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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
番外編2

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貴方と話をする

 時系列的には、6章後です。


 ・-・-・-・-・-・-・


 目を開けると、私は知らない場所にいた。周りを見渡しても全く見たことのない場所ばかりで、ここがどこだか見当もつかない。それどころか、もしかしたらここは私の知っている日本じゃないかもしれなかった。

 だって、通り過ぎていく人たちの服がとても古めかしいのだ。


「お母ちゃん、お腹空いたよう」

「我慢すろ。みんな我慢すったなだ」


 泣いた子どもの手を引きづっていく。言葉遣いも含めて、とても現代の日本の光景とは思えない。街にある看板だって素朴なものばかりだ。

 もしかして私は昔の日本にタイムスリップしてしまったのかもしれない。

 途端に不安になった。周りを見ても誰も頼れる人がいなくて、心細くなる。どうしたらいいか分からなくて、泣きそうだ。


「お嬢さん、大丈夫ですか?」


 知らない声がして振り返と、青年がいた。

 青年に見覚えはない。黒髪で、男性にしては少し背が低くて、歳は私よりも少し上ぐらいに見える。無表情に見えるが、私を見る目はどこか心配そうだった。――守里咲。なぜか、黄色い妖精が頭に思い浮かぶ。きっと雰囲気が似通っているせいだろう。軍服に無表情だったら怖いはずなのに、不思議と怖くない。


「あの……」

「は、はい!」


 青年が困った顔をしたので、慌てて返事をする。


「大丈夫そうなら、別にいいんですけども」

「えっと、こ、困ってます!」


 立ち去ろうとする青年の手首を反射的に掴む。青年が呆気にとられた様子で私を見た。驚かせてしまって申し訳ないと思うが、きっとさらに困らせることをこれから


「ただ、その……」


 いつもよりもすらすらと言葉が出てきた。青年が守里さんに似ているから緊張しないで話せる。

 ふと、青年の名前を聞いていないことに気付いた。


「あの、お名前を聞いてもいいですか?」

「俺の名前ですか。えっと、――」


 青年が教えてくれる。しかし、何故かノイズがあっていて聞き取れない。困っている私をよそに、青年は大事なものを紹介するように教えてくれる。


「大事なものを守れるようにと母がつけてくれたもので、俺自身も気に入っているんです。……野に咲く綺麗な花をも大事にできるような、そんな人に俺はなりたいんです」

「……ふふっ、らしいですね」

「そうですか?」


 青年が不思議そうに私を見る。会ったこともない人に、らしいだなんて、まるで知ったような口を利いてしまった。私は慌てて訂正する。


「あ、あの、知っている人に似ていたのでつい……。その人も、私や友達をいつも見守ってくれているんです」


 脳裏に浮かぶのは守里さんの顔。温かい目でいつも私たちを見守ってくれる。ちょっと温かすぎる目をしているときもあるけど、でも守里さんが私たちをちゃんと見守ってくれること自体が私は嬉しいのだ。


「お友達と仲が良いんですね」

「はい! みんな、優しいんです。いつも見守ってくれる人だけじゃなく、親友の怜奈も私のことを心配して声を掛けてくれるんです。そのことはずっと小さい頃から一緒だったから、一緒にいるだけで楽しくて――」


 そこまで喋って、私ははっとする。私ばっかりが一方的に喋ってしまった。


「すみません、私の話ばっかりして……」


 ちらっと青年の顔を見る。青年は怒るどころか、むしろ。


「大丈夫です。もっと聞かせてください。」

「え? えっと……」

「……困らせてすみません。深く聞きすぎました」


 偶然かもしれないけど、私と怜奈の話を聞きたがるところも守里さんとそっくりだ。私は思わず笑うと、青年は恥ずかしそうに帽子を深く被る。可愛らしい仕草に、私はまた小さく笑った。


「平和なことは、尊いと思うんです。誰かと仲良くできるってまさに平和でないとできないと思うからつい聞きたくなってしまっただけで、そんなに深い意味はないというか――」

「だ、大丈夫ですよ」


 青年が早口で言い訳を並べる。焦った時の癖も守里さんにそっくりで、笑みが零れた。


 ――ああ、この人ともっと話していたいな。


 そう思った次の瞬間、視界が歪む。


「日和さん!」


 青年の声が聞こえる。――あれ。私、名前を教えたっけ? 浮かんだ疑問に深く考える暇もなく、私の意識は途切れた。




 目を覚ましたら、私は自分の部屋のベッドの上にいた。

 先程まで話していた青年はまるで幻想だったかのようにどこにもいない。あの夢は


 もっと、あの青年と話していたかったのに。名残惜しい気持ちが胸いっぱいに広がる。けれどきっともう会うことはないのだろう。


 私は携帯を取り出して、連絡先から守里さんの名前を探す。

 何故だか今は、守里さんの声が聞きたくなった。

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