初見
「お待たせいたしましたー」
店員の弾んだ声とともに、トレーに乗せられた料理が運ばれてきた。
まずテーブルに置かれたのは、俺と郁美のパンケーキだ。俺の『スモール苺アイス乗せパンケーキ』は、甘酸っぱい苺の赤とバニラアイスの白が鮮やかに映える、小ぶりで可愛らしい一品。郁美の『バナナチョコパンケーキ』も、スライスされたバナナとチョコソースが上品にあしらわれていて、まさに女子受けしそうな申し分のないビジュアルだった。
「わあ、美味しそう……!」と郁美が素直に目を輝かせる。
だが、本当の「真打」はその後だった。
「お待たせいたしました。こちら、『恋するふたりの☆カップル割デラックスパンケーキ』になります」
重厚な音を立ててテーブルの中央に鎮座したのは、もはやパンケーキと呼んでいいのか怪しい巨大な甘味の要塞だった。
皿の上に聳え立つのは、極厚のパンケーキが何枚も重なったタワー。その周囲を埋め尽くす大量のフルーツと、これでもかとばかりに山盛りにされた生クリームの濁流。頂上にはチョコレートの城郭までそびえ立っている。
俺と郁美は昨日その凶悪さを胃袋で味わった。目の前に現れた物量に驚きこそしなかったものの、引きつった苦笑いを浮かべるしかなかった。
しかし、初見である桜と関谷のリアクションは違う。
桜は目の前の光景に完全に引いてしまい、瞳を丸くしたまま固まっている。「嘘でしょ……?」という心の声が聞こえてきそうだ。そして、さっきまで威勢よかった関谷も、開いた口が塞がらないといった様子で固まっていた。
「……な、なんだよこれ!?」
静寂を破り、関谷が引きつった声を上げた。
「デラックスって普通、名前だけの見掛け倒しじゃないの!? なんだよこれ、本当に⚪︎⚪︎コ・デラックスが頼みそうなやつが来たじゃん!」
あまりのデカさに一瞬気圧された関谷だったが、すぐに強がりのテンションを強引に立て直すと、大きな口を叩いてみせた。そして、困惑する桜の顔を覗き込み、ニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「でもまあ、せっかくだし楽しもうぜ! 桜ちゃん、せっかくだから食べさせ合いっこしよう!」
「う、うん……」
引いているのを必死に隠しながら、桜は生返事を返すのが精精だった。
関谷は自慢げにナイフとフォークを手に取ると、山盛りの生クリームと分厚い生地を強引にザクッと切り分けた。一口にしてはあまりにもボリュームのありすぎる塊をフォークで突き刺し、たっぷりと生クリームを絡めると、そのまま桜の口元へと差し出した。




