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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: P


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桜からのメッセージ

誰もいない家の戸を開けると、

薄暗い玄関の空気がひやりと肌に張りついた。


「ただいま」と口にすることもなく靴を脱ぐ。

言ったところで、返事が返ってこないことは分かっていた。


いつもなら台所から漂ってくるはずの、

カレーや肉じゃがの温かな匂いも、今日はどこにもない。


その“当たり前だったもの”がごっそり抜け落ちた空間に、

胸の奥がきゅっと縮む。


二日目にして、

喪失の影がようやく輪郭を持って迫ってきた。


ソファーに身を沈めると、

部屋の静けさが耳鳴りのように重くのしかかる。


考える気力も湧かず、

俺はそのまま目を閉じた。


眠ってしまえば、

この胸の痛みも少しは薄れる気がした。


まどろみに引きずり込まれかけた、

そのとき——


『ピロン』


スマホの小さな着信音だけが、

不釣り合いなほど軽やかに部屋に響いた。


画面に表示されたのは、

桜からのメッセージ。


その名前を見た瞬間、

胸の奥を小さな電流が走り、

心臓がひとつ跳ねる。


さっきまで沈んでいた気持ちが、

不意に浮かび上がる。


けれど、

それが何なのか、

自分でもうまく言葉にできなかった。


『今日は、本当にありがとう。

あの時、車に引きずり込まれそうになって……

パッて達也の姿が見えた瞬間、

「やっぱり来てくれた」って思っちゃった。

なんか、変だよね。


郁美もすごく感謝してたよ。

今度ちゃんとお礼がしたいって。


もしよかったら、

明日の放課後……会えないかな?』


達也

『たまたま通りかかっただけだよ。

気にしなくていい。


それより、

最近は土日が特に危ないらしいから、

気をつけろよ。


明日は水泳あるけど、

五時半までなら大丈夫。』


『そっか、よかった!

じゃあ、明日の四時に

校門前で待ち合わせね!』


達也

『了解。』


俺はスマホを、

そっとソファーの上に投げ出した。

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