第22話
X(旧Twitter)ヤッテマス
@towachi315
――連合軍の統制されたネットワークから強奪した端末のデータも、あの空を覆う「謎の正八面体」の正体を暴くには決定的に欠けていた。
要塞の最深部、無数の機密が眠るサーバーを解析した不破は、画面に映し出された不自然なまでの「空白」を見て、酷く退屈そうに鼻を鳴らした。
「……んだよ。これだけ大層なデータを抱えてやがるのに、あの忌々しい浮遊物については軍の連中も一文字も掴めてねぇってのか。あいつらも俺と同じで、何もわかっちゃいねぇってわけだ」
軍の管理下にある地図や情報網では、正八面体の核心には到底たどり着けない。
ならば、あの空に現れた正八面体がどこから来たのか、その痕跡を探すためには、組織の検閲も届かない完全な未踏破区域に眠る古い遺跡をしらみつぶしに洗うしかなかった。
不破は自らの直感だけを頼りに、その禁忌の領域へと単身で針路を定めた。
そして、彼が軍の防衛網を文字通り引き裂き、敵味方関係なく暴虐の限りを尽くして境界線の外へ走り去ったその数時間後。
彼の残した巨大な穴から、手ぐすねを引いていた敵の主力部隊が、響たちのいる本拠地へと雪崩れ込んでいた。
――閑話休題
不破が目指した未踏破区域の深部。そこには、軍のレーダーすら捉えられない、かつての時代が遺した巨大な地下遺跡が沈んでいた。
石壁に刻まれた古い壁画や、幾層にも重なる金属の地層。そこを探索する不破の足音が、だだっ広い古代のホールに乾いた反響を残す。
だが、彼が目撃したのは、栄華の跡地でありながら、決定的な違和感だった。
広大なホールを取り囲むのは、かつてこの地で繁栄した人間たちの営みや星々の運行を丹念に描き出した膨大な壁画群、そして歴史の節目を刻んだ巨大な石版の数々だった。
しかし、そのどこをどう探しても、現在の空を威圧するように鎮座する「あの謎の正八面体」に繋がる痕跡は、影すらなかった。
「……おいおい。どういうこった」
不破は足を止め、巨大な石版の前に立つ。
この遺跡が作られた古の時代には、あの正八面体は存在していなかった。
人類の営みが続いていたはずのどの歴史の断面を遡っても、あの宙に浮く幾何学的な脅威は影も形もなかったのだ。
それは元からこの世界にあった遺産でも、旧い時代の置き土産でもない。
――後から、まったく別の「外側」から持ち込まれた、正体不明の侵略的異物。
遺跡の冷たい空気が、不破の肌を撫でる。
軍の地図にも、古の歴史を刻んだ石版にも、その存在の痕跡すら残されていないという矛盾を突き詰めたとき、この世界が隠している本当の地獄の輪郭が、ほんのりと姿を現し始めていた。
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