第17話
X(旧Twitter)ヤッテマス
@towachi315
「――おい、全員シミュレーターから出ろ! 演習は中止だ、カタシロの実機が収容されているハッチへ走れ!!」
格納庫に響き渡ったのは、バアル教官のただならぬ形相の怒号だった。 モニターの向こうの仮想空間がガリガリとノイズに歪み、非常警報の赤色灯がけたたましく明滅する。
「なっ……! 嘘だろ、もう実戦かよっ!?」
久慈が青い顔をしてシミュレーターのシートから転げ落ちるように飛び出した。 周囲のクラスメイトたちもパニックに陥りかけているが、訓練どころの騒ぎではない。外部の防衛線を突破した敵性部隊が、すでにこの格納庫のすぐ外まで迫っているのだ。
「ぼんやり突っ立ってる暇はないぞ! 自分に割り当てられた量産型カタシロ───『アラハバキ』に乗り込め!」
バアル教官に怒鳴りつけられるようにして、僕たちはシミュレーター室から隣の本機格納庫へと走り出した。 目の前に並ぶのは、軍の主力である量産型生体戦闘兵器「アラハバキ」。特製機のような洗練さはないが、無骨で無機質な装甲を纏ったそれは、まさに使い捨ての鉄の棺桶そのものだった。
ガキィン、と重苦しい音を立てて足元のタラップが持ち上がり、僕はむき出しのコックピットハッチへ飛び乗った。 生々しい油と火薬の匂いが鼻をつく。シートに身体を叩き込み、分厚いハーネスを荒っぽく体に巻き付ける。
「くそっ……! シミュレーターと勝手が違う……!」
震える手でコンソールを叩き、バイオ・スーツのケーブルをアラハバキのメインフレームに直結させる。
『各機、生体動力炉起動! これより神経接続を実機へ切り替える!』
教官の指示と同時に、脳の奥を直接冷たい鉄の爪で引っ掻かれるような、強烈な拒絶反応と重みが脳裏を撃ち抜いた。 ぐっ、と奥歯を噛み締め、全身の血が逆流するような感覚をねじ伏せた瞬間――目の前の全天周モニターが一斉に起動した。
そこには、シミュレーターの仮想空間ではない、煙を上げる本物の格納庫と、外の荒涼とした戦場の景色がリアルタイムで映し出されていた。 量産機ゆえの荒々しいエンジンの鼓動が、ダイレクトに僕の神経を伝って全身を震わせる。
『貴様らの脳髄と神経をそのアラハバキに縫い付けた! 逃げ道はもうない、生き残りたければ動かせ!!』
ガシャアアアアン!!!!
重厚なロックが外れ、格納庫の巨大な装甲シャッターが勢いよく巻き上げられた。 外の冷たい大気と砂塵がコックピットへと流れ込み、ついに僕たちの初めての「実戦」の幕が、最悪の形で切って落とされたのだった。
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