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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
ルーメンス王国

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第50話

皆さんの応援のおかげで50話と言う大きな節目を迎えました!!

もっと楽しくワクワク出来るような話を書けるように頑張っていきます!

ここから少しずつ物語が動いていきます。

設定や展開などを考える都合上、更新ペースが落ちてしまうと思うので、気長にお待ちいただけると幸いです。

 僕たちは馬車に揺られながらバッカス男爵領にある村へと向かっていた。

 舗装されていない道を走る馬車の揺れが僕たちの体を左右に揺らす。

 小刻みに揺れるのとは裏腹に少し尻に衝撃が走り、乗り心地の悪さに少し眉を顰める。


 「時間もあるし、依頼内容の確認をしようか!」


 依頼された村までまだ1時間ほど時間があったので、依頼書をアステル、フレイの二人と一緒に見返すことにした。

 依頼書には3日前から依頼主であるヘンリー夫妻の子ども、デイジーちゃんが近場の森へ遊びに出かけてから帰ってこないという。

 その森は村の人たちの間では子どもの遊び場として知られているらしく、魔物や動物は村にいる猟師が間引いていて襲われる可能性は低く、子どもが遠くに行かないように柵も建てられているらしい。


 「この依頼書の情報だけでは断言できないが、魔物に襲われた可能性は低そうだな……。」


 フレイが客観的な情報を基に推測を立てる。

 確かにこの依頼書に書かれていることが本当なら、デイジーちゃんが居なくなったことは人為的な可能性が高そうだ……。

 普段からその森で遊んでいたのだとしたら迷子になることもないし、柵を一人で越えていくのもないだろう……。


 「居なくなってから3日も経っているのはちょっと心配ね……。」


 そう、一番懸念していることは3日経った状態で僕たちがデイジーちゃんを見つけることが出来るのかという事だ。

 何かしらの組織に連れ去られた、或いは魔物に襲われた、どちらにしても痕跡を辿るのは少々骨が折れそうだ。

 僕たちは今回の依頼が予想以上に困難になるかもしれないと漠然とした不安を抱きながら、舗装されていない道を揺れる馬車に身を揺さぶられていた。






 アレクたちが依頼へ出発する前日、王国第一騎士団団長であるゲオルグ・オルベルクは黎明の扉(ヘオス・デール)のリーダーであるフェンネルと酒場で酒を酌み交わしていた。


 「お前さんが俺を呼び出すとは珍しいなフェンネル。」

 

 そう言って豪快にジョッキのビールをゴクゴクと喉へ通すゲオルグは、向かいにいるフェンネルに話しかける。

 ゲオルグの体格は冒険者でも中々見ないほどの屈強な体躯であるため、周りの客は自然と彼を避けるように席についていた。


 「第一騎士団団長様は忙しいらしいからな、そう何度も呼びつけるのは悪いと思ってな。」


 軽く冗談を言いフェンネルはそんな状況に構わず、つまみのチーズを頬張る。

 二人の周りには他にも客がいるはずなのに、酒場特有の騒がしさは落ち着いていた。


 「それで、俺を呼び出したのには何か理由があるんだろう?」


 先ほどとは打って変わって真剣な面持ちでフェンネルに話しかける。

 フェンネルも超一流の冒険者である以上、ただ酒を飲むためだけに呼ぶなんてことはないだろうとゲオルグは感じていた。


 「お前に頼みたいことが1つあってな。」


 「俺に頼み?」


 物珍しい目をフェンネルに向け、ゲオルグは聞き返す。


 「最近冒険者になった面白いヤツらがいてな、少し面倒な事に巻き込まれそうなんだ。」


 「珍しいじゃねぇか、新人に興味を持つなんざ。で、その面倒ごとって言うのは何のことだ?」


 ゲオルグは勿体ぶる様に話すフェンネルに痺れを切らし、本題を早く言うように促す。

 すると、フェンネルも真剣な表情へと変わり、声のトーンを低くして、口を開いた。


 「騎士団でも話題になってると思うが、今この国で子どもの連続失踪事件が発生している。受付から聞いた話だと、どうやらソイツらが受けた依頼がその失踪事件に関係してそうなんだ。」


 子どもの失踪事件は騎士団でも議題に上がっており、ゲオルグも調査していた。

 事件の数と規模から、相当な手練れや組織がバックにいる可能性が高いと結論付けられ、現在騎士団の総力を挙げて調査している際中だった。


 「もちろん知ってるが……それならお前が直接言えばいいだろ?なんで態々俺なんだ?」


 ゲオルグの質問は尤もだと言わんばかりの表情でフェンネルは言葉を返す。


 「出来れば俺もそうしたいんだが、ギルドから急な依頼が入ってね、すぐにここを発たなきゃいけないんだ。それにお前なら気に入りそうだなと思ったからな。」


 どこか確信めいた表情でそう言い切るフェンネルに、ゲオルグはやれやれと言いながら頼みを了承した。


 「いいだろう、他ならぬお前の頼みだ、失踪事件について伝えておこう。」


 「ありがとう、助かるよ。」


 話も終わり、その後二人は酒を一飲みして解散となった。

 帰路に立ったゲオルグはフェンネルの真剣な表情を思い出す。


 「アイツがあそこまで真剣な表情をするなんてな……何か嫌な予感がする…俺の方でも独自に調査しておくか。」




 そして時間はアレクがゲオルグと別れたところまで進む。

 ゲオルグは始めてアレクを見て、フェンネルがあそこまで気に入ってた理由がどことなく理解できた。

 目だ、アレクの目がどことなくフェンネルやゲオルグ自身に似ていると感じたのだ。

 その黒い瞳には固い信念と揺るぎのない正義感が宿っているように思える。

 そして、彼の横にいる女性にも目を向けると、魔法職の服装をしており、まだまだ若く新米でありながら相当な魔力量があり、二人とも才能の原石と言った印象を受けていた。

 二人とも現在の実力はお世辞にも腕が立つとは言えず、アレクに至っては才能と言うものを感じない、フェンネルが何故二人に期待しているのかは分からなかったが、ゲオルグは彼らがいつか世界を照らしてくれるような希望になるかもしれないと漠然とした思いを抱いき、心の中でフッと笑った。

 

 ゲオルグは、フェンネルから言われた通りに失踪事件についての情報を大まかにアレクへ伝えると、アレクは新米冒険者としては珍しく落ち着いた態度を保っており、ゲオルグは内心とても関心していた。


 (これくらいの年だったらウソだと思うか、慌てふためくかのどっちかだと思ったんだが……。)

 

 アレクの落ち着きように、ゲオルグはどのような育て方をすればこうなるのだろうかと考えていた。

 騎士団長という肩書もアレク視点では確証が持てない情報である上、フェンネルの友人という情報も不明瞭だった。

 そんな中、見知らぬ人物を信用し、話に応じるためには相当な胆力が必要だとゲオルグは考えた。

 しかし、今そんな事考えていても疑問の答えは出ないと思考を切り替え、自らの調査を進めるために二人の前から姿を消し、騎士団の詰所へと帰っていった。




 そして時間は現在へと戻る。

 ゲオルグは詰所へと戻り、副官である騎士を呼びつける。


 「リシェルはいるか!!」


 ゲオルグは詰所の扉を開けて早々、詰所全体に響くような野太い声でリシェルという騎士の名を呼ぶ。

 すると、詰所の一室から第一騎士団のトレードマークである白く輝く鎧を身にまとった女性がやって来た。

 その女性はキリッとした鋭い眼光に、赤茶色の短く整えられた髪が特徴的で、ルーメンス王国最強と謳われているゲオルグの副官を務めているリシェルだった。


 「どうかされましたか、団長。」


 ため息交じりにゲオルグの方へ近づくリシェルに、苦笑いしながらゲオルグは答える。


 「いや~朝の会議をすっぽかして悪かったな!このと~り、許してくれ!!」


 頭を下げてリシェルの前で両手を合わせ謝る姿に慣れているのか、彼女は呆れた様子で何があったのか問いただす。


 「はぁ……私の仕事をこれ以上増やさないでくださいっ!それで、何があったのですか?」


 二人は団長の執務室へと戻り、話の続きをすることにした。

 右手で額をおさえながら厄介ごとが増えたと確信しながら団長であるゲオルグに質問する。

 

 「最近王都を中心に国中で失踪事件が相次いでいるだろう、その事件について少しきな臭い話を聞いてな。」


 失踪事件と聞き、真剣な話だと感じたリシェルは姿勢を正し、ゲオルグに調査中だった事件について何か分かったのかを聞く。


 「それは一体どういった……私たちでさえ未だ全貌が掴めていないんですよ!」


 今回の事件は王都周辺を中心にかなりの数報告されており、大胆な犯行でありながら組織的であり、実行した犯人たちがどのような組織でどれ程の規模なのかすら把握できておらず、第一騎士団だけでなく、その他の騎士団も調査をしており、このような事態は王国の歴史を見ても極めて稀だった。


 「王都で活動している冒険者の知り合いから聞いたんだが……奴曰はく、今回の件は狂気の牙(ヴァーンズ・ファング)が関わっているみたいでな……。」


 狂気の牙(ヴァーンズ・ファング)という組織の名前を聞いて、リシェルは予想外の答えだったのか驚愕し、額に汗を滲ませていた。


 「そ…それって国際指定犯罪ギルドですよね。元Sランク冒険者のリーダーを筆頭に数多くの実力者が所属しており、組織の規模は一つの軍隊と言っていいほどで、どんな依頼も受けており依頼達成率はほぼ百パーセントって噂ですが……。本当にそんな凶悪ギルドが今回の件に関わっていると?」


 「分かりやすい解説ありがとう。それと、俺の見立てではこの情報は事実だろう。今回起きた一連の犯行が同一人物だとしたらそれだけの人員が必要だ。しかし、俺が危惧しているのは狂気の牙(ヴァーンズ・ファング)だけではない……。」

 

 国際指定犯罪ギルドと同等の重要度なことが他にあるのかと疑問を抱くリシェルに、ゲオルグは声を抑えて耳打ちするように話す。


 「この事件を引き起こしたクライアントが誰かってことだ。恐らく王国貴族も一枚かんでいるだろが()()だけで済めばいいが……。」


 ゲオルグの考えにいまいち要領を得ないリシェルだったが、彼の発言からこの事件が想定される上で最も最悪な状況がどのようなものか考え、同じく声を小にして呟く。


 「まさか……近隣の国が王国の貴族と協力して我が国を陥れようとしているお考えなのですか!?」


 「まだ可能性の段階だがな……。魔王軍が侵攻している混乱に乗じて火種を撒きたいのかもしれん……最悪魔王軍の所為にしてしまえばいいからな。机上の空論に過ぎないがそれなりに的を得てると思うぜ。」


 余りに予想外の答えを聞き、リシェルは苦虫を嚙み潰したような顔をして、拳を握りこみ怒りをあらわにする。


 「いったいそんな事をして誰が喜ぶというんですか!?魔王軍という人類共通の敵が攻めて来ているというのに……。」


 リシェルの悔しそうな呟きに、ゲオルグは天井を見てため息をつき重い口を開く。


 「世の中にはそういった自身の利益だけを追求するような汚い奴らもいるんだ……。俺たちはそんな奴らから国民を守るために死力を尽くさなきゃいけない。リシェル、一度調査している奴らを集めて改めて人数を絞ってこの件に関しての調査をさせろ、貴族や周辺国家を中心に調べるんだ、人選はお前に任せる。」


 ゲオルグはそう言って椅子から立ち上がり、扉の方へと向かう。


 「団長はどうするのですか?」


 そうリシェルが言うと、ゲオルグはニッと笑いドアノブに手をかける。


 「俺は独自で調査したいことがあってな、暫く騎士団の指揮はお前に任せる!それじゃ後は頼んだぞ!!」


 ゲオルグを見送ったリシェルは早速調査を進めるために、最精鋭の部下を選び事件解決に臨むのであった。




 アレク達が依頼を受けている裏で大きな陰謀が蠢き始めていた……。

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私のやる気が猛烈に上がります。

感想や質問なども書いてくれると嬉しいです。

アドバイスや誤字は優しく教えてください。

次回でまたお会いしましょう!!


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