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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
06.四人目の魔法少女

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第49話 これはチャンスなんだ

「妖精たちは元々、日本で起こった戦争により死んだ人間である。そして平和を諦めきれなかった亡霊が、ドリーム・アウトによって妖精として蘇った。我がボスとなる前の先代は、妖精国にいる妖精たちと違う思想を持ち、やり方に反発した者たちの一人だ」


 誰もいなくなったアジトで、ボスは話をしてくれた。


「……なんで、ころねにその話をするの?」

「最初に生まれた妖精たちが戦争で死ぬ前の、人間の時の記憶を持っているから思想がぶつかり、反発し、妖精国を出て(ヴィラン)と相対した。いわゆる、我らと同じポジションの者だな」

「ころねたちと同じ……?」

「ああ。その後、敵となる輩が生まれないように、ドリーム・アウトには細工がされた。それからは生前の記憶を持った妖精は生まれなくなったのだよ」


 ボスは得意げに語る。だけどもころねは興味が湧かない。ころねはそんなことが知りたくてボスに聞いたわけじゃないから。


「それで、なんでころねにその話をするの?」

「……ころね、貴様は我らが生み出した存在とはいえ、生まれるまでの過程は妖精と同じだ」


 ころねは首を傾げる。ころねがボスに聞きたいことはそれでもじゃない。そもそも、ころねにその話をして、ころねにどんな反応を期待しているのかが分からなかった。

 悲しめばいいのか、恨めばいいのか、何をしたらいいかが分からない。疲れた心には、ボスの話は毒にも薬にもなってくれない。


「だから、ええとだな……ころねには今生を楽しんでほしいということだ」


 ボスは困ったように教えてくれる。どうしてその話が今の答えに繋がるのか、ころねには分からない。ただ、ボスが言いたいことがようやく分かってすっきりした。


「お前は、我らが妖精たちから盗んだドリーム・アウトより生み出されし異端児よ。ただ、|意図せず得た舞い込んだ幸運チャンスを生かせばいいのだ」

「分かった」


 よく分かってないけど、きっとさっきと同じことをいってるのだろう。なんで改めて難しい言葉に言い直したのかは分からないけど、言いたいことは分かったので深くは聞かないことにする。


 ボスは黒い魔法のステッキを振る。光に包まれて人間の姿に戻った。ボスからこうすけの姿に戻ったのを見て、ころねはふと不思議に思ったことがある。


「こうすけは、どうして妖精のふりをするの?」


 こうすけは目を見開いた。聞かれると思っていなかったのかもしれない。考えているような間が空いた。


「……人間が改革者の先導者(ボス)では、頼りないだろうからな」

「こうすけはすごいよ」

「ありがとう、ころね。けれど、そういうことではない。人間ではない存在に希望を見出す者もいるということだ」


 分かるような、分からないような……。ころねには分からない話かもしれない。だって、ころね自身が普通の人間じゃないから。


「李依奈お姉ちゃんや久美子お姉ちゃんには、人間だって教えないの?」

「ああ。ぼくは教えるつもりはないよ」

「ずっと妖精だって嘘を吐くの?」


 せっかく一緒にいる仲間なのに、嘘を吐き続けなきゃいけないというのは辛いことなんじゃないだろうか。ころねはそう思うけど、こうすけは首を横に振った。


「同じ目標を志す仲間とて、全てを互いにさらけ出す必要はないさ」


 こうすけはころねを見て、ふっと微笑んだ。


「我は、妖精だと偽っている今を生きる人間(ペテン師)なり。ボスとは、戦う者とは、常に孤独なものよ。それでも進まねばならない時もあるものだ」


 人間の姿のまま、妖精姿のボスの時のような口調で告げた。

 ぽかんとボスのようなこうすけを眺めていると、ふとこうすけがころねの頭を撫でた。


「ころね、一つ教えるよ。ぼくはまだ模索しているんだ。この世界で生きる身でありながら、『妖精に生まれ変わる方法はないか』をね。そのために、狭間で揺蕩うぼくの身に何かあったら、と悲しむ人は遠ざけた」

「どうして、そこまでするの……?」

「ぼくの行動に、それだけの価値があると思ったからだ。全てを捨ててでも欲しいものが、ぼくにはある」


 ころねには分からない。全てを捨ててまでやりたいことなんて、ころねにはないから。それに、こうすけの言っていることが全部本心だと思えなかった。だって、こうすけの顔がすごく寂しそうだったから。


「こうすけ、本当に後悔してないの……?」


 こうすけは返事をしない。答える気がないのか、わざとらしく咳込んだ。


「ぼくのことはいいんだ」


 しゃがんでころねに目線を合わせる。


「まずは己の身を案じるがよい。一度は戦争に奪われたその命、今度こそ己のために使うことだ。周りに遠慮するな。……我慢しただけ損をする」


 こうすけは立ち上がってころねに手を差し出す。


「そろそろ帰ろう、ころね」


 ころねは手をとってこうすけをアジトを出た。




 家に一緒に帰る。やりたいことをやるといい、とこうすけはころねに言ってくれた。やりたいことなんてころねにはない。ただ、もし叶うのなら――。


「ころね、あの子に会いたい」


 こうすけに話す。戦いながらころねを守ってくれた、黄色い女の子。ころねのことを心配してくれた顔がまだ脳裏に焼き付いている。


「もしや、その子は魔法少女なのか?」

「たぶん……? ダークモンスターが出た時によく退治しに来る女の子と似ていたよ」

「……」


 こうすけは苦い顔をした。何か言いたそうにころねを見る。だけど、何も言わない。何も言わないまま、ころねから目を外した。


「……会えるといいな」


 こうすけの顔は、ころねからは見えなかった。

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