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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
ルーメンス王国

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第49話

お待たせしました。

この内容は一度29話をザッと読み返すと良いかもしれません。

ここからルーメンス王国編の山場へ向かっていきます。

 次の日から僕たちは、世界の(ウェルトリア)探求者(・フルーク)として、依頼を受けながらギルドの書籍だったり、民間人向けに開かれている図書館へ足を運んで、勇者に関する歴史書や逸話について調べていた。

 民間向けという事もあり、そこまで詳細な出来事が記された書物は無かったが、勇者がどのような足取りで旅をしていたのかはある程度推測できそうだ。

 毎朝決まった時間に起き、依頼をこなし、調べものをする毎日は思いのほか充実しており、様々な人達とかかわりを持つことが出来た。

 ようやく落ち着いて過ごすことが出来るようになったので、師匠へ手紙を出そうと思い、僕は宿にある机に向かい、雑貨店で購入した洋紙へ筆を走らせていく。


 『お久しぶりです、手紙を出すのが遅れてしまい申し訳ありません。師匠は変わらずお元気でしょうか?僕は色々なトラブルに巻き込まれながらも、何とかやっていけています。まだ旅立ってから数か月しか経っていない筈なのにとても懐かしく感じるのは僕だけでしょうか。挨拶はこれくらいにして、ここ最近であったことを師匠に報告したいと思い手紙を出しました。』


 師匠への手紙にアステルとの出会いや、黎明の扉(ヘオス・デール)のみんなの事、そして昇級試験後に受けた依頼についての事を振り返りながら書いて行った。

 書き終わった手紙を配送屋へ持っていき、師匠が住んでいた地域へ指定して配送の依頼をした。

 宿へ帰って来ると、アステルも起床していて、二人で朝食を食べに、一階へと降りて行った。

 そして、朝食を食べてるアステルと僕の横にいるフレイに重大な話をすることにした。

 

 「重大な話がある……。」

 

 そう言い放ち両肘を机に立てて手の甲を顎に付け、深刻そうな雰囲気を出しながらアステルに話しかける。


 「なんだそのポーズ。どっかの司令官みたいだぞ。」


 フレイが茶々を入れてくるが、僕は気にせずに話を続ける。


 「実は昨日、ギルドで口座の残高を確認したんだが……。」

 

 そう言って僕は昨日の出来事について二人に話す。




 「嘘だろ……資金が空っぽになってしまった……。」


 手持ちで保管していた路銀がなくなりギルドに預けていた貯金も確認するが、スズメの涙ほどしかなくこれからの宿代すらも怪しくなっていた。

 僕としては無駄遣いをしていた記憶はないが、宿泊費や冒険をする為に必要な物資を購入したりと、少しづつ費用が嵩んでしまって底をついてしまったのだ。

 あとアステルの為に購入した装備が思いの他値を張ってしまったのだ。

 女性用の装備はお洒落なものが多く、無骨でシンプルな男性用装備よりあそこまで値が違うとは思わなかった。

 店員さんにも煽られて引くにも引けない状況になってしまったのも今考えれば腹が立つ……。



 

 事の顛末を話し、現在危機的状況であることを説明する。 


 「僕たちパーティーの資金が底を尽きかけている。至急稼がねばならないっ!」


 僕が迫真の表情で懐事情が寒い事を伝えると、アステルは首をかしげながら返事をした。


 「お金ならお父様に言えば支援してくれるんじゃないかしら?」


 流石は伯爵令嬢、お金の考え方のレベルが違う、親がお金持ちなのもそれはそれで問題だな……。

 アステルから魅力的な提案をされたものの、伯爵との約束がある以上、そんな簡単に頼るわけにはいかない。

 ていうかそんなこと頼んだら僕がただでは済まなそうな気がする。


 


 「そんな甲斐性のない男に我が娘を預けて置けるかぁ!!」



 

 なんて言われてしまうかもしれない。

 そこでギルドの掲示板に貼ってあったいくつかの依頼をケイシーさんに頼んでまとめてもらい、何を受けよか悩んでいることを話した。

 

 「今日からバンバン依頼を受けていこうと思ってるんだけど、どの依頼を受けようかと思って。」


 「う~ん、報酬だけで見るなら今の私たちにも受けられる依頼はあるけど、時間がかかりそうなものばっかりね。」


 そう、幾つか報酬の良い依頼もあるが、ダンジョンにある素材収取や、危険な魔物の討伐、遠くの町への護衛依頼等、数日ほどかかる依頼であったり、準備に費用が掛かりすぎるものが多かった。


 「これなんてどうかしら?」


 そう言ってアステルが提案してきたのは、王都から馬車で数時間ほどの距離にある、バッカス男爵という貴族領に属している農村の依頼だった。

 依頼内容は村の近くで迷子になってしまった少年の捜索だった。

 他の討伐依頼等よりは報酬面でやや劣るものの、内容を見たら見過ごすことも憚られた。


 「ん~~……確かにこの依頼なら今日中に片付きそうだね。」


 僕はアステルの提案に同意して、早速準備することにした。

 手入れをした黒剣とナイフを丁寧に鞘に納め、腰に掛ける。

 携帯食料や解毒ポーション、ランタンや王都周辺の地図等の必需品をリュックへ詰め込み背負う。

 最近は図書館での調べものが多く、そこまで積極的に体を動かしていなかったので久々の遠出で少し気持ちが高まっている。


 「近所の広場に行って子供たちに顔を出したいんだけどいいかな?」


 「子どもたちって前に依頼を受けた孤児院の?」


 「そう、最近は会いに行けていないから出発前に少し顔を見ようと思って。アステルもきっと仲良くなれるさ。」


 「もちろんよ!私も小さい子たちは大好きだから。」


 アステルの準備も終わり、出発する準備も整ったが少し寄り道をすることにした。

 そこは最近孤児院や近所の子どもたちの遊び場で数回ほど顔を出していたのだ。

 少し歩いたところにある広場へと足を運ぶと、孤児院の最年長であるレントやキース、クレアたちが小さい子たちと駆けっこやおままごとをして遊んでいた。

 

 「久しぶりだな皆!」


 手を振りながら近づくと、僕の存在に気づいたのかレントたちが走りながらやって来る。

 一週間たったかどうかの期間のはずだが、皆背が伸びた気がする。


 「アレク兄ちゃん!!」


 小さい子どもたちが足にしがみついてきたり、僕の腕にぶら下がって来るのをよろけながらもなんとか耐え抜く。


 「彼女は僕の冒険者仲間のアステルだ!みんな仲良くしてくれ!」


 僕がアステルを紹介すると、小さい子たちは目をキラキラと輝かせて彼女を見ていた。


 「すっごい可愛い~!」


 「お人形さんみたい~!」


 「お姫様~?」


 アステルは彼らと会うのは初めてのはずだが、女子を中心に色々と話しかけられていた。

 彼女の振る舞いと容姿は確かに目を引くし、お姫様に憧れるよな年齢の子どもたちなら尚更だろう。

 アステルには年上の兄がいるものの末っ子だった為、昔から妹や弟が欲しかったらしく、小さい子たちに好かれるのはとても嬉しいみたいだ。

 彼女が他の子どもたちの相手をしてくれている間にレントやキース、クレアの最年長組と少し話す。

 キースたちの天職だが、シスターから聞いたところ、レントが『剣士』、キースが『料理人』、クレアが『魔法使い』だそうで、最近は各々自分の成長の為に色々と学んでいるようだ。

 レントは時々来るフェンネルさんに剣の稽古をして貰っているようだ。


 「フェンネルの奴すっげ~厳しくてよ~稽古が終わるころにはクタクタだよ~。」


 愚痴るように稽古の様子を語るもののレントの目は彼への尊敬で溢れている。

 体を見ると、確かに僅かな違いではあるが逞しくなっているように感じる。


 「そう言うなって、お前のこと考えてくれてるから厳しくしてるんだ。これからも頑張れよ、強くなったら僕と手合わせだ。」


 「おう!!」


 そして、キースは孤児院の家事を積極的に手伝うようになり、シスターから料理だけでなく裁縫や孤児院の管理について等、子どもにしてはとてもレベルの高い事も教わっているという。


 「これ、僕が作ったんだ。」


 そう言ってキースが見せてくれたのは、人の顔をしたアップリケだった。

 ところどころほつれてはいるものの13歳が作ったにしては十分すぎる出来栄えだった。


 「これは?」


 「シスターのアップリケ。」


 「よくできてるな~随分と器用になったんだな!シスターに渡したらきっと喜ぶぞ!」


 僕が褒めるとキースは照れたのか俯いてしまった。

 将来の為にシスターから色々と学んでいる様で、シスターもキースがいて助かっているだろうと思った。


 「私は最近魔法の本を読んでるの!」


 横からクレア本をもってこちらに話しかけてくる。

 本の題名を見てみると、「基本的な魔法の仕組みについて」と書かれており、魔法について学んでいるという。


 「フェンネルさんがこの前、ネリッサさんっていう仲間を連れてきてくれて魔法を見せてくれたの。その魔法がとっても綺麗でネリッサさんに話したらこの本をくれたの!!」


 確かに魔法は綺麗で面白いものだ。

 師匠も日常で魔法を使っていたがどれも幻想的でワクワクしていた。

 僕には才能が無かったが、彼女がこのまましっかりと勉強すれば立派な魔法使いになれるだろう。


 「魔法か~、習得出来たらぜひ見せてくれよ!」


 三人と話してそれなりに時間が経ち、出発するためにアステルを呼ぶ。


 「僕たちはこれから依頼をこなしてくるからまたな!!」

 

 子どもたちに手を振って依頼を出した村まで出ている馬車の乗り合い所へと向かう。


 「ちっちゃい子ってホント可愛いわね~!ほっぺたがもちもちでいくらでも触れるわ!私も妹が欲しかったな~!」


 アステルは子どもたちと遊んでとても嬉しそうだった。特に子供たちのほっぺたにご執心らしい。

 そして、雑談して二人で歩いているとある男性がこちらに話しかけてきた。


 「君たち冒険者かい?」


 身長は190センチはあるであろうガッシリとした体格、こげ茶色の短髪に無精ひげの男性だ。

 急に話しかけられて少し警戒すると、男性は慌てて両手を振り、こちらへ話しかけた意図を言った。


 「俺は騎士団に所属する騎士のゲオルグってんだ、実は知り合いから君たちの話をされてな、フェンネルって奴なんだがな、アイツが有望な新人がいるって。これから依頼に行くのか?」


 騎士団所属の証である聖銀で出来た懐中時計を僕らに見せる。

 懐中時計は本物の様だし、彼の態度から嘘をついている様には見えない。

 それに彼からはフェンネルさんと同等かそれ以上の底知れないオーラを感じる。


 「コイツはヤバいな……とんでもない実力者だ。」


 フレイが僕の耳元でささやく。

 やはり只者ではないようだ。


 「迷子になった子どもの捜索依頼をしにバッカス男爵領の村まで向かうんだ。」

 

 彼と揉め事を起こしたくはないので仕方なく依頼について話すと、ゲオルグは顎を擦り少し考えた素振りを見せた後、僕たちにある情報を教えてくれた。


 「最近王都や周辺の領地の村々で子どもの行方不明が相次いでいるんだ。かなりの件数起きていて原因を調査中なんだがまだ進展が無くてな。もしかしたら君たちの依頼もその行方不明が関係しているかもしれない。十分注意してくれ。」


 そう言うと、彼はこちらに背を向けて去っていった。

 王都近辺の子どもの行方不明……なんだか少し胸騒ぎがする。

 そういえば少し前、少女を人攫いから助けたことがあった気がする……あれもこの騒動に関係しているのだろうか。

 

 「ゲオルグってどこかで聞いたことがあるような……。」


 アステルが先ほどのゲオルグという男性について少し考えているようだ。

 

 「彼について知ってるのか?」


 僕が尋ねると、思い出したのかアッと声を出してゲオルグの正体について話してくれる。


 「彼はこの国の王国騎士団の中でも最も優秀と言われている第一騎士団団長のゲオルグ・オルベルクよ!!たしか就任当時は王国史上初の平民出身の騎士団長と話題だったわ!!その時は領地にいたから姿までは知らなかったけど……。」


 ゲオルグ・オルベルク……フレイが警戒するほどの人物であれば騎士団長というのにも納得だ。

 リーネも騎士団に所属していたらしいが彼女について何か知っているのだろうか?

 いつか会う機会があったら話を聞いてみたいな。

 僕たちは彼から教えてもらった行方不明の話を心に留めながら乗り合い所へ向かい、依頼を出した村まで向かう。

 しかし、当時の僕たちはこの依頼を発端に王都を揺るがす大事件に巻き込まれるとは全く思ってもみなかった。

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私のやる気が猛烈に上がります。

感想や質問なども書いてくれると嬉しいです。

アドバイスや誤字は優しく教えてください。

次回でまたお会いしましょう!!


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