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休日を利用したごり押し捏造戦術。
云年ぶりとなるチョコレートを口に放り込みながらケツからナニを捻りだすかのようにぶち込んでいく作業は、なかなかに楽しいものです。
アフターバーナーを強めたり弱めたりしながら、予測射撃のためのタレットの動きをハズし弾を回避する、オーバーロードプログラムによって強化された知覚機能を用いてタレットから発射される弾丸を視認し、同じく強化された反応速度をフルに使って強引に機体をひねって弾丸を回避する。
それでも無理ならシールドで受け止め、あるいは装甲そのもので受け止めたり滑らせて受け流す必要があるし、現にそうしている。
ガコンだのギャリンだの、擬音に直すならそういう感じの音が聞こえてきて非常に耳障りだが、それでもそういう音を聞くたびに「俺はまだ生きている」と実感することができるから皮肉なものだ。
装甲部分に突き刺さったり、弾いたり、そういう音というのは宇宙空間を飛んでいても聞こえるからだ――当たり前だが、機内は与圧されていて空気があるためだ。
とにかく今の俺はとてもとても忙しい……敵機10からなる30のタレットによる攻撃にさらされ続けているからだ――除外されているのは2門のフリゲート艦に装備されているレーザータレットでありそれは現在休眠中、つまり各艦3門ずつのレールガン・タレットが俺を狙っている。
この戦闘が終わったら死ぬほど疲れて寝てしまいたいと感じることだろうが、今のところそれをやるわけにはいかない。
実際死ぬほど疲れて永遠の眠りにつきかねないからだ。
レーザーが連発できる仕様ではないのが救いという感じだろうか。
地球製の核融合ジェネレータの出力ではレーザータレットの性能を100%引き出すのは難しいのが不幸中の幸いである。
俺がくらったのは出会いがしらの不意打ちの一発で、喰らっていた時間も一瞬でしかないわけだが、その一瞬で俺は相応の代償を支払うことになったことからわかるように、アンドロイド体にオーバーロードプログラムを乗っけた状態でなければあの場面で俺は爆散していた。
『距離12000、すべての武装の最適射程に入りました。あとシールドは減少傾向』
「あいよ。俺がおくたばりになるまで凡そ80秒ってとこだ」
「了解、君の雄姿は忘れない」
「まだ死んでないから!」
ハーヴェイから、クソッタレなジョークと共に妨害の優先順位が送られてくる。
推定指揮艦の優先順位は3となっている――前述の通り、乱闘になってしまうと他にエネルギーを使うので地球製の艦船ではまともにレーザーを運用することは不可能になるからだ。
ネットワーク・アクセラレータは既に起動させているため、ECMを起動させ、優先順位最上位のコルベット艦に向けて照射――指向性だからだ――すると、その艦のタレットがあらぬ方向に向かって動いていくのがわかる……成功したようだ。ECMはレーダーを含めたセンサー類を狂わせる効果があるため、コンピュータによるロックオンが正確でない場所に移ったりさせることができる機能だ。
もちろん手動でタレットを動かし攻撃すること自体は可能だ――オーバーロードなしに正確に狙い打てる腕があるならば。
80秒間というのはある程度の根拠はある。
ここまでの戦闘によるシールドと装甲の摩耗具合から、それらをぶち抜いて船体の内部構造材まで食い込んで艦がバラバラになるまでの予測時間がタマヨリから送られてきたからだ。
もっとも、ヤハタ魂の権化たるYHI-100の継続戦闘能力――ジェネレータとキャパシタによるエネルギーの関係だ――と対して変わりがないので、全力軌道でそれだけ持つなら十分ともいえる。
因みにレーザータレットの直撃をもう一回受けたらどうなるか?という疑問にお答えするのはできたらやりたくない。
何故ならば、次受けたらほぼ確実に全部吹き飛ぶからだ。
地球製の艦船はレーザータレットをまともに運用する能力はない……故に太陽系で活動する船はレーザーなどのサーマル・ウェポンに対する防御能力はそこまで高く設定されていない。
シールドに至ってはそのあたりの防御力はゼロに等しく、それ故にカスっただけでも大半が消し飛ぶことになったわけだ。
ともかく、これで俺に向いているタレットの数は27となり、ぶっちゃけ大して変わらないじゃないかふざけんな畜生というごもっともな感想しか浮かばない。
ディスカバリーパイロットに譲渡された星系外の超テクノロジーの数々がなければ飽和攻撃として十全に成り立つほどの火力であるわけだが、正直言ってアンドロイド体+オーバーロードプログラムに加えてシールドと最新式の装甲をもってしてもそこまで耐えきれるものではない。
「あのクソフリゲート、シールド積んでやがるわねえ」
「データによればロシア製だなあ、動きを見る限りは軍人に毛が生えた程度の素人って感じだが。コルベットに至ってはどこのクソ機体かよくわからんが、浮かんで攻撃するだけならなんとでもなるしなあ」
ロシア製だろうが南アフリカ製だろうが、正規品の機体に関しては軍用だろうが民間企業用だろうが、ディスカバリー側からすればほとんどデータベースに入っている。
それでわからないとすれば、答えはアレだ。
「狩った艦の構造物詰め込んだニコイチ品じゃねえかこれ?」
「海賊ちゃんの常套手段ねえ、多分AIすら積まれてないわよ。コルベット艦ならいらないけどね」
『タマヨリは、いらない子だった……!?』
「いやいるから、必要だから!変な効果音頭に流し込むんじゃねえっつーの」」
例えば採掘艦だったり、運送屋の艦だったり、シャトルだったり、もちろん戦闘艦だったりもするが、それら色んなものを組み合わせて1個の艦を捏造するなんてことは海賊稼業をやっていればよくあることらしい。
まあそんなわけで彼らの艦の仕様というものはとにかくバラバラなことが多く、もちろん採用して訓練してなんて悠長なことことやれる環境でもないため、とにかく宇宙空間に浮かんで砲をぶっ放せればいいのでなるだけなら簡単だ。
とはいうものの、今回の相手は小惑星の穴の中に隠れてアンブッシュという手間をかけられるだけの技量を持ち合わせていることは判明しているので、侮っているわけではない。
そう、27門のタレットに狙い打たれ続けて、シールドも装甲も削られ続けている俺が、敵を侮れるわけがない。
死にそうなんで助けて欲しい。
『レーザータレットの稼働を確認』
「ダーンプ!」
タマヨリの発言に対して俺は絶叫しながら回避行動をとり、温存してきた武装のうちの一つを起動させる。
センサー・ダンプナーは相手の攻撃システムを一時的にダウンさせる必殺技みたいなものだ。
ロックオンは解除され、タレットは沈黙し、場合によっては相手のコンピュータにアップロードされた戦闘情報すら消し飛ぶほどの強烈なアイテムだが、効果時間は数秒しかなく……
『キャパシタ残量が30%を切りました』
「知 っ て た」
ただでさえ電力ひっ迫具合が凄まじいヤハタ艦でこれを使うとこうなる。
この戦いのさなか、俺はレールガン・タレットを起動させていない……ついでにいうとミサイルも打たれていないので、ミサイル・ガイダンス・ジャマーはオフラインにしている。
わずかな電力消耗すら抑えなければ死ぬ――欲しがりません勝つまでは!の精神というのは歴史の授業で聞きかじった程度の話であるが、23世紀でも有効だとは思わなかった。
本格的戦闘が開始されてから数十秒が経過しただろうか、快速が持ち味のコルベット艦が多数集まってこのように戦闘をするとなれば、その交戦距離は1km前後に収まったりすることが多いらしい。
今現在は実際そうなっていて、VRゲームでしかまともに体験できないようなドッグファイトめいた光景が繰り広げられることになっている。
そのほとんどが俺のケツを追いかけようとしているのが気にくわないところだが、操船技能に関して宇宙海賊とディスカバリー・パイロットではあまりにもあんまりなほどの格差があるので、それ自体はほとんど問題にならないのが救いだろうか。
「モテる女は辛いわねえ!」
「男だっつーの!」
このネタも久しくやっていなかった気がする……数十時間前までは当たり前のようにやっていたわけだが。
ともかく、この距離になればアンドロイド体でなくとも、機体のセンサーに備わっている映像認識などもつかわなくとも、機体が視認できるようになってくる。
「お前ら、やっぱりディスカバリーかよぉ!」
このように、相手の所属がきっちりとわかるようになるのだ。
唐突に広域電磁通信によって割り込んできたのは、中国語だった。
「虎の尾を踏んだんだ、そのくらいの覚悟はあるでしょうに」
「アレはたまたまだったんだってば!」
「「「「「知らんがな!」」」」」
第三次大戦の大惨事から数十年が経過したが、かつての日本がそうであったように、今回の敗戦国たる中国に対する様々な見えたり見えなかったりする規制というのは今現在も生きている。
地球内における活動の制限は現代においてはほとんどゼロに等しいと言えるかもしれないが、宇宙利権がほとんど認可されていないという現状は変わりない。
しかしなぜ彼らが訓練艦とはいえ、アメリカ合衆国の艦船を撃破するような戦力を有する宇宙海賊として宇宙でやっていけるかというと、それを支援する国家がいるからである。
この場にいる彼らを支援しているのは、艦船から判断するにロシアとかその辺――つまりアメリカ合衆国と少しばかり距離を置きたい国々――がやっているわけだが、彼らにアメリカ資本も投入されている可能性だって実のところゼロじゃない。
その辺は太陽系レベルで海千山千という立派だかしょぼいのかよくわからない範囲の政治的なものなので別にどうでもいいといえばいい。
いずれにせよ太陽系レベルにおいて、合衆国をブチ切れさせれば太陽系レベルで一番金と政治力を持っている国としてなりふり構わず報復をするということだ。
ディスカバリーがそれに協力するのは言うに及ばないというレベルの話になる。
何しろ初期資本の大半がアメリカ国債なわけでして、日本企業とはいえその辺で忖度すること自体はやぶさかではないということだ。
スポンサーっていうのはいつの時代だってとてもとても大切なものなのである。




