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Song 2: Map Upside Down

https://suno.com/s/3iWkAtpE8OMi7A4t


曲を聞きながら楽しんでもらえると、うれしいです。

# Song 2: Map Upside Down


古道へ入って半刻もしないうちに、エリアン・ヴォスは地図を逆さに持っていることに気づいた。


気づいたのはミレナだった。


「ねえ、エリアン。北が下になってる」


先頭を歩く斥候が振り返り、口の端を上げる。エリアンは慌てて地図を回そうとした。紙の端が手袋に引っかかり、今度は丸めた地図を落とした。


「すみません」

「謝るほどじゃない。道は逃げないよ」

「俺たちが迷えば、逃げるのは日暮れだがな」


ガランの声に悪意はなかった。それでもエリアンの耳は熱くなる。


街道脇の森には、昔の巡礼路が残っていた。依頼は、崩れた礼拝堂までの道がまだ使えるか確かめること。古い地図には細い道と水路が描かれているが、目の前の分かれ道には苔むした道標しかない。


ミレナがしゃがみ、地面を調べた。


「右だね。最近、誰か通ってる」


右の道は歩きやすそうだった。枝が折れ、草も踏まれている。

エリアンは地図を拾い、正しい向きに戻そうとした。


からん。


石の上で、ダイスがひとつ跳ねた。


彼は動きを止めた。


「また?」とセラが訊く。

「たぶん。でも……どこからか、わからない」


ころり。


音は右の道ではなく、手の中から聞こえた気がした。

エリアンは地図を逆さのまま広げる。恥ずかしさをごまかすように紙を見つめ、それから、細い線に気づいた。


「水路」

「何?」

「この道、礼拝堂へ上がる道じゃない。水を下へ流す溝です。逆さにしたら、坂の向きが……僕にも見えました」


ミレナが地図を覗き込み、次に道の縁の草を払った。土の下から、細長い切石が現れた。


「ほんとだ。道じゃない。埋まった排水溝だ」


踏み跡は、奥へ誘うように続いている。

ガランが小石を拾い、右手の先へ投げた。


硬い音が一度。続いて地面が沈み、枯葉に隠されていた石蓋が内側へ落ちた。浅くはない穴の底で、錆びた鉄杭が鈍く光った。


「誰かが罠を残してる」


穴の縁には、靴跡に見せかけて枝の束を引きずった跡があった。ミレナは指先で土をなぞり、道標の裏側まで調べる。苔の下には、新しい刃物で削った浅い傷が三本。安全そうな右手へ旅人を誘導するため、古い巡礼印を消した跡だった。


セラは礼拝堂の方角へ向き直り、小さく祈りの言葉を唱えた。

「罠を作った人が、まだ近くにいるかもしれません」


エリアンは森の暗がりを見た。ダイスはもう鳴らない。次の危険まで全部教えてはくれないらしい。その不親切さに、かえって少しだけ息を取り戻した。



ガランの声から、軽さが消えた。


ダイス音は危険の形を教えなかった。逆さの地図も、安全な道を指さしてはくれない。四人は左手の藪を調べ、ミレナが古い巡礼印を見つけ、セラが石に刻まれた祈りの文字を読み、ようやく迂回路を選んだ。


古い巡礼印は、左手の木の根元にも残っていた。半分は土に埋まり、杖を持つ旅人のために休憩場所まで示している。地図の線だけでは歩けない道を、昔の誰かの小さな配慮がつないでいた。セラは土を払い、消えかけた印へ静かに一礼した。森の葉が頭上で揺れた。


藪を抜けるあいだ、エリアンは枝に外套を取られ、二度ほど立ち止まった。ガランのように枝を押しのけられず、ミレナのように足跡も読めない。


それでも、礼拝堂の崩れた鐘楼が見えたとき、ミレナは彼から地図を取り上げなかった。


帰り道、同じ分かれ道でガランが言った。


「エリアン、地図を見せろ」

「はい。今度はちゃんと――」

「いや」


ガランは罠のある水路跡を見て、片方の眉を上げた。


「逆さのままで持っていろ」


エリアンは笑われたのかと思った。だが、ミレナもセラも先へ歩きながら笑っていたので、少し遅れて自分も笑った。


その日の歌では、勇者は剣を抜かない。

ただ、逆さの地図が一行ぶん、世界を正しく見せた。

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― 新着の感想 ―
 道路が整備されてなくて地図も作られてない山の中とか行くと、こういうのって本当にありそうでこわいですね。だいたいそういう所は私有地だから勝手に入ったらいかんのですが。  ファンタジーでよく出るチート…
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