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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
ルーメンス王国

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第51話

長い夏休み休暇を取らせてもらい、これからの展開をある程度考えることが出来ました。

これからまた更新を再開するので、これからも応援よろしくお願いします!!

 バッカス領に向かう僕達は、馬車に乗って目的の村までもう少しと言うところで装備の確認をしていた。

 出発する前にコーナーさんの鍛冶屋で新調した装備の金具を確認して、いつでも戦えるように準備しておく。

 

 「その防具、凄くカッコよくなったわね。」


 アステルは僕が身に着けている新しい防具を見て感想を言う。

 コーナーさんに素材を渡して作ってもらった防具は、変異種ワイルドボアの皮を鞣して皮鎧にして、その上に魔鉄鋼のチェストプレートを重ねた特別仕様だった。

 魔鉄鋼を優秀な鍛冶師が鍛えると金属としては珍しく黒く染まると聞いたことがあったが、コーナーさんが作ってくれたプレートは黒く輝いておりブラックオニキスを彷彿とさせる鈍い輝きを放っていた。

 ワイルドボアの皮鎧が胸にフィットするため、耐久性だけでなく体への負担も考えられた僕にはもったいないほどの一品に仕上がっている。

 更に籠手と膝宛てまで作ってくれて、銀貨30枚では到底足りないような仕事をしてくれた。

 コーナーさん曰はく、余った素材で作ったから代金はいらないそうだ。

 

 「こんな上等なもん実際に買おうと思ったら金貨数枚はするぞ。あの偏屈爺さん気前が良いな。」


 フレイがそうぼやくのも納得の出来栄えに、僕は小さな子どもが新しい玩具を手にしたような目で身に着けている鎧を眺める。

 師匠がくれた装備に手を加えるのは少々心苦しいが、きっと笑って許してくれるだろう。


 「そろそろ村に到着する頃だな、降りる準備をしておこう。」


 これまで何もなく、人の手があまり入っていない道を馬車で駆けていたが、村に近づくにつれて周囲の草木が整えられて、見通しが良くなっていく。

 村にたどり着くと、周囲にはかなりの広さのブドウ畑が広がっており、入り口付近でもブドウの芳醇な香りが漂っている。

 この村ではワインが作られているらしく、村の奥に醸造所が設置されているのが見える。


 「ここが依頼されたノワール村ね。ワインが有名な領地と聞いていたけど、ブドウの香りがここからもするのね、依頼が終わったら是非飲んでみたいわ!」


 「オレも実体があったら飲みたいもんだぜ、ワインなんて飲んだの何年前だかな~。」


 草木が生い茂り、艶のあるブドウを育てている畑に興味があるのか、アステルは周囲を見回していた。

 フレイも興味があるのか、収穫されたブドウを羨ましそうに眺めている。

 しかし、二人が興味を示すのとは正反対に周囲の村人を見てもあまり活気が感じられず、どこか雰囲気が暗いように感じる。

 おそらく依頼と関係しているのだろうと考えて、僕はアステルを連れて村人に話しかけに行く。


 「この村の依頼を受けて来た冒険者なんだが、村長にお目通し願いたい。」


 近くを通りかかったガタイの良い男性に声をかけると、彼は希望に縋るような目で僕たちを見てから案内を申し出てくれた。


 「君たちが依頼を受けてくれた冒険者か!!早速村長の元に案内するよ!」


 男性に連れられてやって来たのは、村の中で醸造所の次に立派な民家だった。

 案内をしてくれた男性がノックをすると、髭をたくわえた老人がドアを開けて、僕たちを迎え入れた。


 「ようこそいらっしゃいました。私はこの村の村長を務めている者でございます。」


 村長は僕たちを待ちわびたかのような様子で家の中へ案内してくれた。

 少女が失踪して時間が経っているからか随分と憔悴し切っているようだ。

 案内した僕たちをリビングの椅子に座らせて粗茶を出し、村長は向かい合う形で座る。


 「粗茶ですがどうぞ。」


 「お構いなく、それで早速ですが依頼について改めてお聞きしても?」

 

 僕は今回の依頼である少女の捜索について直近の状況について聞くことにした。

 村長は俯き考え込んでから、重い口を開いた。


 「3日前のことでした。子供たちが村はずれの森でよく遊んでいるのですが、忽然と一人の少女が消えたのです。彼女はメイサといって村の子どもたちの人気者でした……どうかあの子を助けてやって下さい!」


 村長は震える手で僕の両手を握る。

 僕たちはこの状況になってようやく、事の重大さを思い知る。

 ゲオルグからの助言もあったはずなのに、一介の依頼だと思っていた。

 しかし、村長の切迫した表情と震える手を見て、自分たちの手に1人の少女の命がかかっているのを改めて実感した。

 僕は唾をゴクリと飲み込み、アステルとフレイに目線を向けると、二人とも頷き、この依頼に対する認識を共有した。

 村長の手を握り返し、早まる鼓動を感じながら、僕は震える喉を何とか抑えて言う。


 「この依頼、必ず達成して見せます!」


 村長の家を後にした僕たちは、村の狩猟番をしている男性に現場まで案内してもらうことになった。

 年齢は四十台半ばでベテランの狩人な風格を感じる。


 「普段は私が森で魔物を間引いているので襲われるようなことにはならない筈なんですが……危険な場所に行かないように柵も作っていて、わざわざ自分から越えるとは思えないんです…。」


 狩人の男性が、村の安全について説明してくれる。

 話を聞いた限り、やはり魔物に襲われた可能性は低そうだ……。頭の中で、ゲオルグが話していた失踪事件がよぎる。

 まだ断定するには早いと自身に言い聞かせて、メイサが居なくなったという森へと到着して、僕たちは早速調査を開始する。辺りを見回しても、鳥の鳴き声や草木が揺れる音以外聞こえないようないたって平穏な森で魔物がいるような雰囲気は感じなかった。

 僕たちは入り口には調査の手がかりがないと判断し、柵があるという森の奥へと向かうことにした。

 しばらく進み、周囲に柵が立ててあるのを発見する。僕は柵に近づいて、状態を確認する。


 「ん~……柵が緩んでるようにも見えないし、どこか壊れているわけでもなさそうだなぁ……。」


 柵を触って強度を確かめるが、しっかりと縄で縛られており、子どもが壊せるものでもなかった。

 手分けして周囲を注意深く捜索していると、別れて調査していたアステルがこちらに声をかける。


 「ねぇアレク~、これって何かしら?」


 アステルに呼ばれて、様子を見に行くと、何やら気になるものを見つけたようだ。彼女の視線の先を見てみると、草木が折れている跡があった。

 改めて周囲を見てみると、地面に生えている草も距離を置いてところどころ萎れていて、どこか違和感を感じる状況だった。


 「動物が通った後じゃねぇか?」

 

 面倒くさそうにフレイが呟くが、どうにもしっくりこなかった。


 「こんな高所の枝が折れるような動物はそうそう居ないはずだけど……!」


 草が距離を置いて萎れていることや枝が折れていること、少女が居なくなったにしては不自然なほど無傷な柵。

 これらの状況から、想定していた中で最悪の結論が出てしまった。


 「やっぱりこの依頼、一筋縄ではいかなそうだ。」


 「どういうこと?」


 アステルはまだ状況が把握しきれていないのか、困惑している様子だ。


 「出発する前にゲオルグって人が話してたあの事件と直接関係あるかは分からないけど、少なくともメイサちゃんが失踪したのは人為的なものだと思う……。」


 「攫われたとして、いったいどうやって犯人を捜せばいいのかしら……攫われて三日となるともう手遅れな可能性もあるわよね?」


 アステルの懸念はもっともな事で、攫われて時間が経っていると捜索するのは非常に難しくなってくる。

 特に僕たちには索敵が出来るスカウト、シーフの仲間や索敵魔法を使える魔法使いはいないので、捜索難易度はかなり上がってしまう。

 どうやって犯人たちの居場所を突き止めようかと考えていると、珍しくフレイが助言をしてくれた。


 「まずは地図を見てある程度の目途を付けろ。現在地からある程度の行動範囲を推測して隠れるのにちょうどよさそうな場所を探すんだ。今回の人攫いが計画的なモノならどこかに仲間との合流地点もあるだろうしな。」

 

 フレイの助言は的を射ており、焦りで上手く思考することのできなかった僕たちの頭を冷やしてくれる。

 案内をしてくれた狩人の男性から周辺の地図を借り、人攫いたちが何処に潜んでいるのか考える。

 地図には村周辺の森や、バッカス領の領主がいる町や、各方面の別の領地との境目まで大雑把ではあるが広範囲を記録していた。

 

 「奴らはどこに向かうだろうか……。」


 僕は人攫いたちが次に何処へ向かうのかを考える。

 彼らの目的は不明慮だが、依頼主が誰かによって場所が変わるはずだ。

 爵位が低い貴族が人攫いをするメリットがあるだろうか……子どもが目的なのではなく、攫う事そのものが目的なのだとしたら、恐らく地位の高い者が人攫いによって何かを企んでいるのかもしれない。

 そこで一番条件に合う場所を探すと、男爵領から北へ向かった所にネイビス伯爵領が面していることに気づく。

 ネイビス伯爵は隣国のアルカーン獣王国に面している。

 伯爵が黒幕ではないとしても、ルーメンス王国の国民がアルカーン獣王国に攫われたとなれば、国際問題に発展してしまうだろう。


 「もしかしたらネイビス伯爵領に向かったのかもしれない。ネイビス伯爵領は隣国のアルカーン獣王国に面している領だ。単なる憶測に過ぎないけど奴らはアルカーン獣王国へメイサちゃんを連れていくつもりだと思う。」


 僕の発言にアステルはこれまでとは少し毛色の違う険しい表情をしていた。


 「もしそんなことが起きたら国際問題になりかねないわ!魔王軍の進行によって唯でさえピリピリしているのにこんな事が起こったらどうなるか分からないわ……。」


 僕とアステルは顔を見合わせてすぐに北部へと向かうことにした。

 案内してくれた狩猟番の男性には、村長にこれまでの経緯を説明するように頼んで別れた。

 僕たちは森林を駆け抜けて出来る限り早急に奴らの居場所を突き止めることにした。

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私のやる気が猛烈に上がります。

感想や質問なども書いてくれると嬉しいです。

アドバイスや誤字は優しく教えてください。

次回でまたお会いしましょう!!


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