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Galaxy War Online  作者: Chilly
18/30

第十七話 ~ デブリーフィング ~

 私設埠頭には師団所属のキャプテンが所持する戦艦を停泊させる施設の他に、師団経験値を消費することでメカニックの工房や造船ドック、トルーパー整備場にタウンの市場直通の店舗、さらには師団員の共用レストルームに個室などを作成することができる。

 師団VRゲーム研究会ではこの内、戦艦が停泊する埠頭自体を四つ、メカニックのコング専用の工房にトルーパー整備場、師団員共用レストルームに師団員それぞれに個室を、師団経験値を消費して用意していた。

 ナンバー二三鉱山惑星から戻り、悠陽はトルーパー整備場にトルーパーを駐機させると整備場で待っていたTakuの案内の元、共用レストルームへと向かった。


「私設埠頭って結構広いスペースなんですね」

「ん? あぁソロ師団とかだと戦艦一隻を停泊させるだけのところも多いよ。うちはさ、アレなのがいるからさ」


 悠陽の質問ともいえない言葉に、Takuは整備場から共用レストルームへと続く通路を歩きながら、苦笑と共に師団VRゲーム研究会の私設埠頭が広いわけを暈かした表現で説明する。

 その困ったような表情の笑い方に感じるものがあったのか、悠陽はこれ以上聞いてはいけないとこの話題を終わらせる。

 なんともなしに会話がこれで終了し無言の時間が出来上がるが、幸いにも整備場から共用レストルームまでの距離は短く、すぐに入口の扉の前までたどり着いた。


「ここがうちの共用レストルームだよ。まぁあまりモノを置いてないからアレなんだけどね」


 Takuはそう言いながら、悠陽を招くように共用レストルームへ続く扉を開ける。

 中は十五畳ほどの広さの空間で落ち着いたクリーム色の壁紙に、柔らかな光で部屋を照らすクリスタルシャンデリアが天井を彩り、ダークブラウンの大きなソファセットが大きな一枚板を用いた机を囲んでいる。

 さらに部屋の隅にはバーカウンターがあり、様々な飲み物と軽食をここで用意できるようになっていた。

 Takuは何も置いていないとは言っていたが、悠陽には十分ゆっくりと寛げると思える空間がそこに広がっていた。


「ようこそ、VG研レストルームへ」


 バーカウンターの前に固定されているストゥールに軽く腰掛け、琥珀色の液体の入ったグラスを片手に持ったコングが、グラスを持ち上げて悠陽に歓迎の意を示した。


「ブランデーなんてデータあったっけか?」

「これブランデーに見せかけたアイスティー。Takuも飲む?」


 バーカウンターに向かいコングにグラスの中身を聞いてきたTakuに、コングはグラスの中身を教えるとバーカウンターの中に回り、飲み物を用意をしながら一応いるかどうかの確認をとる。


「優君もどう?」


 コングは手早く準備をしながら、悠陽にも聞く。

 共用レストルームを興味深げにキョロキョロと眺めていた悠陽は、そのコングの言葉に慌てて頷いてバーカウンターへと向かった。


「初クエスト戦闘はどうだった?」

「操縦を覚えるので手一杯で、正直何がなにやらって感じですね」


 飲み物を差し出しながら聞いてきたコングの質問に、悠陽はアイスティーの入ったグラスを受け取り、肩を竦めながら正直な感想を口にする。


「ま、最初はそんなもんよねぇ。余裕のない顔してたし」


 両手でアイスティーの入ったグラスをささげ持つようにもったコングは、悠陽のクエスト中の表情を思い出したのか、グラスで口元を隠してクスクスと忍び笑いをもらす。

 コングの言葉に悠陽はムッとした表情を浮かべるも、クエスト中はトルーパーの操縦を覚えることに必死で、余裕がなかったことは事実であるし、口では到底コングに勝てるとは思えないので黙って恨めしそうにコングを睨むことを選択した。

 それでもコングは微笑を湛えたまま、獲物を見つけた猫のように目を細めて見つめ返す。


「コング、あんまり優君でからかって遊んでると、レポート大変になるぞ。Rainから資料もらえなくて」

「あちゃ、それは困るね。優君、Rainちゃんには内緒でお願いね」


 横で見ていたTakuの忠告に、コングは本気で困っているとは到底思えない大げさな動作で嘆いて見せて、悠陽に対してRainへの口止めをウィンク一つと共にお願いする。

 その大げさな動作と悪びれない言動に毒気を抜かれた悠陽は、思わず噴出すように笑ってしまった。

 そして苦笑と共に悠陽はコングにRainへの口止めを了承する。

 コングも自分の行動に噴出すように笑い、つかの間共用レストルームを笑い声が満たした。

 その後しばらく三人が世間話に花を咲かせていたところで、勢いよく共用レストルームのドアが開く。


「ただいま帰ったよ!」


 上機嫌で扉を潜るRainをバーカウンターで三人は向かえ、コングがRain用の飲み物を用意する。

 Rainはコングから渡されたグラスを一息で飲み干して、音を立ててバーカウンターへグラスを置くと、懐から白い無地のものと金縁の青いものと二枚のカードを取り出した。


「一枚は今回の討伐クエストでの撃破ボーナス経験値の入った悠陽の分の経験値カード」


 取り出した二枚のカードの内の白い無地のものを悠陽へ投げる。

 くるくると回転しながら飛んできたカードを両手で挟んで受け取り、それを悠陽はしげしげと両面、しきりに裏返しながら見つめる。


「さっさと使ってレベル上げな。成長の仕方は優に任せるけど、変な成長させるんじゃないよ」


 経験値の入った経験値カードは表面をカードに登録されたプレイヤーが、ダブルクリックのように叩くことでその中に記録されている経験がプレイヤーに反映される仕組みになっている。

 Rainの言葉に従い悠陽は左の手のひらの上に置いたカードを、右手の人差し指でトントンとダブルクリックをする要領で叩くと、カードは一瞬で光の粒子と化して悠陽の体に吸い込まれるように消えていった。


「どれくらいになった?」

「討伐クエストで倒した分でレベルが一五になってて、今ので二三になったかな」


 経験値が反映されるのを待ってしたコングの質問に、悠陽はシステムメニューからステータス表示を選び目の前に表示させると、そこに書かれた自分のレベル表示を見て答える。

 ついでにレベルが上がったことで新たに割り振れるようになったステータスポイントを、ゲームを始める前に考えておいた育成計画にのっとり、知力と精神力を中心に補助的に生命力に振っていく。

 キャラクター作成時よりも二三回ステータスポイントを振ったことで、索敵重視のステータスではあるが、そこそこ強くなったように感じられた。


「三〇超えるまで後一回か二回か。スキル熟練度が心配だけど、そこは仕方ないか」

「まぁ、その辺はおいおい育てていくしかないかな」


 RainとTakuも悠陽のステータス画面を覗き込んで、改めて会話に参加する。


「三〇かぁ。結構遠そうだけど、さっきのをもう一回やればいけそうかな?」

「ぎりぎりってとこだね。あの手の討伐クエストは当たりハズレ激しいから」

「今回はまとめて倒すチャンスが結構あったからね、結構おいしかった部類に入るよ。だからこいつも」


 Rainは持っていたもう一枚の金縁の青いカードを示して見せる。


「個人撃墜数トップボーナスも入って、結構な金額が支給されたよ」


 金縁の青いカードはゲーム内通貨が記録されているカードであり、縁の色で中に記録されている金額が大体わかる仕組みになっている。

 一切金額が入力されていないものは縁が白。

 一(メガ)、百万クレジットごとに青、青と水色、水色、水色と緑、緑、緑と黄、黄、黄と赤、赤、赤と紫、紫、紫と黒、黒、黒と金、金と変わり一五M、壱五〇〇万クレジットまでが最大で、一枚のカードに入力できる。

 つまりRainの持ってきたカードは、最高入力金額である一五Mものクレジットが入力されていることが、縁の色でわかる。


「一五Mか。結構稼げたなぁ」

「一五M? Kとか飛び越えてM単位の金額が稼げるの?」


 カードの金額を縁の色でTakuは読み取り、そこまで討伐クエストで稼げたことを感心する。

 K及びMはMMORPGの経済においての金額の単位であり、Kはキロと読み千を意味する単位とされ、Mはメガと読み、上記に書いたとおり百万を表す単位となっている。そのほかにも(ギガ)(テラ)という単位もあるが、滅多に使われることはない。

 通常ゲームを始めたての場合、金銭を稼ぐことは非常に大変であり、M単位の金額をゲームだけで稼げるようになるためには、中堅クラスのレベルまで育て上げてコツコツと稼いでいくか、幸運に恵まれ高値のレアアイテムを取得するかしなければならず、始めて一日二日でM単位の金額を得ることはかなり難しい。

 しかし銀河大戦では、トルーパーや戦艦などの必須装備の価格がNPCから買う場合でも、市庁舎クエストで配布されるものを買いなおすとしても最低一Mはかかるほど高価であるため、他のゲームなどよりは金銭を稼ぐことはかなり容易ではあるのだが、悠陽は銀河大戦においての金銭獲得の経験がなく、他のゲームでの金銭感覚でいたため、そのズレからいきなり一五Mもの金額が稼げたことはかなりの驚きであった。


「優君、銀河大戦はお金稼ぐのは簡単よ。でもRainちゃん。あの戦い方は無茶したね。ミスリル鉱で固めた準廃装備のトルーパーだから耐えられたけど、運が悪ければ撃墜()ちてたよ」


 悠陽の質問に笑顔で答えたコングであったが、表情を改め真剣な表情にしてRainに対して怒ってみせる。

 メカニックである彼女に言わせれば、トルーパーの耐久力がレア素材の恩恵でかなり高いことを嵩にきたRainの戦い方は、いつ撃墜されるかと心配するほどだったようだ。

 実際、あのときの彼女はアル=アーデイル率いる解放部隊がもう少し遅れていれば、撃墜されていたかもしれないほど、機体の耐久値が減っていた。


「いや、あれは私だって撃墜ちないように気を」

「Rainちゃん!」

「ごめん。もうちょっと考えます」


 頬を膨らませて私は不機嫌ですと表情で言っているコングに対してRainは、言い訳をしようと口を開くも、途中でコングに名前を強い口調で遮られ、より強い視線で睨まれると素直にコングに謝った。

 その言葉にコングは一応の満足をしたのか、Rainに笑顔を向けて頷き返す。


「とりあえずそれを使ってやるとしても、少々足りない?」

「だね。それだけじゃチタンで揃えるのは、難しいというより無理かな」

「まぁ、その辺は私が少し持ち出しするし」


 コングのお説教がとりあえず済んだとみたTakuは、主語の抜けた言葉で話題を変えた。

 Takuの主語の抜けた言葉を理解したコングが頷き、素早く頭の中で計算した素材の合計金額と一五Mという金額を照らし合わせて、最低限コングが求めるレベルのものが出来ないことを付け加える。

 そしてTakuの話題の金額が、元々一五Mでは到底足りないことをわかっていたRainが、自分の財産を放出することを告げた。


「えと、いきなり何の話?」


 一人話題についていけなかった悠陽がRainに尋ねてみれば、Rainは呆れたように目を見開いて悠陽を見つめる。


「何の話って、優のトルーパー製造の話に決まってるじゃない」

「へ?」

「へ?って優、あんな初期装備のトルーパーをいつまで使う気だい?」


 Rainの答えに気の抜けたような表情をさらす悠陽に、Rainは呆れたように溜息を吐きながら、諭すような口調で悠陽に問いかける。


「いや、そのうちお金貯めて作りかえる気だったけど……」


 しどろもどろになりつつも一応、自分でお金を貯めて少しずつ素材とパーツをドロップもしくは購入するつもりでいたことを話す悠陽を、Rainは鼻で哂った。


「優、あんな初期装備で出たら、カモにされるだけさ。そんなのあんたが許しても、私が許さない」


 Rainは腕を組み悠陽を見下ろしながら、今後悠陽がRainたちと一緒に行動した場合に考えられる状況を示し、それについて自分自身がその状況を許せないことであると明言する。

 正直に言えばRainの我侭に近いものがあるが、現実問題としてTakuとコングにしてみても、悠陽がこのまま初期装備のトルーパーを使い続けることは、足手まといを一人抱えることと同義であり、それは今後様々な場面においてVG研の戦力を低下させるため、二人にしてみても悠陽のトルーパーを最低限、自分達の行動についていける程度の質のものを用意する必要があると考えていた。


「まぁ、優君にはそういった楽しみを奪うことは悪いと思うけど、師団のことを考えるとね」

「そうなのよね。このままじゃ二流のスナイパーにズドンで何も出来ずに一発で即退場だし」


 故にTakuは、悠陽に自分達の都合を押し付けることを謝りつつもRainを支持し、コングはライフル銃を撃つ真似をしつつ、笑顔で悠陽の今後を予想して肩を竦める。


「そうなんですか?」

「まぁ、状況にもよるとは思うけど、主戦場では真っ先に落とされると思うよ」

「というわけで、最低限うちのメンバーについていけるくらいのトルーパーを作るよ。別に最高ランクのものを作るわけじゃないさ、資金もないしね。だから次は本当に自分の手で素材を集めな」


 Rainとコングの言葉の確認をとる悠陽に、Takuは頷いて肯定の言葉を口にする。

 そしてRainは問答は無用とばかりに決定するが、若干気落ちしている節が見られる悠陽にフォローの言葉をかける。


「ま、仕方ないですよね。とりあえず初期投資で楽できたと思っときます」


 とりあえずRainの言葉に納得することにした悠陽は、頬を人差し指で掻きながら苦笑を浮かべて、トルーパー作成を了承した。


「で、Rainちゃんはいかほど出してくれるの?」

「一応とっておきのミスリル鉱を四ダースほどと、一〇Mだね、出せるのは」


 悠陽の了承を受けて早速といった感じで、コングが先ほど持ち出しを宣言したRainにいくら出せるのかを尋ねる。

 それに自分の倉庫の内容と銀行の残高を頭で確認しながら、Rainは自分供出できる資源と金銭を提示した。


「おいおい、それよりもまずコンセプトを決めないといくら掛かるかも大雑把にしか決められないだろ」

「予算を決めないとそれもままならないと思うけど?」

「コンセプトによって必要なカードが変わってくるんだから、まずはコンセプトだろ」


 予算の話を始めたRainとコングに、Takuがまずはどういった方向性にするか決めるべきだと待ったをかければ、Rainが予算を決めてからそれに合わせたものを作るべきという意見を言い始めることで、水掛け論的な言い合いが、二人の間で始まってしまった。


「で、優君はどんなトルーパーに乗りたいとか希望ある?」


 言い争いを開始した二人から素早く離れたコングは、バーカウンターから部屋の中央にあるソファセットのところに悠陽を連れて行くと、二人の言い争いをBGMにのほほんとした調子で、悠陽に自分の乗るトルーパーの希望を尋ねる。


「まずは初期装備を使いながら、自分の適性を掴むつもりでしたから、特にまだ決めてないんですよね」

「そうだよねぇ。スキルもまだまだだしね。でもステータス的にはスナイパーより?」

「特にそういったつもりで振ってないんですよね。スキルでカバーできるとこはスキルでってつもりでしたし」

「そかそか。となると」

「コング、あんたなにやってるんだい?」


 悠陽とコングが話し合っているところに、いつの間にかコングと悠陽がバーカウンターに居ないことに気がつき、言い争いを一時的にやめたRainの追及する声が、コングの言葉を遮る。


「なにって、どんなトルーパーを作るかイメージ作り?」

「私たちを放っておいて?」

「二人で楽しそうにジャレてたじゃない」


 Rainの言葉にコングは飄々と悪びれることもなく答えるのに、RainはTakuとの言い争いから続く不機嫌な表情を隠すことなく、半眼でコングを睨みつけながら追及を続けるも、コングの切り返しに言い返せず言葉を飲み込む。


「まぁいいじゃないか、このまま優君のトルーパーのイメージを決めよう。若干射撃よりなのかな? 優君の操縦って」


 Rainの不利に割ってはいるようにTakuが自分の主張が通りそうということで、コングとの間に入り、Rainをかばうように話をすすめようと、討伐クエストでの悠陽の操縦についての感想を述べる。


「ということはステータスから遠中仕様かい?」

「どだろ? モニター見てる限り、優君は姿勢制御の習熟が思ったより早かったし、近近仕様のほうがいいんじゃない?」


 そのTakuの見解にRainは、悠陽のステータスを思い出して射撃援護をメインに行う遠距離から中距離で戦闘を行うタイプを思い浮かべ、Rain自身が希望しているポジションと違ったのか顔を顰める。

 逆にコングはTakuの見解の反対というべき、格闘戦がメインポジションとなる近接距離から近距離をメインに戦うポジションを、悠陽の質量移動による姿勢制御法の習熟度合いを思い出し提案した。


「そうか、射撃をメインに戦ってもらってたから、近接戦闘をほとんどしなかったね。どう、接近戦やれそうかな?」


 コングの提案を聞いたTakuは、討伐クエストでの悠陽の戦闘を振り返り、自分の指示がまず悠陽の安全のために近接戦闘をすることを避けていたことを思い出し、悠陽に近接戦が可能かどうか確かめてみた。

 悠陽はその問いに、始めて近接戦闘を行ったチュートリアルでの戦いと討伐クエストでの制限を解除した機動戦闘を振り返り、頭の中でチュートリアルのNPCと同程度レベルの相手と近接戦闘を行った場合を想像してみる。


「できる……と思います。どれくらい強くなれるかは保障しませんけどね」


 数回、頭の中で戦闘を繰り返し悠陽は、自分がある程度のレベルで近接戦が出来るだろうと判断を下した。それがRainが求めるレベルに達しているかどうかは、討伐クエストでのRainの戦闘と比べた場合、とてもではないがまだまだそのレベルに達していないと判断したことも付け加えることで、他の三人に判断を委ねる。


「ならうちの欲しいポジションも近接ができる前衛だから、優君にがんばってもらう?」

「微力を尽くしますよ」


 悠陽の判断にTakuは、自分達の希望するポジションを悠陽にやってもらうかどうかを、残りの二人に確認をとる。

 それに悠陽がRainとコングが答える前に、ポジションに着くことを了承したため、そのまま近接近距離仕様で悠陽のトルーパーが組まれることが決定することになった。


「じゃあ、クエスト報酬の一五Mと、Rainちゃんからの供出のミスリル鉱四ダースに一〇Mかぁ。私が高純度チタンをある程度持っているからこれを使って……」


 コンセプトが決まったことで、今度はコングが予算関係をまとめるべく、現在判っている資材と金銭を指折り数えていく。

 そのなかでコング自身も資材と資金を供出することを宣言すると、この中で一人だけ供出しないということがRainがいる手前出来ないTakuも、資材は彼の倉庫内にストックがないため供出しないが、その分二人よりも多めに資金を提供することになってしまった。


「うん、これくらいならフレームはミスリル鉱で作って、装甲はセラミックとチタンの複合材に、エンジンもまぁ一級半品くらいは用意できるかな。早速知り合いの資材屋を廻らなきゃ」


 合計された資材と資金から新たに計算しなおした見積もりから、コングはニンマリと笑顔でウキウキした様子を隠す様子もない。今にも駆け出して、資材を集めに行きそうな雰囲気が漂っている。


「ま、とりあえず資金とかはコングに集めて、一先ず夕食に行くということで落ちる?」


 そんなコングの様子に、その創作意欲にブレーキをかけて冷静にする作業をいつもの事と諦めたTakuは、肩を竦めて悠陽のトルーパーについてコングに丸投げすることを決め、他の二人にこのあとの予定を提案した。


「あっ、もう七時なんですね。終わってるかも知れないけど、夕飯の手伝いをしないと……」

「九時に集合だから、今のうちに食べておいたほうがいいね。コングはどうする?」


 Takuの提案に現在時刻を思い出した悠陽が、ゲームをログアウトすることを決め、Rainも今日の予定を思い起こし、今のうちに食事を済ませることを決めた。


「ん~。今日はいいや。集合までパーツカード集めしてるから、皆は食べてきなよ」


 Rainにどうするのか聞かれたコングは、自身の尖った顎先に人差し指を当てて考えてから、一人だけログアウトをしないことを決める。そして預かっている資金カードをひらひらと三人に見せて、露天めぐりをすると告げた。


「了解、じゃあ九時にここに集合ということでいいね。じゃあコング、後は頼んだよ」

「はいは~い。おつつね、皆」


 システムメニューを開きログアウト作業を続けながら、Rainは一緒にログアウトする二人に集合時間を再度注意して、残るコングに一言告げる。

 それに明るく笑顔で手を振って挨拶を返したコングは、三人がログアウトして消えていくのを見送るのだった。

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