第27話
X(旧Twitter)ヤッテマス
@towachi315
「ふうん、来るんだ……巨大な鉄の塊が、わざわざ私たちの実験台になりにね」
アンネローゼは金髪のツインテールを軽やかに揺らし、モニタールームのガラスに手を当てて人形のようにあどけない笑みを浮かべた。しかし、その青い瞳の奥に宿るのは、獲物を品定めするような冷酷な獣の目そのものである。
背後では、車椅子に乗った院庄麗華が涼しげな笑みを浮かべ、その傍らで執事の兵藤兼丸が物音一つ立てずに静かに控えていた。
麗華たちの近くには、先ほどの戦闘でバレルを酷使した神子と、呆れたように腕を組む科学部部長の新島孝介、そして数名の科学部員たちがそれぞれの端末を忙しなく叩いている。
アンネローゼはクルリと身を翻し、新島たちのほうへと歩み寄ると、甘えるような仕草を見せながらその顔を覗き込んだ。
「ねえ、科学部の皆さん。せっかく用意してあげたオーバーチューン仕様のモジュール、あんな乱暴に扱われたら私の可愛いカタシロちゃんたちが泣いちゃうわ。
でも――今から来る重装甲型なら、新しい『痺れ薬散布型パルス弾』の耐久テストにちょうどいいかもしれないわね?」
「……勝手に機体のプログラムを改造しないでくれよ、アンネローゼ。こっちの計算が狂うだろうが」
新島が冷や汗を拭いながら苦言を呈すが、アンネローゼはコロコロと鈴を転がすような可愛らしい声で笑う。
「文句を言わないの、新島くん。あなたたちの作った回路、少しだけ私の手で『改良』して直してあげたんだから、感謝こそされても文句を言われる筋合いはないわ」
そう言い放つ彼女の圧倒的な技術的自信と狂気じみた興奮が、室内の緊迫感をさらに引き締めていく。
敵の巨体が防壁に迫り、地響きが足元から伝わってくる中、部屋の隅の暗がりから、静かで冷徹な声が割り込んだ。
「……騒がしいな。だが、敵の動きに無駄な澱みはない。正面から迎撃するだけでは、こちらの消耗が大きすぎる」
一言そう呟いて闇の中から姿を現したのは、謎多き男子学生――影山忍だった。
実家に伝わる忍者としての訓練を積んできた彼は、誰よりも早く敵の布陣の綻びを見抜いていた。
影山は鋭い眼差しでモニターを見据え、アンネローゼと麗華に視線を向けた。
「アンネローゼ、その特製の痺れ薬とやらは、いつ発動できる? 奴らの足を一瞬でも止められるなら、俺が死角から懐に潜り込み、指揮系統の要を直接断ち切ってくる」
「あら、頼もしいこと。いいわよ、影山くん。私の可愛いオモチャでしっかり動きを縛ってあげるから、心置きなく使い物にならなくしてきなさい」
アンネローゼは妖しく微笑み、スイッチに指をかける。
試練を免れた異才たちが、それぞれの思惑と危険な才能を武器に、迫り来る圧倒的な絶望へと牙を剥こうとしていた。
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