調査を開始する 3
「何か分かったら、リドリー・フォートに用があるときみたいに、<雄羊亭>にことづければいいんだね? おまえ宛にすればいいのかい?」
「どっちでもいいよ。フォート兄弟へ、でもいいし」
「リドリー・フォートは忙しいのかい? おまえみたいな子供をこんな場所に来させるなんて、いかがなもんかね」
「僕はもう14だ、言うほど子供じゃないよ。リドリーが忙しいから僕が来たっていうのは当たっているけどね。それに、誰かに絡まれたとしても、リーサさんの店に行くと言えばこのへんの怖いお兄さんたちだって手を出してはこないでしょ」
「それを見越しておまえをよこしたのか。大胆なことだ」
リーサが苦笑した。
リーサがこの界隈で有名なのは、この地区を仕切っている顔役のひとり、シドという男の養母であることが周知されているからだ。シドが孤児だった自分を拾い上げて育ててくれたリーサを大切にしているのは有名な話で、一人前になるとこうしてリーサに店を与えて商売を始めさせた。物騒なマドロン地区で女ひとりの商売が成り立っているのは、シドが怖くて誰もリーサには手を出さないからだ。
「リーサさんならもしかしてこういう細工を扱う職人にもつてがあるかもしれないから、念のために言っておくんだけど、もしかして、そういう工房に持ち込まれて、もう石と台がばらばらにされちゃっているかもしれないよね。ほらこの石、丸いカットの紫水晶はちょっと珍しいから、見たら覚えている人も多いと思う。そういう情報でもいいから、聞きつけたら教えて?」
「ああ。金払いは良さそうな客なのかい?」
「うん。間違いなく、良さそうだ。金は惜しまないと言っていた」
ルーシェリアは断言した。けちな貴族も多いが、ハーディスはいつもちゃんと支払ってくれたし、ティリアンもおそらくそんなところではした金を惜しむ性格ではないだろう。
「なら、あたしもぜひ一枚噛ませてもらいたいもんだね。何か分かったら教えるよ」
「リーサさんの情報網を一番あてにしてるんだ。頼むね」
ルーシェリアはにっこりと微笑んだ。リーサが苦笑する。
「情報屋はおまえたちのほうだろう。あたしをあてにしてどうするのさ」
「誰に何を聞けばいいのか分かってるってのが、情報屋なんだよ。僕たち本人が何でも知ってるわけがないんだから」
「そりゃそうか。一本取られたね」
楽しそうに笑ったリーサが、「まだ時間はあるのかい? よかったら、お茶でも飲んでおいきよ」と腰を上げた。いいの? とルーシェリアは瞳を輝かせる。
「どうせおなかをすかせてるんだろ。何か出してあげよう。おまえくらいの年頃の男の子ってのは、いつも何か食べたがってるものだからね」
「わあ、ありがとう! 食べ物は大好きだよ!」
「当たり前さね。さて、ちょっと待ってておくれ。用意してくるから」
「うん。じゃあ、お店の中を見て待ってるね」
ルーシェリアはうきうきと椅子から降りた。そのまま薄暗い店をぶらぶらと見て回る。うっすらと埃をかぶった品物たちがひっそりと誰かに買われるのを待っていた。
恋愛ジャンルであるはずなのに、今のところちっとも恋愛展開にいたっていませんが、序盤は完全に無糖です……どうぞご容赦ください。
物語の進行につれてしだいに微糖になり、中盤以降はかなり甘さたっぷりになる予定なので、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。




