第7話
X(旧Twitter)ヤッテマス
@towachi315
「――前線要員、だって?」
指揮官の冷酷な宣告に、僕は思わず声を裏返らせかけた。
鉄格子の外、薄暗い通路に立つ初老の軍人は、薄気味悪いほど落ち着いた足取りで一歩近づいてくる。
その胸元には、この時代の国連軍における高い階級章が鈍く光っていた。
「そうだ。我が軍のシステムは、あの狂ったガキのせいで使い物にならなくなった。だがな、敵対勢力との戦いは待ってくれない。兵力は常に不足している」
「だからって、僕たちを兵隊として前線に放り出す気かい? 見てよ、僕たちはただの学生だ。銃の持ち方すら知らないんだぞ!」
僕は必死に声を張り上げた。 クラスメイトたちが後ろでブルブルと震えているのが背中越しに伝わってくる。ここで妥協したら、僕たちの青春は文字通り戦場の肥やしになってしまう。週末の女装も、新作コスメも、すべてが泡と消える。絶対に避けなければならない。
「ふん。銃など使わせんよ。お前たちには歩兵ではなく『カタシロ』に乗ってもらう」
「カタシロ……?」
初めて耳にするその名称に、僕は眉をひそめた。 脳裏に浮かぶのは、さっきから上空の荒野を飛び交っている、あの不気味な古代の機動兵器だ。
「そうだ。この時代の主力兵器であり、操縦者の精神力と身体能力を極限まで要求する生体機動兵器だ。だが安心しろ、搭乗前には『ヒトガタ』と呼ばれる生体強化インナーを着用してもらう。これさえあれば、素人だろうが無理やり肉体と神経を接続し、動かせるように調律される」
「それって、つまり……!」
「ああ、拒否権はない。スパイとして処罰されるか、それとも最前線に立って兵器の盾になるか。選ぶ権利はお前たちにはないんだよ」
指揮官は冷たくそう言い放つと、背後の兵士たちに手で合図を送った。 ガシャン、と重い音を立てて収容施設の扉が完全に開放される。逃げ場は、もうどこにもなかった。
(冗談じゃない……! あのクソみたいなロボットに乗せられて、あんな殺伐とした戦場に出ろって言うのか!?)
歯を食いしばる僕の横で、クラスメイトのひとりが恐怖のあまりへたり込んでしまう。 冷や汗が背中を伝う。けれど、ここで絶望している暇はない。不破があのめちゃくちゃな暴走で本部を引っ掻き回してくれたおかげで、僕たちには「生き残るための最低限の足がかり(たとえそれが最悪の棺桶だとしても)」が与えられたのだ。
「……わかったよ」
僕は深呼吸をひとつし、震える声をできる限り押し殺して、精一杯の冷徹な笑みを作ってみせた。
「ただし、僕たちが生き残るための最低限の整備と、部隊としての指示権はもらう。……やるからには、絶対にあんなスクラップみたいな機体で死んでやるもんか」
エリートとしての意地と、乙女の執念を胸の奥に秘め、僕は最悪の戦場へと足を踏み出す決意を固めたのだった。
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