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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
06.四人目の魔法少女

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第45話 悪者ばっかり

 今日はお休みという日らしい。いつもは夕方になるとアジトにやってくるお姉ちゃんたちが、朝からアジトに来ていた。ころねは怖くてボスのそばを離れられない。


「ボス、ころねをウチによこして」

「デラヴィ。ころねは物ではない。心ある子羊なのだ。人の前に立ち、先導する心づもりならもっと振る舞いを考えるがよい」

「何言ってるか分かんないですって」


 ボスの後ろに隠れるころねを、李依奈お姉ちゃんは睨んでくる。

 ――怖い。逆らったら何をされるか分からない。でも、今日はボスが守ってくれるって言った。だから今日はアジトに来れた。

 李依奈お姉ちゃんがため息を吐いて、ころねに手を差し出す。


「ころね、おいで」

「行かなくていいぞ」

「ボスは黙っててください。ころね、そのままでいいって本当に思ってるの?」


 李依奈お姉ちゃんがころねを睨む。怖い。呼吸が苦しくなる。

 ころね、どうしたらいいの……?


「ころね」


 ボスの声がした。そして顔にもふっとしたものがくっついて目の前が真っ暗になる。ボスが抱きしめてくれたみたい。


「ボス。これからウチ、ダークモンスターを生成しにいくからころねを連れて行きたいんですけど」

「ダメだ。これはボス命令だからな。ころねを連れて行くな」

「それだとウチ、今から外に出られないんだけど」

「アタシが行くよ、李依奈様」


 久美子お姉ちゃんの声が聞こえた。ころねはボスを顔からとって抱っこする。李依奈お姉ちゃんがため息を吐いて、肩に腕を回す久美子お姉ちゃんを見た。


「何ですか、急に。大上先輩は引っ込んでいてください」

「冷たいじゃないか、李依奈様。少しはアタシを頼ってくれよ。ここ最近ずっと動いて疲れただろう? 李依奈様がころねを口説けるまで、アタシが時間稼いできてもいいよ」


 珍しく久美子お姉ちゃんの言葉に何も言わず、ただ睨みつけていた。李依奈お姉ちゃんがちらっところねを見る。少し怖くて、思わずボスをぎゅっと抱きしめた。


「……はあ。分かった。分かりましたよ。お願いしますね、大上先輩」


 李依奈お姉ちゃんはため息を吐くと、諦めたように久美子お姉ちゃんにお願いした。久美子お姉ちゃんは嬉しそうに李依奈お姉ちゃんの肩を掴んで、耳元で囁く。


「ああ、任されたよ。愛しの李依奈様。終わったらご褒美ちょうだいね?」


 久美子お姉ちゃんはご機嫌そうにるんるんと浮足立った様子でアジトを出て行った。

 背中が見えなくなってから、李依奈お姉ちゃんがため息を吐く。


「ボス、ちょっと二人で話しましょうよ」

「……よかろう」


 腕の中からボスが抜け出す。温もりがなくなる。寂しい。

 ボスの背中を眺めていると、くるっと振り返ってころねを見た。ボスがころねの頭を優しく撫でる。


「すぐに戻る。心配するな」

「……分かった。ころね、いい子で待ってる」


 ボスは頷いて、李依奈お姉ちゃんと部屋を出た。


 誰もいなくなった部屋でころねはうずくまる。

 思い出すのは、黄色い服を着た女の子の心配そうな顔。


「……会いたいな」


 きっと、誰もころねを助けてくれる人はここにはいないのだ。



 ***



 ボスと会議室に向かう。着くまでの間、ウチの頭の中は先程のころねとボスのやりとりでいっぱいだった。

 すぐに戻る。心配するな。……分かった。ころね、いい子で待ってる。

 あの光景が頭から離れない。羨ましかった。ボスに構ってもらえるころねも、ころねに懐かれているボスにも、どちらにも嫉妬した。ウチが欲しくてたまらなかったものをあっさり手に入れている。それがひどく腹立たしかった。


「デラヴィ。もうころねに構うのはやめろ」


 ボスがウチに告げる。もう何度も注意された。


 ――一回良いことをして一人を幸せにするより、一回悪いことをしたほうがたくさんの人を幸せにできるじゃん。


 以前、自分がころねに伝えたことを思い出す。アジトの中でまでするつもりはなかったんだけど、と心の中で呟いても誰にも伝わることはない。


 まさに自分は今、アジト内では悪なのだろう。ころねをいじめる悪だ。自分に従順な大上でさえ、やるならアタシにして、と注意してきた。本心がどうであれ、大上から見てもヤバいことだという証明である。


「ころねの生成をボスにお願いはしましたが、保護してほしいなんて言ってませんけど」

「頼まれなくても動くだろう。我はこの組織のボスなのだから」


 ああ、うっとうしい。何一つ思い通りにいかない。これじゃあ家の中と一緒じゃん。

 妹のことは褒めて、ウチのことは叱ってばっかりの両親。ウチが何を言っても微妙な顔ばかりする。


「ねえ、ウチってそんなにダメ?」


 ボスが息を飲んだ。


「……ダメなどとは言ってない」

「だって、ウチが頑張ったらみんな嫌な顔をする。ウチは、ボスが掲げてる『平和な世界を作りたい』っていう理念を叶えようって頑張ってるだけだよ」


 ウチなりに頑張ってる。全部が空回っているだけだ。


「ダメっていうなら、どうしたらいいのか教えてよ。ボス」


 ウチはボスの目を見る。ボスは黙り込んでしまった。ウチは拳を握りしめる。


「ボス、ウチを勧誘する時に言ってくれたよね。絶対に見捨てないって。……ウチ、ボスのこと信じてるから」

「……」


 ボスは何かを言おうと口を開いて、しかし閉じる。結局何も言えないまま、ボスはウチから目を逸らした。

 ウチは笑みを浮かべる。


「ボス、困らせてごめんね」


 ウチはいたたまれなくなって、その場を立ち去った。ちゃんと笑えていたかな。

 ボスが追いかけてくる気配はない。乾いた笑いがこみあげてくる。


「あ~あ、結局ウチが全部悪いんだ」


 今も、昔も。


 ウチは、悪者にしかなれないんだ。

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