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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: ダダ太郎


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本心

「うん……!」


俺の言葉が終わるか終わらないかのうちに、郁美は弾かれたように弾みをつけ、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。


華奢な両腕が背中に回され、思い切りギュッと抱きすくめられる。


「うおっ……!?」


唐突な郁美の大胆な行動に俺はごたつき、後ろへよろけそうになる体を必死に踏みとどまらせながらも、倒れないようとっさに彼女の細い肩と背中を受け止めた。


パジャマ越しにダイレクトに伝わってくる、郁美の柔らかく小さく温かな体温。


鼻腔をくすぐる、お風呂上がりの甘いシャンプーの香り。


そして、俺の胸板に押し当てられた彼女の胸元から、トクトクと少し早いテンポで刻まれる小さな鼓動。


「……これは私の本当の気持ち……本心……だよ」


耳元で、かすかに震える小さな声が紡がれる。


一瞬の刹那のような、あるいは時が完全に止まってしまったかのように永遠の時間が流れたような——胸を突く強烈な衝撃が、俺の全身を駆け巡った。


桜への割り切れない想いも、明日控えた作戦の緊張感も、すべてが真っ白に吹き飛んでいく。


しかし、その激しい衝撃は、俺の胸元に確かな熱と余韻だけを残し、郁美がすっと体を離したことで淡く儚げに消えてしまった。


「ふふ……! じゃ、今日はもう明日に備えて寝よっか!」


パッと離れた郁美は、真っ赤になった顔を隠すようにへへっと悪戯っぽく笑ってみせた。


照れ隠しだと分かってはいても、抱擁の後のこの流れからのそんな言葉に、俺は心臓が口から飛び出そうなほどドキリと跳ね上がってしまう。


もちろん、そんな俺の狼狽を余所に何か特別なことが起こる訳もなく。


俺は真っ赤になった顔を誤魔化すように「お、おう!」と短く返事をし、逃げるように自室へと向かった。


郁美も借りている両親の部屋のドアに手をかけ、振り返って小さく手を振った。


「おやすみ、達也くん」


「……おやすみ、郁美」


静かにドアが閉まり、廊下に静寂が戻る。


自室の布団に潜り込んでも、胸に残る郁美の体温と甘い香りがいつまでも消えず、俺はしばらくの間、天井を見つめながら激しい鼓動を静めるのに苦労することとなった。


◇ ◆ ◇


**【裏掲示板:関東エリア雑談・依頼スレッド】**


**1:名無し**


【急募】12/25 多摩センター付近 男1人をボコる簡単な仕事【報酬3万】


明日(25日)の夜、多摩センターで指定する男を1人痛めつけるだけの簡単な仕事。


男を潰すだけでいい。


**2:Yuma**


3万か。乗った。


男をボコればいいんだな?


**3:名無し**


そうだ。


合図を出したら襲いかかれ。


俺がヒーローぶって止めるフリをするから、適当に合わせて引き上げろ。


詳細は直に送る。


◇ ◆ ◇


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