Song 4: Seven Steps Behind
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曲を聞きながら楽しんでもらえると、うれしいです。
# Song 4: Seven Steps Behind
廃砦の回廊で、ガランは三度目の足音を聞いて振り返った。
「エリアン。下がりすぎだ」
言われて、エリアン・ヴォスは歩幅を数えた。
ガランの背中まで七歩。ミレナまでは五歩。セラより二歩後ろ。
「すみません」
「謝れって意味じゃない。何か出たら届かんぞ」
わかっている。
けれど、ガランの剣が通れる幅しかない石の回廊では、前へ詰めるほど息が苦しくなった。壁の染みが獣の影に見える。剣を抜けば鞘を柱へぶつける。役に立ちたいのに、足だけが正直だった。
砦の奥で、石が擦れた。
崩れた守衛像が台座から降りる。人の倍近い背丈。顔は欠け、腕には石斧が彫り出されていた。
ガランが盾を構えた。
「下がってろ!」
一撃目が盾を打つ。
轟音が回廊を走り、天井の砂が落ちた。ミレナは像の脇へ回ろうとするが、狭くて抜けられない。セラは祈りの言葉を唱え、ガランの腕を支える。
エリアンは七歩後ろにいた。
何もできない位置だと思った。
からん。
剣戟の残響に混じり、ダイスが跳ねた。
像が斧を引く。次が来る。だが、どこへ?
一撃目。ガランの盾。
二撃目。横薙ぎ。
石斧が壁を削り、破片がエリアンの頬を掠めた。彼は身を縮めた。前へ出れば邪魔になる。後ろへ逃げれば、仲間の背中が見えなくなる。
像が向きを直す。
ずしん。ずしん。靴ではない足音。
ころ、ころ。
ダイスの音は、足音の間を転がっていた。
エリアンは息を止めた。石像は速くない。けれど二撃のあと、一歩だけ深く踏み込む。床の欠けた石を避けて、必ず左へ重心を寄せる。
「ガラン! 二撃受けたら、右へ!」
声が裏返った。
「右は柱だぞ!」
「だからです。三歩じゃなく、二歩だけ!」
ガランは迷った。ほんの一瞬だけだった。
一撃目を盾で受ける。二撃目の横薙ぎを屈んでかわす。三歩下がれば柱に詰まるところを、二歩で止まった。
石像が左足を踏み込む。
斧を振り上げた肩が、欠けた柱へぶつかった。
「ミレナ!」
ガランが叫ぶより早く、ミレナは柱の根元へ短剣を差し込んでいた。亀裂が走る。ガランが盾で押すと、柱の上半分が崩れ、石像の腕を壁との間に挟んだ。
挟まれた石像は、なおも自由な腕で壁を叩いた。亀裂から砂が降る。
「走れ!」
ガランが最後尾に残り、盾を構えた。ミレナが先へ抜け、セラがエリアンの外套を掴む。エリアンは階段の最初の段で足を滑らせ、石に手をついた。頬の傷より、掌の痛みの方が鋭い。
それでも一段ずつ降りた。背後で柱が崩れる。ガランが追いつくまで、ミレナは扉を押さえ、セラは息を切らしながら短い祈りを繰り返した。誰か一人の鮮やかな勝利ではなく、四人ぶんの不格好な退却だった。
倒したわけではない。
四人は動けない像の脇を抜け、奥の階段から外へ出た。ガランの腕には痺れが残り、エリアンの頬には細い傷ができた。
外へ出ると、夕方の光が眩しかった。ガランは泉の水で盾の砂を流し、ミレナは持ち帰った石片を布に包んだ。依頼主へ、砦の守りがまだ動くと知らせる証拠にするのだ。セラは包帯を裂き、エリアンへ座るよう手で示した。傷は浅いが、触れられるたびに情けない声が出た。ミレナは聞こえないふりをした。
砦を離れてから、エリアンは言った。
「僕、やっぱり前には立てません」
悔しさは消えなかった。盾を受ける力も、柱を割る技もない。
ガランは痺れた腕を振り、しばらく考えた。
「立たなくていい」
ミレナが頬の傷へ薬を塗る。染みて、エリアンは顔をしかめた。
「前にいると見えないものもある」と彼女は言った。
ガランは回廊の暗がりを見返した。
「次から、七歩後ろを空けておけ」
それは英雄の立ち位置ではなかった。
歌の真ん中で剣を掲げる場所でもない。
けれどエリアンは、その七歩をもう、遅れとは呼ばなかった。




