ダブルデート
「そんな桜ちゃんが、関谷くんと付き合うなんて……絶対におかしい。私、何か裏があると思う」
「裏って……でも、俺は桜を傷つけて、嫌われて当然のことをしたんだ。
そこに優しい言葉をかけてくる男がいたら、桜だってなびいたっておかしくないんじゃないか」
「でも、それって本当に今の桜ちゃんの本心なのかな。
桜ちゃん、今は気持ちが弱くなってるから、ああいう感じになっちゃってるだけなんじゃないかな。
だから……」
郁美は顔を上げ、決意を秘めた瞳で俺を見た。
「明後日、クリスマスでしょ。
そこで、桜ちゃんの本当の気持ちを聞き出そう」
「クリスマスに……どうやって?」
「私、呪いにかかっていた時期に、関谷くんとLIMEを交換してたの。
だから……『クリスマス、ダブルデートしよう』って誘うのはどうかな?」
「ダ、ダブルデート!?」
思わず大きな声が出た。
「うん。
私の記憶が正しければ、関谷くん、本当はずっと前から桜ちゃんのことが本気で気になってたみたい。
だから、私が『ダブルデート』って誘えば、きっと喜んで桜ちゃんを連れて来てくれるはずだよ」
「当日は、桜ちゃんたちがカップルみたいにしてるのを見るのは、達也くんもモヤモヤするかもしれないけど……。
私が折を見て、上手く関谷くんを連れ出して、2人きりになるように誘導するから」
「……!」
「その隙に、達也くんは桜ちゃんと2人になって、本当の気持ちを聞き出してみて」
郁美の提案は、大胆な作戦だった。
だが、桜とちゃんと言葉を交わして説明するために、俺はこのダブルデートに懸けるしかない。
「わかった……。
頼めるか、郁美」
「うん。
私、桜ちゃんにしたことの罪滅ぼしというか……少しでも桜ちゃんを助けるために、絶対にやり遂げるから」
真剣な表情で力強く頷く郁美を見て、俺はふと、あることに気がついた。
「……それはそうとさ」
「え?」
「郁美、吃音……治ったよな?」
「あ……っ!」
俺に指摘されて初めて自覚したのか、郁美はカァーッと顔を真っ赤にした。
両手で熱を持った頬を覆い、恥ずかしそうに視線を泳がせる。
「そ、それは……その……」
「なんだよ、治ったならいいことじゃないのか?」
「ち、違うの!
私……本当に心を許した人には、こうならないっていうか、その……普通に話せるから……っ」
照れ隠しのように言い訳をした後、郁美は少しだけ唇を尖らせて、拗ねたような上目遣いで俺を睨んできた。
「もう……達也くんの意地悪」
「あー……そっか、ごめん!」
すっかり元の自分を取り戻した郁美の反応に、俺は思わず笑みをこぼした。
ずっと張り詰めていた空気がふっと緩み、深夜のリビングに少しだけ和んだ温かい時間が流れる。




