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視線
あれほどの圧をかけていた連中が、
今や目も合わせられずにモゴモゴしている。
「あ、あー……やっべ、学食行かないと」
「お、俺も飲み物買いに行こー……」
誰かがそう言い出したのを皮切りに、
まるで合図でもあったかのように、
全員が一斉に散り始めた。
ついさっきまでの“結束”が嘘のように、
各々が適当な理由をつけて、
教室から逃げていく。
……なんなんだ、あいつら。
一瞬で静まり返った空間に、
さっきまでの喧騒の残滓だけが妙に浮いていた。
俺は小さく息を吐き、
椅子から立ち上がる。
弁当は持ってきていないし、
俺もとりあえず、
学食に行くか。
そう思って、
みんなの流れに乗るように歩き出した。
「たーつーやくん!」
弾んだ声と同時に、
ぐいっと手を引かれたかと思うと、
郁美がそのまま、
胸に飛び込んできた。
「お、おい……」
軽くよろめいた俺の周囲で、
クラスがざわつく。
視線が一斉に集まるのがわかる。




