第53話
ようやく戦闘シーンを書くことが出来ました。
やっぱり話の展開が遅いのでしょうか……皆さんがテンポよく読めているのか不安です。
ぜひご意見をください。
追記
色々思うところがあり、アレクの妹の名前を「アリエ」から「ミーア」に変更しました。
もし変わっていない所がありましたら報告お願いします。
パチパチと焚火が弾ける様を眺めていると、アステルがやって来る。
「簡易結界を張って来たわ、魔物が来たら感知できるはずよ。」
「そうか……子ども達はどうだった?」
野盗の持ち物に大きな布があり、子ども達にかけて寝るようにアステルが世話をしていたので、気になって聞いてみた。
「みんな疲れてたみたいで、すぐに寝てしまったわ。」
後ろを振り返り、寝ている子ども達を眺める。
「まぁ攫われていたんだから、精神がすり減るのも当然か。」
師匠が僕を助けてくれたように、僕も彼らを助けることが出来たのだなと自身の成長を感じた。
野盗を殺めた感覚は、今も薄れることはないが、受け入れていかなければならないのだと自分に言い聞かせる。
昔、師匠に何のために強くなりたいと聞かれた時、僕は誰かを守る為だと言っていたのを思い出した。
当時の自分は、強くなればどんな状況でもまるで勇者や英雄の様に完璧に打破できると信じていたが、現実は理想とは程遠く、血みどろで恐ろしかった。
アステルは落ち込んでいる僕を励ます様に、静かに横に居てくれた。
それから暫く二人で休んでいると、フレイが何やら険しそうな声色で話してきた。
「おい小僧、北の方から何かが急接近してくるぞ。」
「私の結界は何も感知していないけど……。」
アステル曰はく、結界に何かが侵入した反応はなかったらしい。
しかしフレイは核心めいた口調で続ける。
「腕の立つ暗殺者であれば気配を消して結界を素通りすることくらい訳ないだろうな。」
どうやら僕たちが野盗を倒したことで不審に思った何者かがこちらに来ているのだろう。
だが、今の僕たちには守るべき子どもが大勢いるため、正面から戦うべきではない。
僕はアステルに子ども達を頼む。
「僕が迎え撃つ、アステルは子ども達と先に村まで戻るんだ。」
「これ以上アレク一人に任せられないわ、私だって戦える!」
どうやらアステルは戦闘を一人で乗り切ろうとする僕に負い目を感じていたらしい。
本来であれば二人で戦うべきなのだろう……しかし、子ども達がいる以上、彼らを守る誰かが必要だ。
「アステルが子ども達を守ってくれれば僕は安心して戦うことが出来るんだ。だから頼む、僕を信じてくれないか?」
「分かったわ、けど決して無茶はしないでね!」
「あぁ、勿論だ!」
アステルと別れて僕とフレイは、接近している侵入者を迎撃するために急いでその場を離れる。
なるべく子ども達から距離を取る必要があるため、僕は全速力で移動をする。
暫く進み続けていると、前方から不気味な気配を感じる。
立ち止まり目の前に広がる暗闇をじっと見ていると、陰からすっと一人の男が現れた。
外套を身に纏い、顔を包帯で覆っている為素顔は分からないが、明らかに敵意を感じる。
「止まれ、お前は何者だ!」
慎重に相手の出方を伺い、少しでも情報を集める。
外套の男は僕をジッと見つめ、少し掠れた様な低い声で答える。
「部下の帰りが遅いから様子を見に来たら何故お前の様な雑魚がここにいる。」
どうやら外套の男は先ほどの野盗の仲間みたいだ。
しかも口ぶりからして奴らの上司である可能性が高い。
「あれが部下だなんてあんたも大したことなさそうだな。」
呼吸を整え、緊張を気取られないように注意しながら少し挑発をしてみる。
外套の男は薄気味悪い笑い声を響かせてこちらにゆっくりと近づいてくる。
「お前がここに来たのはあのガキ共を逃がす時間を稼ぐためか?挑発する割には随分緊張しているようだな……本来はお前みたいな雑魚は歯牙にもかけないが部下をやられたとあっちゃあ上司として尻ぬぐいをしなくちゃな。相手してやるよ。」
僕らの計画はお見通しのようだ、それに緊張も見抜かれている。
ヤツの外套は全身を包んでおり、相手に歩幅やリーチを悟られないようにする意図があるのだろう。
そして野盗の連中が言っていた幹部の名前だ、たしか『黒影のニーゼル』だったか。
恐らく外套の男がニーゼルだろう、そして黒影という異名があるという事は恐らく隠密系のスキルを持った暗殺者だ。
「来ないのか?それじゃあまずは小手調べだ。」
ニーゼルがそう言った後、ヤツの体は地面へと沈んでいった。
恐らく隠密系のスキルを使ったのだろう。
周囲からヤツの気配がなくなった。
風の音一つない森の中、ニーゼルが何処から攻めてくるのか周囲を警戒する。
たった数秒の間にも関わらず、僕の集中力がどんどん削られていくのが分かる。
格上の相手と戦う焦りと緊張で額から汗が流れ落ちる。
汗が地面に落ちた瞬間、ニーゼルが木の陰から静かに飛び出し、短剣を心臓に目掛け突き立ててくる。
「くっ……!!」
僕は咄嗟に身を捩り寸でのところで躱す。
「勘の言いヤツだ……少しでも掠っていたら毒で方が付いたのによ。」
舌打ちをしながら距離を取る。
僕の方も体制を整えて黒剣を構える。
全身に魔力を流すのではなく、衣服の様に体を覆うイメージで魔力を身に纏う。
これは昔師匠が教えてくれた技術で、死角であっても魔力に接触することで感知できるという僕でも扱える超簡易的な探知魔法モドキだ。
「正面から戦おうとするんじゃねぇぞ、相手は格上の暗殺者だ、経験も技量もヤツが上回っている以上、迂闊に手を出せばやられちまう。」
フレイの助言は的確で正しいが、それはつまり現状を打開する手段がないことも意味する。
ニーゼルに勝つ、或いは相打ちにもっていかないとアステルや子どもたちの命はないだろう。
脳内で必死に打開策を考えるも、有効な手は浮かばなかった。
「なら次はコイツでどうだ!」
ニーゼルが勢いよく宙に飛び、懐から湾曲したナイフを複数取り出し、こちらに向けて投擲する。
ナイフは一直線ではなく、弧を描くような軌道で様々な角度から命を狙ってくる。
黒剣で回転するナイフを弾き落としていく。
金属と金属が打ち合う音が鳴り響き、ニーゼルの猛攻は止まらない。
「どうした、ナイフはまだまだあるそ!」
先ほどよりも多い数が投げ込まれ、更には回転したナイフの軌道が不自然に曲がり始めた。
まるで風に揺られる木の葉の様な読み切れない軌道で迫って来る。
魔力で身体能力を上げていたとしても、同時に四、五本迫って来るナイフをすべて撃ち落とすことは出来なかった。
逃してしまった一本が頬をかすめ、裂けた皮膚から紅い血が滴り落ちる。
「クソッ……!」
後ろに飛んで距離を取り、指先で頬に触れ血を拭き取る。
「よく粘ったようだがこれで終わりだな。」
ニーゼルは、獲物が罠にかかったのを見た狩人の様な、そして獲物を狩る獰猛な獣の様な目をしていた。
口元は包帯で隠れていて分からないが、目を見ただけでヤツがニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべている事が分かる。
そして先ほどまでの消極的な戦いから打って変わってこちらに踏み込んで攻めてきた。
(アステルや子ども達は逃げ切れたのだろうか……。)
僕は一秒でも早く子ども達が村にたどり着くことを願い、ニーゼルと刃を交える。
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