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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: ダダ太郎


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フラッシュバック

「えっと~……これ、どういう状況?」


声の主は、関谷だった。


整えられた髪を気にしながら、頭をポリポリと不機嫌そうにかき、目の前の感動的な抱擁シーンについていけない様子で尋ねてくる。


文化祭のあの出来事以来、俺の中で関谷に対する不信感と苛立ちはずっとくすぶり続けていた。


今すぐ胸倉を掴んで問い詰めたい衝動すらあったが、ここで感情を爆発させれば作戦がすべて台無しになる。


俺はこの場では努めて冷静を保ち、感情を押し殺した声で返した。


「まあ……仲直りの儀式みたいなもんだ……」


「ふーん……。まあ、女子同士の友情ってやつ? よく分かんねぇけど」


関谷は白々しく肩をすくめると、つまらなそうに鼻を鳴らした。


桜と郁美の涙もすっかり引いて落ち着いたところで、俺たちは早速、最初の目的地である駅近くのパンケーキ屋へと足を運んだ。


お洒落で甘い香りが漂う店内に案内され、4人掛けのボックス席に着く。


位置関係としては、俺の向かいに桜、郁美の向かいに関谷という配置だ。


店員から手渡されたメニュー表を開くと、カラフルで美味しそうな写真がずらりと並んでいた。


すると早速、関谷が目ざとくページの一角を指差し、身を乗り出してきた。


「おい見ろよ! 『恋するふたりの☆カップル割デラックスパンケーキ』だってよ!


2人用で安くなってるし、今の俺たちにピッタリじゃねーか!」


関谷は自慢げにニヤリと笑い、俺と郁美に向かって「お前らもこれ頼めば?」と上から目線で提案してきた。


だが——関谷はこのデラックスパンケーキの裏に隠された、あまりにも狂暴なボリュームを知らないのだ。


俺と郁美は、メニューに載っているその可愛らしい写真を見た瞬間、同時にピクッと頬を引きつらせた。


脳裏にフラッシュバックするのは、昨日の昼下がり。


ふわふわした見た目とは裏腹に、口の中の水分を容赦なく奪い去る激重の生地と、胃袋を破壊しにかかる圧倒的な生クリームの濁流。


あの満身創痍の死闘が鮮明に蘇ってくる。


(あんなの、二日連続で喰えるわけがない……!)


俺と郁美の間で、暗黙の視線が交錯する。


昨日あんなに苦労して完食し、限界突破した悪夢をもう一度味わうなんて冗談じゃなかった。


「うーんと……俺はちょっと遠慮しとくよ。


普通のシンプルなやつで十分かな。


ちっちゃいヤツ、可能な限りちっちゃいやつで。」


俺が冷や汗を拭いながら引き気味に断ると、隣の郁美も引きつった笑顔を必死につくりながら、ブンブンと小さく首を横に振った。


「わ、私もいいかな……!


今日はあっさりしたフルーツ乗ってる小さいやつにしたい気分だから……」


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