第52話
投稿期間が大きく空いてしまいましたが、必ず書き続けますので是非応援の程宜しくお願いします。
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世界観を深く詰めるきっかけにもなりますので、どんな些細な質問でも構いません、いつかまとめて回答を投稿しようと思っていますので気軽にお書きください。
僕とアステルは人攫い達の行動をネイビス伯爵領へ向かったと仮定して、森林の北側へと急いで向かった。
万が一行先を間違えたら、メイサちゃんを助けることは出来なくなる可能性が大きいが、これ以上の議論をしたところで、大きな進展はないと判断し、僕らは休む暇も無く走り続けた。
アステルの身体能力を考慮して、僕は彼女を抱えて走った。
一人の小さな女の子の命が僕らの手にかかっているという事実が、足取りを重くする。
魔力を精一杯振り絞って足に込め、勢いよく前に進むと木々が一瞬の内に視界の外へと消えていく。
数時間経っただろうか……木々の間から差していた木漏れ日がいつの間にかなくなり、辺りが暗闇と静寂に包まれていく。
「暗くなってきたな……アステル、魔法で周囲を照らしてくれるかい?光は少しでいいからさ。」
「ええ、分かったわ!」
アステルが魔法で光球を出し、明るすぎない程度に周囲を照らしてくれる。
光球は暗い森の中をホタルの様に照らし行先をフワフワと付いてくる。
速度を落として少しずつ進むと、アステルが何かに気づき光球を消した。
「止まって!」
「何かあったのか?」
僕がアステルに質問すると、アステルは強張った表情で声量を落とす。
「前の方に大人数の集団がいるわ、推測は当たりね。」
アステルが複数の魔力を感じたらしく、僕は彼女を下ろしてこれからの作戦を考える。
囚われている子どもが何人いるのか分からない為、無暗に正面から行くのは無謀だろう……。
「アステルはどうすればいいと思う?」
僕が意見を求めると、アステルは少し考え込む。
「そうね……相手に魔法使いが居たら接近が気づかれてしまうから、魔力を極力消して進みましょう。背後から少しずつ気づかれないように近づいて行けば何とかなるんじゃないかしら。」
「分かった、その案で行こう!」
茂みに隠れるように、しゃがみながら少しずつ進んでいく。
しばらくゆっくりと前進していくと、茂みが開けた場所に、何やら怪しい集団がいた。
後ろには荷台があり、どうやら街道に出て伯爵領へと向かう予定みたいだ。
目視で確認するのに限りはあるが、五人程の人数で軽装だった。
背後に回り込み、荷台を護衛している一人の男を素早く倒すため、エステルに声をかける。
「僕が先に出て不意を衝くから、その間にエステルは子ども達を頼む。」
「ええ、任せて頂戴。」
茂みを出る前に、アステルから筋力上昇をかけてもらい、素早く敵に向かって走り出す。
鞘から抜いた刃が暗闇と同化し、相手に気づかれる暇なく一人を一刀両断する。
臓器や骨を断ち切る感覚が手の平まで伝わり、暗闇の中で赤黒い鮮血が宙を舞う。
罪悪感を覚えないわけではないが、幼い子供たちの命がかかっている以上、躊躇している暇はない。
敵の仲間が異変に気付き、こちらに集まって来るのを見て黒剣を構える。
「なんだコイツ!?おい、襲撃されたぞ!!」
統制の取れていない様子を見るにどうやら彼らはそこまで組織的な集団ではないらしい。
僕の攻撃を見てから、アステルは子ども達の元へ駆けつけていた。
「もう大丈夫よ!私たちが助けに来たわ!」
アステルは泣いている子ども達を宥め、周囲に聖属性の結界魔法を施す。
「主よ、か弱き子どもを邪悪な存在からお守りください、『聖なる羽衣』!」
発動された魔法は、子ども達を中心に光の膜が形成されていた。
その光景を見て、フレイは関心した口調で僕に声をかける。
「あの年で結界魔法を使えるのか……初級の中でも飛び切り難易度が高い魔法だ、どうやらあの娘もそれなりに鍛錬してるみたいだな。」
「アステルは普段から熱心に勉強していたからな、最近はエリナさんに色々聞きに行ってたみたいだしその成果が出てるんだろう。僕も負けてられないな!」
フレイと短い会話を交わすと、集まってきた奴らが僕を警戒しながらジリジリと近づいてくる。
「このガキ、俺らの後ろに誰がいるのか分かってんのか!?」
仲間がやられて殺気立っているのを肌で感じる。
「知らないね、アンタらみたいな野盗にそんな大層な後ろ盾があるとは思えないけどな。」
敵の規模が分からない以上、少しでも情報が欲しいと考えワザと挑発じみた発言をした。
野盗たちは自分たちは青筋を浮かべながら、剣を突き立てて声を荒げる。
「いいか!俺らのボスは狂気の牙の幹部、黒影のニーゼル様だ!!」
ニーゼルという人物は知らないが、野盗が言う狂気の牙という名前は聞いたことがある。
たしか国際的に指名手配されている犯罪ギルドだったはずだ、どうやらかなりの大事に首を突っ込んでしまったらしい。
僕が状況把握の為に少し考え込むと、どうやら野盗たちはそれを委縮した表情と勘違いしたらしく、笑みを浮かべて剣を向けてきた。
「おいおい、もしかしてブルっちまったのか?今更許しを請おうったってもう遅ぇぞ、お前は細切れにして殺してやる!!」
野盗たちが剣を振り上げて攻撃してくる。
奴らの松明以外に光源がなく、周囲の視界も悪い中で急所を突いて攻撃してくるあたり、夜の殺しには慣れているみたいだった。
全身に魔力を巡らせ剣を躱し、練度の低い連携をいなして素早く反撃する。
予想外の反撃に野盗たちは反応する暇も無く全員そのまま倒れた。
倒れた野盗の中で意識がまだある一人の胸倉をつかみ、人攫いの目的と他の計画について尋問する。
「お前たちの目的は何だ!ほかに人を攫う計画があるのか!」
腹を切られて痛みが全身に巡っているのにも関わらず、野盗の男は小さい声で笑っていた。
切られた腹から流れる血が地面へと広がる。
「ヒヒッ……お前はもう助からない、これから狂気の牙の連中がお前を報復に来るだろう……精々苦しみながら死ぬんだな……。」
どうやら大量出血の影響で死んでしまったみたいだ。
改めて戦いの後に周囲を見渡すと、人が倒れ血が流れる凄惨な光景が月明りによって晒されていた。
ふと自分の手を見ると、小刻みに震えているのが分かる。
戦いは一瞬だった、その一瞬の間に五人の命を奪ったという事実が肩に重くのしかかる。
「慣れろとは言わないが、これからも冒険者としてやっていくならある程度の分別は必要だぞ。」
僕の心情を感じ取ったのか、フレイがそれとなく慰めてくれた。
たしかにフレイの言う通り、敵が必ずしも魔物だけとは限らない。
中には魔物や魔族よりも非道な人間だっているのだから……。
ひとまず気持ちの整理よりも子ども達の安全を確保するのが優先だと自分に言い聞かせ、アステルの方へと向かう。
アステルは上手く子ども達をあやしているようで、彼女の光魔法に目を輝かせていた。
子ども達をなるべく驚かせないように返り血をぬぐう。
額に付いた返り血と汗を布を使ってこすり落とす。
「夜も遅いし今から移動は子ども達には耐えられないだろうから、今日はここで野営しよう。」
「分かったわ!それじゃあ焚火と誰が来てもいいように簡易結界を貼っておくわね!」
「僕は奴らの所持品から使えそうなものがないか見てくるよ。」
そう言って踵を返して死体の方へと向かおうとすると、後ろから声が届いた。
「「ありがとう、お兄さん!」」
その声は子ども達が僕に向けたものだった。
彼らのお礼を聞いて、僕は初めて今度は自分の力で守る事が出来たのだと実感した。
これまで色々な人と戦ってきて自分の弱さを思い知らされたが、それでも自分のこれまでの努力は無駄ではなかったのだと、彼らにとっての英雄になれたのだと感じた。
「お疲れ様、アレク。」
アステルの労いは、たった一言でシンプルなものだったが、彼女の表情からは言葉以上の気持ちが感じられ、目頭が何故か熱くなる。
ここで泣いてしまっては恰好がつかないと思い、僕は野営の準備に取り掛かる。
この日初めて、僕は冒険者をしていてよかったと心から思えた。
しかし、そんなに事が上手く運ぶはずは無く、僕たちに影に潜む脅威が刻一刻と迫っていた。
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