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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: ダダ太郎


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ショッピングモール

「ハァ……無理! もう食えない!」


関谷は残ったパンケーキを睨みつけると、イライラを隠そうともせずにフォークを皿へ放り投げた。カチャンと高い金属音が響く。自分で強引に頼み、桜にまで押し付けた手前、残すことに対する悪びれた様子も反省もなく、ただただ不機嫌そうに自分の腹をさすっている。


「どうしよう……」


一方の桜は、目の前に残された残骸を見つめながら、申し訳なさそうに困り果てた声を漏らした。残してしまうことへの罪悪感と、食べ物を無駄にしてしまう心苦しさに押し潰されそうな表情をしている。


そんな桜の様子を察して、郁美がすぐに優しく声をかけた。


「む、、無理しなくて、い、いいんじゃないかな……? 残しちゃっても、この量だし、誰も桜ちゃんを責めたりしないよ」


「そうかな……? でも、せっかく作ってもらったのに、こんなに残しちゃうの申し訳ないし……」


なおもフォークを置けずになんとかパンケーキを突っつこうとしている桜。


「さっき、隣のテーブルにいた別のカップルも半分くらい残して席を立ってるの見たよ。このボリュームだし、完食できないお客さんの方が多いんじゃないか?この店じゃ珍しいことじゃないはずだよ」


「……そう…かな……」


俺の言葉に、桜はようやく小さく頷いてフォークを置いた。


「……じゃあ、もう行こうぜ…」


関谷が伝票を乱暴にひったくると、ろくに二人を振り返りもせずにレジへと歩き出した。俺たちもそれに続いて立ち上がり、上着を羽織る。


こうして俺たちは、甘い香りと重苦しい空気で満たされていたパンケーキ屋を後にした。店を出た瞬間に肌を刺した冬の澄んだ冷気が、火照った顔と重くなった胃袋を少しだけ和らげてくれた。


そして予定通り近くのショッピングモールへと向かった。


吹き抜けの広々としたモール内はクリスマス一色に飾られ、華やかなBGMと家族連れやカップルの熱気で溢れ返っていた。郁美が気を利かせて「あ、あの服可愛くない!?」と桜の手を引いてレディースショップへ連れ出してくれたおかげで、店内を巡りながら服を選んでいる間は、それなりに和気あいあいとした時間を過ごすことができた。


郁美の健気な気遣いと柔らかな雰囲気によって桜も次第に本来の笑顔を取り戻し、二人で楽しそうにコートやニットをあてがい合っている。


……とはいえ、俺と関谷の関係が修復されたわけではない。


俺と関谷の間には終始、冷ややかな空気が流れていた。二人で直接言葉を交わすことは一切なく、会話といえば、桜たちが「これどうかな?」と振り返った時に、俺が「似合ってると思うよ」と返し、関谷が「桜ちゃんなら何着ても可愛いって」と調子のいい相槌を打つ程度だ。


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