噛り付き、まるで狂気に犯されたような様子のカスパーは、すでに残りの人間が全員哀れむような、関わりに合いたくないような微妙な表情になってしまったことに気がついていない。


「えと、高じゅ」

「さぁぁぁぁぁああああ言うんだあぁぁあああ!」

「うるさいよ、このバカたれが! とち狂ってるんじゃないよ、たく」


 興奮状態で悠陽を急かすカスパーは、悠陽がドロップ品を言おうとしてもその言葉を遮り叫ぶ。

 けれどもRainの一喝で黙る様子から、本当に悠陽からドロップ品を聞くという目的を忘れて、ただ騒ぐことが目的になったというわけでなく、悠陽のドロップが青生生魂ではないことから、ただ聞きたくなかっただけかもしれない。


「はぁぁああ。悠陽は高純度チタンかぁ。当たりっちゃ当たりだけど……はぁぁああああ」


 まるでこの世の終わりが来たかのように、がっくりと肩を落としてカスパーは溜息を吐く。


「ま、今回も運が無かったな。また今度暇があったらくればいいじゃないか」

「くそぉ。ぜってぇ青生生魂で一機作ってやる!」


 かなり悠陽に迫るカスパーの様子に引いていた、アルターの心の篭っていない棒読みの慰めに、今度こそ本当にカスパーは切れる。

 ぐわっと叫ぶように決意表明をした後、“今の相場が~”や“いや、あいつらと共同で一機……”など、ブツブツと口ずさみながら、自分の世界の中に入り込み影を背負いだしてしまった。


「このバカは放っておいて。いつまでもこんなところに居ないで、戻りますか」

「そうだね、さっさと報告をしようか。コングの進捗に、将軍の話も気になるしね」


 目を合わせ同時に肩を竦めたRainとアルターは、若干壊れ始めているカスパーを放置することに決め、さっさとタウンに戻ることにした。

 放っておいていいのだろうかと思いつつ、悠陽にしてもあの状態のカスパーをどうにかできるほど、カスパーと付き合いが長いわけではないため逡巡は一瞬で、すぐにRainたちとタウンに戻ることのほうに傾いた。


「じゃあ、一旦市庁舎に行って報告だね。私がやっとくから皆はレストルームで待ってておくれ」

「了解です。コングが戻ってきていたら、そっちを手伝っていますよ」


 クエスト達成報告は、チームリーダーが必ず同席の元報告しなくてはならない。

 またチームメンバーの報告は、チームを解散していなければチームリーダーが代行して報告することができるため、ほとんどの固定チームではチームリーダーが代表でクエスト達成報告をすることが多い。

 ほかのチームメンバーはリーダーについていかないときは、チームリーダーの分を含めた全体の消耗品の買出しであったり、使用したトルーパーの改造であったりなど、分担作業で効率的に動くことがリアルとほぼ同時間軸動く銀河大戦では主流になっている。

 ゆえにこのチームのリーダーであるRainが一人で市庁舎へ赴き、クエストの達成報告と報酬を受け取りに行き、アルターは今回のクエストにおいて、消耗品を特に使用してはいないので、コングの手伝いをすることにしたというわけである。


「じゃあ俺もコングさんの手伝いを」


 そのアルターに悠陽も同調して、手伝いをすることを決めた。


「じゃあそっちはよろしく。私もさっさと報告して、そっちに顔だすよ」

「了解しました」


 そう確認が終わると、Rainは市庁舎に向かうため、アルターと悠陽はコングを手伝うべくクエストエリアから転移していった。


「さて、というわけだ、アルター! お金貸して下さい!」


 自分の世界から帰ってきたカスパーの言葉は、カスパー以外の鼓膜を震わせることなく虚空へ消えていった。

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