第29話
ガガガ……ガッ……!
中枢回路を焼き尽くす痺れ薬散布型電磁パルスが、我が部隊の神経系をなす全ケーブルを容赦なく麻痺させていく。
機体の性能差だけを見れば、あのような烏合の衆など一蹴して然るべきだったのだ。
だが、連中が持ち得たのは「圧倒的な立ち回り」のみ。それ一点だけで、我が軍の巨獣たちは翻弄されていた。
「……バカな。遠くからの砲撃だとっ、我が軍の方が圧倒的に優位たったはず……!たかが砲撃だけで部隊が全滅するのか!?」
我が部隊の副指揮官機、そのコックピットでベテランパイロットであったはずの私は冷汗を拭うことも忘れてモニターにしがみついた。
敵の機体性能は我々に及ばない。だが、その劣ったスペックを補って余りある緻密な連携、死角を突く位置取り、砲撃による敵の完全なる足止め、そしてその隙を狙うかのような正確に突いてくる動線が、新米パイロットの響達を戦場の英雄へと昇華させ、敵を完全に無効化していたのだ。
視界の端で、我が部隊の精鋭である重装甲型が、内部から噴き上がったスパークと共に次々と崩れ落ちていく。
外殻の装甲がどれほど頑丈であっても、その装甲の継ぎ目という『弱点』を突かれては意味がない。
音もなく我が機体の背後に回り込んだ「影」が、高周波の刃でエネルギーケーブルを両断した瞬間、冷徹な死の予感が背筋を駆け抜けた。
「見えない……! 敵はどこだ……!」
センサーは敵の正確な位置を捉えきれない。
後方で我が軍の動静を値踏みし、冷酷な実験のデータとして消費している狂気の技術者。
そして、そのオモチャの上で、、、いやアンネローゼの手のひらの上で完璧に死の舞踏を踊る影の刺客。
物量と経験の優位性に胡乱をかいていた我々は、相手の圧倒的な立ち回りと戦術眼の前に、ただの『標的』へと成り下がっていたのだ。
制御を失った巨躯が、重力に引かれて砂塵へと沈んでいく。
崩壊していく部隊の断末魔を背に、私の視界は漆黒の闇へと沈み込んでいった。




