第15話
X(旧Twitter)ヤッテマス
@towachi315
「───おい御統! ぼんやり天井を仰いでいる暇などあるか! ここから先は、貴様らが遊んでいた学校の放課後でもなければ、生ぬるいおままごとでもない! このコックピットの中で下す判断の一つ、動作の一瞬の遅れが、そのまま死へ直結する『戦場』だ。ボリス司令は貴様らガキどもに過度な期待などしておらん。……だがな、生き残りたくば、その青臭い脳髄にこの訓練の痛みを刻み込め! シミュレーター起動、神経接続開始だ!!」
耳をつんざくバアル教官の怒号とともに、薄暗いシミュレーターの全天周モニターが一斉に明かりを灯した。 次の瞬間、背筋に沿って這うバイオ・スーツの神経回路が、カタシロのメインフレームとガシリと噛み合う。
「くっ……あ、ガハッ……!?」
脳の奥を直接冷たい鉄の爪でかき混ぜられるような、強烈な拒売反応と眩暈。 しかし、それを気合でねじ伏せた瞬間、視界の景色が一変した。自分の肉体という感覚が消え失せ、代わりに数倍に拡張された巨大な鋼鉄の四肢が、まるで自分の本当の手足のように脳へ直接接続される。これが「カタシロ」――人型生体戦闘兵器のコックピット。
『同期率78%。まあ……暴走を起こして脳が焼き切れる段階は超えたな』
モニター越しに響く教官の冷ややかなアナウンスと同時に、仮想空間に古代の戦場を模した荒野が広がり、向こうから無数の敵性兵器がガリガリと足音を立てて突進してきた。
「っ……!」
反射的に操縦桿を握り、体を傾けたその瞬間。 ドスッ! と、想像を絶する衝撃が僕の全身を撃ち抜いた。
「あぐっ……!?」
仮想空間上のカタシロが敵の攻撃を掠めただけなのに、そのフィードバックはリアルタイムで僕の神経を焼いた。実際に殴られたわけでもないのに、左肩から胸元にかけて、骨が軋むような激痛と生々しい痺れが駆け巡る。
『甘い! 痛みや衝撃のダイレクトフィードバックを切っていない以上、機体が受けた傷の三分の一はそのまま貴様らの神経に跳ね返る! 避け損ねれば、死なずともショック死気分を味わうことになるぞ!』
通信越しに、バアル教官の容赦ない叱咤が飛ぶ。 隣のシミュレーターから、結衣の荒い息遣いと「うそ、これマジで痛いじゃん……!」という焦った声が聞こえてきた。
(……くそっ、ただのゲーム感覚で乗れるシロモノじゃない。こんなものを実戦で動かして、敵の弾を真正面から受けてみろ……一瞬で気絶するぞ)
だが、恐怖に呑まれている暇はない。 モニターの向こうから迫る仮想の敵が、冷酷な赤いセンサーアイをこちらに向けている。
僕は歯をくいしばり、全身を走る痛みを無視してカタシロの重い装甲を持ち上げた。 頭の中で計算し、敵の射線を予測する。この巨大な鉄の肉体を自在に操り、生き残るための最適解を導き出す――。
「動け……! 僕たちの命を繋ぐための盾になってくれよ、カタシロ!」
荒い息を吐き出しながら、僕は初めての鉄の棺桶を前へと踏み出させたのだった。
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