デラックスパンケーキ
「あ、はい。
まだ入れますか?」
「ええ、ちょうど奥のテーブル席がひとつ空いております。
どうぞこちらへ!」
店員さんの案内に続いて店内へ踏み込みながら、俺はぐるりと店内を見渡した。
カップルや女子高生で店内はほぼ満席状態。
内装もかなりオシャレで映える店だ。
なるほど人気店というのも頷ける。
「よかった!
これは明日はもう少し早めに来ないと席ないかもな……」
店員さんに案内されるまま店内奥の二人用のテーブル席へと向かい、俺たちはそれぞれ荷物を置いて向かい合わせに腰を下ろした。
席に着いたことで、店に入るまで繋いでいた手が自然と離れる。
パッと顔を上げると、そこには顔を林檎みたいに真っ赤にし、ジト目を向けながら何やらごにょごにょと小言を漏らしている郁美の姿があった。
「も、も〜……
達也くんってば、そういう所あるよね……」
テーブルの向かい側から、郁美がぽつりと小さく呟いた。
「ん?
何か言ったか?」
「な、なんでもないっ!
は、早くメニュー決めよ!
達也くん『お腹空いて倒れそう』なんでしょっ!?」
ぷいっと顔を背けながらも、テーブルの上で繋いでいた方の自分の指先をもじもじと捏ねくり回している郁美。
あからさまな気遣いと不意打ちのスキンシップに対する甘酸っぱい照れ隠しの抵抗だった。
そんな可愛らしい反応に、俺は思わず口元を緩めながら、改めて開いたメニュー表へと視線を落とした。
「お、こういうパンケーキ屋ってあんまきたことなかったけど、結構いろんな種類のパンケーキがあるんだな」
ずらりと並んだメニューの写真を眺めながら、俺は素直な感嘆の声を漏らした。
定番のメープルシロップから、抹茶やチョコレート、さらには甘くない食事系のエッグベネディクト風パンケーキまで、想像以上のバリエーションだ。
さっきまで照れてそっぽを向いていた郁美も、俺が開いたメニュー表を見た途端、パッと顔を輝かせて乗り込んできた。
さっきの照れ隠しはどこへやら、一瞬で目の色をキラキラと輝かせている。
「ほ、本当だね!
どれもすごく美味しそう〜!」
少女のように瞳を躍らせながら、郁美が身を乗り出してメニューのページを一緒にめくっていく。
そのままページをめくっていくと、見開きの中央にドカンと大きく掲載された、一際目を引く限定メニューが目に飛び込んできた。
『恋するふたりの☆カップル割デラックスパンケーキ』
色鮮やかな大皿の上に、極厚のフワフワパンケーキが3枚も重ねられている。
その周囲を埋め尽くすのは、溢れんばかりの真っ赤な甘酸っぱい苺、大粒のブルーベリー、そして山盛りのホイップクリームと香ばしいナッツ。
仕上げにたっぷりのシロップがトロリと回しかけられ、写真からでも甘い香りが漂ってきそうな圧巻の豪華さだ。




