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スペースかくれんぼ

残業休出というか仕事の物量がやべえっす、36協定とかいうルールがなければ即死しかねない昨今ですが皆様は如何お過ごしでしょうか。

0時越えはまだないですが帰るのが23時過ぎじゃ書くも捏造するもクソもないですねえ。


駄文捏造ではご飯が食べられないためペースダウンが著しいですが、当初の目標である「完結させる」は忘れていません。

「ここが……エッジワース・カイパーベルトって奴か」

「そーね」


正直どうでもいいというレベルの微妙な反応を返してくれたのがいつものシルビアである。

そして、確かに正直どうでもいいと思えるくらい何にもないのが、エッジワース・カイパーベルトだった。


いや、確かに氷の塊やちょっとした小惑星(というか岩)が浮いている部分はあるのだが、思った以上にスカスカというか。

まあ太陽の重力圏の隅っこであるので、大きめの天体があるのは確かではあるが、とにかくその全領域の面積に対して存在する物体が少なすぎるために、とにかくただの何もない空間と言ってもいいレベルだった。


「正直、もうちょっとガッツリとしたアステロイド・ベルトを想像していたんだけど……」


ガラッティの言が俺のイメージと合致していてくれて助かった。

もっとも、イメージ通りがっつりアステロイド・ベルトな部分もあるんだとは思う……とにかく「ベルト」と定義づけられたからといって、全領域にアレやコレがミッシリと詰まっているというわけではないということだ。

だいたいからして、メインベルトがそうだったしな。


「アタシが資源惑星探すきっかけになったのがここねぇ。太陽系って存外資源少ないのよ」

「センサーにはガス地帯やら小惑星がチラホラ見えるな。とりあえず敵艦っぽいのはセンサー探知範囲内には見えない」


とりあえず、太陽風で引っぺがされたりなんだりした水素などの軽い元素の集団があるようで、これがエッジワース・カイパーベルトの主な構成物質と言ったところだろうか。

というか、そうなってくると色々疑問点が浮かんでくるな。


「こんなクソ何にもないところでどうやって海賊として活動するんだ?」

「まず燃料関係はガス地帯から直接採取してることが多いわね。あとは小惑星そのもののの構造物を利用して拠点にしたりとか。国家が支援してる海賊団体とかだと色々できるからねえ」


彼らの主な狩場は外太陽系、つまり地球の外側にあるアステロイド・ベルト、メインベルトより外側となるらしい。

木星や土星くらいまでは経済規模や軍事規模の大きな国家の拠点があるが、それより更に外となるとかなり小規模なものしかなく、そのあたりを拠点としている国家も軍事的にも経済的にもそれほど強くない国が多い。

今回海賊諸君にとって不運だったのが、たまたまアメリカ合衆国が本格的遠征訓練と称して小規模な巡視艦隊をエッジワース・カイパーベルトに派遣したところにカチあって、弱小国家か民間企業艦隊と勘違いした海賊君がはりきってせん滅しちゃったことにある。


メインとなるターゲットは、単独や少人数で活動することが多い民間宇宙企業となっているそうだ。

なかでも莫大な資金力を持って活動している俺たちディスカバリーはお得意様と言っていいかもしれないが、同時に彼らの天敵でもある。

星系外のテクノロジーを惜しみなく投入しまくっている俺たちの艦は、地球勢力のたいていの艦よりかなり強いからだ。


小惑星といってもサイズから形状まで様々であり、直径数百m程度のクソでかい岩石レベルのものから、数km以上のでかいものまである。

今の地球人の技術レベルで小惑星をくり抜いてステーションとして活用するとしたら、クソデカ岩石クラスのものだろう。

宇宙空間と接触する部分の外部構造体は頑丈であればあるほどいいわけだが、小惑星の構造物そのものを利用するという点でコストパフォーマンスに優れたやり方であり、太陽系外でも前哨基地としてそういうステーションをとりあえずという形で作ることもあるそうだ。


そういう作りのステーションはステーション・ビーコンでもない限りは、センサーでも小惑星もしくはアステロイド扱いされてしまうために通常の索敵で見つけるのは容易ではない。

そして、そういうステーションから数光秒以内の距離に俺たちがいるのであれば、海賊ちゃんは既に俺たちの事を発見していることだろう。

宇宙で敵地に突撃するっていうのは、そういうことなのだ。


「まあ、そういうことだ。おそらく今回の相手も小惑星をくり抜いたものを基地として利用しているはずだ。んで、こっちのレーダー上では小惑星としかでないわけだが、相手からだとこっちの事は丸見えってことになるわけだ」


ハーヴェイが丁度、俺が考えたような言葉を繋げる。

地球上であるならば水平線があるため、光と等速度で進む電磁波であっても、水平線に隠れることでそのレーダー電波の照射から身を隠すことは可能になるわけだが、この宇宙空間ではそうもいかない。

距離数光秒程度であるならば間違いなくご近所さんであり、言ってしまえば電波や星系外の超テクノロジーなんて使わんでも光学観測さえ可能という感じだ。


ここは宇宙海賊たちの庭であり、俺たちこそが招かれざる客……とでも言うべきだろうか。


「海賊狩りってそういうものなのよね。いつだって不利なシチュエーションで始まらざるを得ない。戦闘開始はあっちの都合次第ってことよ」

「「「めんどくせぇ……」」」


ガラッティにラーヒズヤ、そして俺のうんざりヴォイスが通信機越しでぶつかり合う。

俺たちディスカバリー組が宇宙海賊をハントするハンターであるならば、宇宙海賊ってやつはそんなハンターすらハンティングしたがるハンターなわけだ……ハンターを繋げてもいいが危険を感じるのでやめておく。

もっとも、宇宙海賊っていうのは自分たち以外の宇宙船全てがハンティング対象なので、現在は太陽系のお外に出かけることすらできない俺よりもよっぽど手広くビジネスしてるわけだが。


しばらくの沈黙。

この間やっていることと言えば、レーダーとにらめっこしたりレーダーを睨みつけたり、レーダーに「おい、なんとかいってくれよ」と文句を言ったりすることくらいでして。

いやわかっている、相手はこっちの集中力が切れる時を待っているわけだ。

相手の土俵で戦うしかないというのはそういうことだってことくらいはわかっているが、日本のド底辺クソブラック社畜民からブラックホール企業のパイロットに成りあがった(あるいは成り下がった)程度の変化でどうにかなるもんじゃない。


といっても問題があるわけじゃない。

レーダーの監視は人力でやるよかAIが担当したほうがいいので別に俺が期待に据え付けられたレーダー反応を睨みつける必要性なんて実のところないんだが、ただ単純にクッソ暇なんですよ。


ほぼ確実に、命のやり取りをすることが確定しているというのに暇を持て余すというのは不思議な感覚である。

俺は日本人で、第三次世界大戦終結から概ね60年経過してからこの世に爆誕したわけで、ガチの殺し合いなんて一度も経験したことがない。

だからこそ感じる違和感なのかもしれないが、得てしてそういうものなのかもしれない。

などと思いつつ、「ホゥ」と息を吐き出した瞬間、シルビアの声が響いて体が一瞬跳ねることになった。


「きたよ」


各種レーダーセンサーの分析から、相手方の機体は10ということになりこちらの倍数を用意してきたようだ。

相手方はこちらが今さっき通り過ぎた小規模なアステロイド群に紛れ込んでいたようで、俺たちの後方から襲撃をかけてくる形になる。


"かくれんぼ"は宇宙海賊集が持っている基本技能だと教えられてきていたが、なるほど本当にうまく隠れるもので、奇襲自体はしっかりと俺たちも警戒していてしっかり調べたはずなのだが、それでも隠れきるとはなかなかやりおると思うしかない。

事前に後方からの奇襲に備えて回避起動の準備を整えていたので、俺たちは一瞬だけバラバラに飛び、そしてフォーメーションの所定の位置に戻って相対することになる。


奇襲と言えば奇襲だが、ガッツリとアステロイド帯を調べたというだけあって、小惑星の穴ぼこの深いところを隠れ先として選んでいたんだろう。

ケツ側から飛び出してきたときにはそれなりに距離が離れていて、奇襲だけれど奇襲というには微妙という形になっている――これもシルビアの指示でこういう振りすぎない状況を作り出すことに成功している。

恐らくレールガンか何かであろう実体弾のプラズマ光跡が艦の近くを掠めていくのはキモが冷えるというか、ゴールデンボールとそれを優しく包む袋が縮こまるというレベルであるはずだが、今のこのアンドロイド体には袋もタマもついていないので縮むことすらできない。


なんという理不尽だろうか、あとでシルビアぶん殴ろう……多分俺が一方的に殴られて終わるだろうけど。


「さて、倍数程度で勝てるって思われてるならディスカバリーの実力をなめてると言わざるを得ないわね。とりあえず反省を求めてぶち殺すわよ」

「「「「あいあいさー」」」」


ぶち殺したら反省もクソもないと思うのだが、まあ宇宙ってそういうものらしいので仕方ない。

思えば遠くまで来たもんだ……生きて帰ることができるといいなあ畜生!

ということでようやくの戦闘パートが近づいてきました。

文章構成のクセ(?)の都合上展開はくっそ遅いかもしれませんが、半荘に数年かけるみたいなまるで漫画の世界の如き悲劇は起こらないと思うのできっと大丈夫なはずです。

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