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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
06.四人目の魔法少女

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第47話 望んでいることは

 魔法少女の変身を解いて、みんなと帰路につく。


「結局月詠の一番の願いって何だったのよ」


 怜奈に言われてはっとする。そういえばあの時、ダークモンスターが現れて私と怜奈は先に退治に向かったから、結局月詠さんのお願いが何かを聞いていない。


「秘密。ちなみに咲は知っているよ」


 守里さんを見る。守里さんは頷いた。どうやら本当らしい。

 怜奈が人間姿の守里さんの肩を掴む。


「守里、月詠の秘密を教えなさいよ」

「咲、分かってるよね」


 怜奈も月詠さんも、守里さんに圧を掛ける。――なんだか仲が良いな。私一人だけ、置いていかれているみたいだ。

 違うでしょ、と自分に言い聞かせる。入っていけないのは自分が悪いのに。みんなに置いていかれた、なんて思うのがおかしいのだ。だってみんなはここにいる。


「日和、あんたもそう思うわよね!」


 急に怜奈が私を見た。話を聞いていなくて困惑する。


「えっと、何の話?」

「だから月詠の一番のお願いが何か知りたいってことよ! 日和、あんただってそう思うわよね?」

「……あ、うん」


 私は頷く。だけど、本当はそこまで思っていない。

 もちろん月詠さんがどんな願い事を一番にしていたのかは気になる。だけど、本人が話す気がないところを無理やり聞き出そうとするほどではない。

 怜奈が月詠さんの秘密を知りたがっているのを見ていると、なんとなくもやもやする。けれど、うまく言葉にできない。


「日和? 言いたいことがあるなら言いなさいよ」

「へ?」


 ドキッとする。こういう時、怜奈は鋭い。私が隠していることがあると怜奈はすぐに気付いてくれる。

 でも、自分でも何と答えたらいいのか分からない。だって、怜奈と月詠さんが仲良くしていて、嬉しいはずなのにどうしてもやもやしているか自分でも分からないから。


「えっと……怜奈、月詠さんと仲が良いなって、思っただけ」


 私は何とか笑みを浮かべて怜奈を見る。けれど怜奈は不満そうに顔をしかめた。


「他に思っていることがあるでしょ」


 私は迷う。いつもの私なら、きっと怜奈にすぐに話していた。全部私の気持ちを話して、楽になって、そして怜奈に甘えていることに自分で気づかないまま、怜奈に甘えていたと思う。けれど、それじゃだめだと今は分かっている。だからここは、自分で何とかしてみたい。

 私は首を横に振った。


「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとう」


 私は強がって笑って見せる。本当は大丈夫なんかじゃない。怜奈が月詠さんと仲良くなって、私のことなんか忘れちゃうんじゃないかって怖い気持ちがある。でも、そうやって怜奈に甘えっぱなしじゃだめなのだ。怜奈に甘えてるままでは、いつまで経っても弱い私のままだから。


「……そう」


 怜奈は落ち込んだように肩を落とす。

 話せなくてごめん。心の中で怜奈に謝る。だけど、一度くらい自分の力で解決してみないと、きっと怜奈に迷惑をかけてばかりになってしまう。それは嫌だから、今回だけは見逃してほしい。

 私は怜奈は寂しそうにしていることに見ないふりをして、前を向いた。



 ***



 草加部さんと雨宮が帰り、咲と二人きりになる。


「咲、さっきの二人の様子……覚えてる?」


 思い出すのはあの幼馴染二人の空気感。雨宮がずっとあたしに構っていたと思ったら、草加部さんのところへすぐに戻っていった。


「ああ。切なくて尊かったな」

「え?」

「何でもない。俺の主観だ。忘れてくれ」


 忘れてくれと言われて、はいそうですか、と頷けるものではない。問い詰めたところでどうせ答えを教えてくれないだろうから口には出さないが。


「それがどうかしたのか、有栖」


 咲が不思議そうに聞いてくる。咲に話して伝わるか分からない。魔法少女の妖精に、人間の機微を察して共感できる能力があるのかは甚だ疑問である。けれど、あたしには他に話を聞いてもらえる当てもない。

 諦めて、あたしは話すことにした。


「あの二人、どこまで言っても二人だけの世界って感じだよね。他の人が入る余地なんてない気がしてくる」


 あたしの居場所は、きっとあの二人のそばにはない。それでも手を伸ばしたくなるのは、あの仲の良さに混ざりたくなってしまうからだろう。二人だけが見ることができる顔を、あたしにも向けてほしくなるのだ。それが例え、純粋な友情でなかったとしても。


「ちょっと、羨ましいよね」


 怜奈の言う通り、きっと草加部さんは何かを隠していた気がする。それに、草加部さんはどこか元気がなかった。だけどそれだけで心配そうに草加部さんに近寄る雨宮の姿を見ると、思うのだ。――ああ、あたしはあそこには入れてもらえないんだなって。


「有栖は、日和とも怜奈とも仲が良いじゃないか」

「どうだろうね。仲が良いだけで、何も知らないかもよ」

「どういうことだ?」


 困ったようにあたしを見る咲に、くすっと笑う。


「あたしは、咲が一番話しやすいってこと」

「……ありがとう?」


 お礼を言われて、思わず噴き出した。今度は作った笑みじゃなく、本当の笑みが零れた。

 咲が人間だったら良かったのに。そう思ってから、それを否定する。きっと、あたしは誰かに心を開くのは苦手なのかもしれない。人間とは何の関係もない咲だから、話すことができるのかも。そう思ってしまった自分に、少しだけ悲しくなった。


「あ~あ、あたしにも草加部さんと雨宮みたいな関係を築ける友達が欲しいな」


 あたしの言葉に、咲は何も言わなかった。何も言えなかったのかもしれない。何か言いたそうにあたしを見て、結局何も言わずに困った顔をしていた。それだけで、あたしは十分満足だった。


 夕日を見つめる。本を読んでいると、夕日はたいてい何かが終わる象徴として扱われることがある。

 あたしの苦悩も、終わる日がやってくるのかな。心の中で夕日に話しかけてみる。

 夕日に聞いても答えなんか返ってこない。それが分かっていても、今、あたしは何かに縋っていたかった。

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