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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
06.四人目の魔法少女

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第43話 幼馴染二人と月詠

 カフェ「夕やけ」に着くと、既に日和、怜奈、月詠がいた。片側に日和、向かいに怜奈と月詠が互いにけん制するように座っている。きっと俺が来る前にひと悶着あったのだろうと想像がついた。


「意外とすぐに来たわね。何してたの?」

「さっきまで唯香の家で遊んでた」

「……唯香って、八雲さんのこと?」


 俺が空いている日和の隣に座ると、日和がぐいっと近づいてきた。

 最近、日和から謎の圧を感じる時がある。気弱な自分から変わろうと日和が努力していて、最近はあまりおどおどしなくなってきた。同時に、今のような謎の圧を感じることも増えた気がする。


「ああ。唯香とお互いに呼び捨てにしようってなったんだ」

「……ま、守里さんと初めて契約した魔法少女は私だよね?」

「そうだな。日和が一番目だ」

「……」


 日和がじっとこちらを見てくる。何か言いたげな様子だが、日和から言うつもりはないらしい。横から怜奈の鋭い視線を感じる。

 勘違いするな、怜奈。俺はお前の味方だぞ。


「ねえ、あたしが魔法少女になるために守里を呼んだんでしょ? その話をしようよ」


 月詠の声に、俺は月詠のほうを見る。なんとなく怜奈と同じような圧を感じるのは気のせいだろうか。


「あとさ、守里ってみんなのことを名前で呼んでるよね」

「そうだな」

「あたしのことも有栖って呼んでよ、守里」


 月詠は笑みを浮かべる。一見するとただの笑顔だけなのだが、底が見えない。このミステリアスな雰囲気が月詠という少女の特徴なのだろうか。


「分かった。それじゃあ、有栖。魔法少女になってくれるという話だったな?」

「うん。詳しいことはさっき草加部さんと雨宮から聞いたよ。魔法少女になるには咲から魔法のステッキをもらうんでしょ。そして、自分の一番強く願っている事を口に出す」


 俺は頷く。日和と怜奈はちゃんと話をしてくれたらしい。説明の手間が省けて楽だ。


 ――ミーたちのような妖精って本当に必要だと思いますカ?


 琉亜の声が頭を過ぎる。魔法少女を増やしていいのだろうか。

 日和は、魔法少女になって後悔はないと言っていた。しかし怜奈はどうだろうか。あくまで日和の付き合いで魔法少女になっただけだ。


「有栖は、どうして魔法少女をやってくれるんだ?」


 俺は有栖の顔を見る。どうして魔法少女になってくれるのか。誘う側の俺が、揺らいでしまっている。


「あたしは別にいいよ。魔法少女になったら、みんなの助けになるでしょ?」


 月詠はあっけらかんと言う。


「……それだけか?」

「うん。あ、草加部さんがいるからっていうのもあるよ。あと、怜奈に熱烈な勧誘をされたしね」

「そんなことしてないでしょ! 変なこと言わないでちょうだい」


 怜奈の顔は少し赤くなる。

 前に、怜奈に有栖の勧誘を頼んだ。その日の後から、怜奈から有栖への反応がどこかぎこちない気がする。

 俺の心の百合センサーが反応する。何かあったのだろうか?


 聞いてみたくなってうずうずする。しかし、「ナマモノの扱いは慎重に! 特に本人への干渉は要注意!」と唯香が叫んでいる気がしたので聞くのは止めて、妄想にとどめておくことにする。……くっ、もどかしい。


 怜奈は強気だが、意外と乙女なところがある。クールでミステリアスな雰囲気を纏う有栖だが、話していると意外と小悪魔属性がある気がしてならない。

 日和と怜奈の関係は、まるで木漏れ日が零れる木陰で二人が寄り添うような温かみのある、天然な日和の隣に怜奈が寄り添う光景が思い浮かぶ。しかし、怜奈と有栖の関係は、乙女な怜奈が有栖に振り回される姿が思い浮かぶ。


 俺は怜奈に約束したので、誓って日和と怜奈の恋路の応援をやめるつもりはない。しかし、怜奈と有栖の組み合わせも案外悪くないかもしれない。


「咲?」


 有栖の声にはっとする。


「悪い、何でもない」

「そう? それならいいよ」


 有栖がぐいっと俺に手を差し出した。


「魔法のステッキ、あたしにもくれる?」


 有栖に言われて気づいた。魔法少女になると宣言してくれたのに、まだ魔法のステッキを渡していない。

 俺は紫のステッキを取り出して有栖に渡す。


「これが魔法少女のステッキだ。俺がいない時にも使えるように、ステッキは魔法少女のほうで管理していてほしい。なくさないでくれよ」

「はーい」


 気の抜けた返事をして、有栖はステッキを眺める。


「これが魔法少女のステッキか。初めて見た」

「見たことある人なんていないと思うわよ。まあ、月詠は何考えてるか分からないし、UFOとかは見たことありそうだけど」

「そんなことないよ。でも、雨宮は魔法少女とかファンタジーっぽいものを信じなさそうなのに、よく信じたね」

「まあ、そうね。日和が言わなかったら私は信じていなかったと思うわ」


 日和は驚いたように怜奈を見る。


「それって……私だから信じてくれたってこと?」

「……そう言ったんだけど。聞こえなかったのかしら」


 つんとしたように振る舞うが、怜奈の顔は恥ずかしそうに赤くなっている。文章自体は突き放しているみたいなのに、態度と表情が日和にデレているみたいだ。

 だいたい、そんなこと言ってないとかではなく、言ったこと自体は認めているのがポイントが高い。そして、日和がそれを嬉しそうにしているのがとてもいい。


「……尊い」

「何よ、それ」

「鳴き声みたいなものだ。気にしないでくれ」

「守里さん、動物だったの?」


 日和が不思議そうに言う。どこまでも天然で純粋だ。ぜひそのままでいてほしい。あと怜奈は早く告って日和と付き合ってくれ。応援するぞ。


「……」


 ふと、羨ましそうに二人を見る有栖の様子が視界に入った。どこか寂しそうな顔をしているのが、なんとなく気になった。しかし、俺はまだ有栖のことを何も知らない。だから、どう声を掛けていいか分からず、ただ黙って見守ることしかできなかった。

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